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電気自動車(EV)の展望

岡崎五朗の” 知ってトクする ”最新クルマ事情

電気自動車(EV)の展望

Vo1.04 電気自動車(EV)の展望

21世紀に間に合いました、という素敵なキャッチフレーズをひっさげ、トヨタが世界初の量産ハイブリッドカーであるプリウスを発売したのは1997年。あれから20年が経ち、ハイブリッドやダウンサイジングターボ、クリーンディーゼル、プラグインハイブリッドなどさまざまな省燃費技術が生まれ、普通のガソリンエンジンも効率をグングン高めてきました。

電気自動車(EV)は本当にエコ?紙一重な現状

電気自動車充電イメージ(1)

エンジン以外、たとえばタイヤやトランスミッションの進化と相まって、日本で販売されているクルマの平均燃費は20年前のおおよそ2倍近くにまで改善されました。にもかかわらず、世界的にみると、地球温暖化の原因とされるCO2(二酸化炭素)問題は年々深刻度を増しつつあり、これを受け各国政府は自動車のさらなる燃費規制に乗り出しています。当然、日本にもさらなるCO2削減が求められています。

そんななか注目を集めているのが電気自動車(EV)です。エンジンを搭載したクルマや、エンジンとモーターを組み合わせて走るハイブリッド車は、走行段階で化石燃料を消費しCO2を発生します。一方、電気自動車はバッテリーに蓄えた電力でモーターを回して走るため、走行段階では排気ガスを一切出しません。電気自動車がゼロエミッション・ヴィークル(排出ガスゼロの乗り物)といわれる理由がここにあります。

しかし、実際に電気がどのようにして作られているかに思いを巡らせると、電気自動車もゼロエミッションではないことがわかります。太陽光や風力といった再生可能エネルギーや原子力だけで発電するのであれば排出ガスは事実上ゼロになりますが、現在日本の発電量の84%は火力発電。これは、排気管からCO2を出さない代わりに発電所で出していることを意味します。

では、電気自動車はCO2排出量低減にどの程度貢献するのでしょうか。ここでハイブリッド(現行プリウス)と電気自動車(現行日産リーフ)を比較してみましょう。

プリウスはガソリン、リーフは電気を使うため、単純な燃費比較はできません。プリウスの場合は走行段階でのCO2発生量に、ガソリン製造時のCO2発生量を加えたものがトータル発生量となり、リーフは日本で乗るなら日本の発電方法別のCO2排出量をもとに算出する必要があります。ここでは細かな計算過程は省きますが、ユーザーが実際に走って記録した実燃費&実電費データ(プリウスが22km/L、リーフが7km /kWh)をもとに概算すると、CO2排出量は電気自動車のほうが概ね30〜40%少ない、という結果になりました。

日本で乗った場合のCO?排出量の差

日本で乗った場合のCO2排出量の差

短い航続距離、高い車両価格、いまだ不足気味の充電インフラといった課題はありますが、現状、日本において電気自動車に一定のCO2削減効果があるのはたしかです。しかし、火力発電のなかでも発電時のCO2排出量がもっとも多い石炭発電が主力の中国やインドでは必ずしもそうはなりません。にもかかわらず両国が「EV化政策」を加速させているのは、第一に、深刻な大気汚染対策のため。加えて、電気自動車を優遇することが、設計製造が難しいハイブリッドや最新エンジンの技術を持たない自国の自動車産業育成につながるという思惑もあります。

※燃料を最大積載量まで積んで走行できる最大距離

また、2040年までにガソリン車とディーゼル車の販売を禁止するという方針を打ち出したフランスは世界でもっとも原子力発電比率が高い国です。ドイツの動きはまだちょっと読み切れませんが、ディーゼルエンジンの進化に限界が見えつつあること、また得意とする高性能高級車ビジネスを温存しつつ、厳しさを増す燃費規制をクリアするには電気自動車が欠かせないと考えているようです。いずれにせよ、各国の動向を見ていると今後電気自動車が徐々に増えていくのは間違いないでしょう。

電気自動車(EV)への転換期にある課題

電気自動車充電イメージ(2)

