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若者の車離れ、歯止めの鍵になるのは?

岡崎五朗の” 知ってトクする ”最新クルマ事情

若者の車離れ、歯止めの鍵になるのは?

Vo1.03 若者の車離れ、歯止めの鍵になるのは?

若者のクルマ離れという言葉をよく聞きます。クルマに興味のない若い人に話を聞くと、決まって返ってくるのが「電車のほうが便利」、「クルマはお金がかかる」、「渋滞が嫌」、「お酒が飲めない」、「必要なときだけレンタカーやカーシェアリングを利用すれば十分」という答え。どれもたしかにその通り、と頷ける理由ばかりです。

とくに公共交通機関が発達した都市部では、クルマを所有する合理的な理由は少なく、若者に限らず大人にも同じように考える人たちが増えてきています。

若者のクルマ離れの原因は、自動車メーカーのクルマ離れ

親子でドライブイメージ

でも、考えてみると上記の「クルマを持たない理由」は昔から存在していました。僕が大学生だった30年前も、いまも、何ら変わりはありません。ならば30年前の若者はなぜ無理をしてまでクルマを買おうとしたのでしょうか。

ひと言でいえば「クルマ恋愛度が高かった」ということでしょう。

人は必ずしも経済合理性だけで行動するわけではなく、興味があれば合理性に欠くものにもお金を使います。およそ趣味と呼ばれるものの多くが経済合理性とはかけ離れていることからもそれは明らかです。

トヨタの豊田章男社長は「若者がクルマ離れしたのではなく、自動車メーカーがクルマ離れしたのではないか」といっています。経済的で便利なクルマばかりを作り、ワクワクするようなクルマを作ってこなかったのがクルマのコモディティ化(特異性を失い市場価値が低下すること)を進め、若者のクルマ離れを招いた、と考えているわけです。

そこから生まれてきたのが、比較的安価に買えるスポーツカーの86(ハチロク)ですが、ハチロクに反応したのは若い頃スポーツカーに乗っていた中年世代がメイン。何か新しいことに取り組まなければ、クルマ離れという大きな流れを止めることはできません。

スポーツカー86

成長期を過ぎ、クルマの進化速度はペースダウン

都内の道路を走る車

何か新しいこと・・・それがまさに、生き残りをかけた大きなテーマとして自動車メーカーのなかで盛んに行われている議論です。

一般的に、世界最初のクルマは1886年に開発された「ベンツ・パテント・モートル・ヴァーゲン」とされています。一方、世界最初のコンピュータといわれている「ENIAC」が登場したのはその60年も後のことです。
しかし、そこからのコンピュータの進化速度が凄まじかったのはいうまでもないでしょう。
もちろん、クルマも徐々に進化はしてきましたが、コンピュータと比べたら立ち止まっているようなものです。

10年前のクルマに乗ってアクセルを踏んでも幻滅するようなことはありませんが、コンピュータの世界において「半導体の集積度は2年で倍増する」というムーアの法則はいまだ健在であり、新製品が出る度に旧製品は時代遅れのものとして捨てられてしまうのが現状です。

スマホを操作する手元

なかでも象徴的だったのがスマートフォンの登場です。手のひらに収まるインターネット常時接続型コンピュータともいうべきスマートフォンは人々のライフスタイルやメディアの在り方までをも変えてしまいました。

家に財布を忘れてもなんとかなるけれど、スマートフォンがなかったら何もできない・・・そんな感覚をお持ちの方も少なくないでしょう。それほどまでにスマートフォンは私たちの生活に深く浸透しています。
けれど、初代iPhoneが発売されたのは2007年。いまからたった10年前のことなのです。夢だったことがあっという間に現実になる。これほど刺激的なことはありません。

クルマ離れの背景には、「進化スピードの圧倒的な差」があると思います。新型になっても性能が少ししか上がらないのであれば、購買意欲など湧くはずはなく、新商品に対する興味が薄れるのは当然のことです。

専門家の僕からすれば、それでもクルマは徐々に進化し続けていて、たとえば先日乗ったホンダのフィットは、マイナーチェンジによって乗り心地もハンドリングも静粛性も驚くほどの進化を遂げていました。けれどもそれは「乗ってみて感じる満足度」を上げただけで、できなかったことができるようになったわけじゃない。クルマに無関心になってしまった人たちの興味を再びクルマに向けさせるほどのインパクトがあるかというと、残念ながら答えはノー。もはや、技術の熟成だけでクルマ離れを食い止めることはできないということです。