とはいえ、ここで一歩引いた目で考えてみると、急速な「EVシフト」にはいくつかの懸念事項が伴います。まず、現状でも休日になると発生している急速充電器の充電待ちがますます増えます。また、電気自動車のバッテリーを満たすのに必要とされる電力確保も大きな課題です。リーフのバッテリーは24kwhと30kWhの2種類。次期モデルのバッテリーはさらに大型化する見込みです。1kWhとは1,000ワットの電力を1時間使い続けたときの消費電力量で、一般的な家庭の消費電力量は1日あたり10kWh程度。つまり、リーフのバッテリーを空の状態から満充電するには、一般家庭が使う電力の2〜3日分が必要になるということです。

いまの日本の電力需給をみると、電気自動車が数万台増えたところで心配はありません。数十万台規模でもおそらく大丈夫でしょう。しかし数百万台に達すると、夏場や冬場の電力ピーク時の電力供給量が追いつかなくなる可能性が出てきます。電気自動車を自宅で充電をするのは基本的に電力供給に余裕のある夜間ですから、真夏の日中電力ピークとは時間的にずれますが、それでも大量の電気自動車が同時に充電をしたら大量の電力が必要になるからです。ましてや6,000万台に達する日本の乗用車がすべて電気自動車に置き換わったとしたら、供給サイドの強化は必要不可欠です。

理想的な電気自動車の使い方イラストお隣さんも電気自動車(EV)…そのとき電力は足りるのか?

自宅に太陽光発電パネルを設置したり、クルマを使わないときは電気自動車に蓄えたバッテリーを家に供給するというしくみが普及すれば電力問題は緩和されますが、それは絵に描いたような理想的な電気自動車の使い方。初期投資コストなどを考えた場合、そこまで徹底した行動にでるのはごく一部の人に限られるのではないでしょうか?

現実的には電気自動車が増えたら、ほぼその分だけ発電能力の強化が求められるでしょう。それどころか、不安定な太陽光発電や風力発電のウェイトを高めようと思ったら、実際の需要を大幅に上回る供給体制を整えておくことが必要で、それには莫大なコストがかかり、電気料金の値上げとして、クルマを持っていない人の家計にまで影響する可能性があります。とはいえ、急場凌ぎで火力発電、とくに石炭発電を増やすようではCO2削減という本来の意味がなくなってしまいます。

もちろん、長期的には国を挙げて再生可能エネルギーによる発電比率を増やしていくことが求められます。太陽光発電にしろ風力発電にしろ、技術の進化によって低コストでの発電が可能になるでしょう。しかしそれは一朝一夕で実現できるものではありません。もしかしたら水力発電を増やすべくダムを増やす必要があるかもしれません。僕自身は否定派ですが、原子力発電も議論する必要があるかもしれません。このように、エネルギー政策に絶対的な正解がない以上、電気自動車も絶対的な正義にはなり得ないのです。

大切なのは、正解が見つかっていないこの段階で、いろいろな可能性を切り捨てないことではないでしょうか。内燃機関のさらなる効率向上、プラグインハイブリッド車の普及、水素燃料電池の開発推進、バイオ燃料の開発など、国としてメーカーとして、可能性のあるものはひとつ残らずやっていく必要があります。

そしてここが重要な点ですが、あらゆる可能性のなかから、「省エネ」というライフスタイルやカーシェアリングなどを含め、どんなクルマを選び、それをどのように使い、どのように暮らしていくかを決めていくのは、メーカーでも政府でもなく他ならぬ我々ユーザーでありたい、と僕は思います。そのためには、電気自動車が善で内燃機関が悪、という二元論に流されないことが求められます。たしかに電気自動車は有力な選択肢のひとつですが、決してすべての問題を解決してくれる夢のクルマではない、ということを覚えておいてください。

※ 本記事は著者個人の見解・意見によるものです。

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※1 大手損害保険会社(3社)から切替えた当社ご契約者アンケートより算出。(回答数:1,829件/集計期間:2018年1月-2018年8月)お客さまの申告による、加入中の保険会社から提示された継続保険料と当社契約保険料の差額であり、当社商品・補償内容が前契約保険会社と異なるケースも含まれます。

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