時代とともに変化する「いいクルマ」の価値観

駐車場にならぶ車

20世紀は人がクルマに恋をした世紀といわれています。ならばコモディティ化しかけている21世紀のクルマは、いったいどう変わり、人とどう関わっていくのでしょうか。

走り、曲がり、止まる。これが20世紀の「いいクルマ」の三原則であり、優れた加速性能、優れたコーナリング性能、優れたブレーキ性能を備えたクルマがいいクルマとされてきました。加えて20世紀末からは安全性能と環境性能の重要性が高まってきましたが、それらは「できて当然」のベース技術であり、そのうえにどんな魅力を加えていけるかが本当の勝負になる、というのが僕の考えです。

そこで急浮上してくるのがクルマとコンピュータの統合です。

もちろん、現在でもクルマには多数のコンピュータ技術が入っています。ナビゲーションシステム、オートエアコン、クルーズコントロール、エンジン制御、横滑り防止装置などなど、現代のクルマはコンピュータなくしては成り立ちません。
しかしそれらが行っているのは旧式のCPUでまかなえる程度の処理であり、僕の考える「クルマとコンピュータの統合」とは次元が異なります。

考えるクルマがもたらすカーライフ

では、クルマとコンピュータが高度に統合したとき何が起こるのか? 携帯電話はスマートフォンへと進化しましたが、クルマの変化はもっともっと大きなものになります。そう、「走り、曲がり、止まる」といった20世紀的価値観に「つながる、考える」という新しい項目を加えることによって生みだされるパラダイムシフトこそが、クルマを変え、人々の移動を変え、ライフスタイルを変えていくのです。

車×コンピューター

その代表格となるのが自動運転です。クルマを取り巻く技術はわれわれが想像する以上に進んでいて、これからの15年〜20年でカーライフは大きく変わるでしょう。自宅のソーラーパネルでマイカーへ充電。あらかじめ適温になった車内に乗り込み、当日のスケジュール確認、メールのチェック、お世話になった人へのプレゼントの手配、ディーラーでの点検予約、夜のレストラン予約など、さまざまな案件を片付けながら走行。望めばテレビも見られるし、読書もできる。そして目的地に着いて車寄せで降車すると、クルマは無人で駐車場まで移動し、無接点充電器を使って充電開始…などという世界もあながち夢物語ではないのです。
実際、上記の技術のいくつかはすでに実現化されています。

今後の課題と展望

ドライブする女性たち

ただし、現状では個々の技術がスマートフォンやクルマ、ナビゲーションシステムなどに散らばって存在していて、クルマという商品として、ユーザーにわかりやすい形で提案するまでにはいたっていません。個々の技術の進化もさることながら、それらをパッケージとして統合し、いかに使いやすい形で包括的に提供できるかどうかが今後の課題となりそうです。

あるいは、クルマは所有から共有へ、自動車メーカーはクルマという商品を売る会社からモビリティサービスを提供する会社へと変わっていくかもしれません。そしてそんなパラダイムシフトを成し遂げた企業こそが、近未来のモビリティの覇権を握る可能性が高いのです。
Google、Apple、Uberが狙っているのもそこ。どこが勝利を収めるかはちょっと予想が付きませんが、最先端テクノロジーを組み込みながら、クルマがもっと便利で、もっと楽しくなっていくのは間違いないでしょう。これから生まれてくる子供たちが運転免許をとるぐらいの年齢になった頃、「僕らの親世代は若いときクルマに興味がなかったらしいね。もったいない」なんて言うようになるかもしれませんね。

※ 本記事は著者個人の見解・意見によるものです。

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※1 大手損害保険会社(3社)から切替えた当社ご契約者アンケートより算出。(回答数:1,829件/集計期間:2018年1月-2018年8月)お客さまの申告による、加入中の保険会社から提示された継続保険料と当社契約保険料の差額であり、当社商品・補償内容が前契約保険会社と異なるケースも含まれます。

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※1 大手損害保険会社(3社)から切替えた当社ご契約者アンケートより算出。(回答数:1,829件/集計期間:2018年1月-2018年8月)お客さまの申告による、加入中の保険会社から提示された継続保険料と当社契約保険料の差額であり、当社商品・補償内容が前契約保険会社と異なるケースも含まれます。

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