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スバル「アイサイト」などクルマの安全技術の進化

岡崎五朗の知ってトクする最新クルマ事情

交通事故死亡率は日本では低下傾向、発展途上国では急激に増えつつある

警察庁の統計によると、2017年の交通事故による死者数は3,694人。交通戦争と呼ばれた1960年代?1970年代半ばと比べると死者数は4分の1以下になりました。ガードレールや歩道橋の設置といった歩車分離、道路構造の改善、自動車の衝突安全性能向上、飲酒および危険運転の厳罰化、救命医療の充実、交通教育、シートベルト装着の義務化など、国を挙げたトータルとしての取り組みの成果です。

交通事故の死亡者数の推移

交通事故の死亡者数の推移
出典:警察庁ウェブサイト「平成29年中の交通事故死者数について 」より加工

世界に向けたくさんのクルマを輸出している日本が、お膝元でこうした姿勢を示すのはとても重要なことです。クルマはとても便利な移動手段である一方、不幸な事故を生みだす道具という負の側面ももっています。

もちろん、自動車メーカーは日々、安全性の高いクルマの開発に向けた努力をしていますが、クルマ単体で交通事故を減らすのには限界があります。交通インフラやドライバーの運転マナーといったトータルでの取り組みをしなければ、効果的な交通事故対策にはならないのです。

そういう意味で、交通事故死者数の大幅減を日本は誇るべきですし、またかつての日本と同じ“交通戦争”に苦しんでいる国々に、そのノウハウを積極的に“輸出”していくべきでしょう。資金援助、農業研修、建設工事、医療支援、PKO活動など、日本の海外援助は多岐にわたりますが、交通事故防止プログラムは聞いたことがありません。

モータリゼーションとともに急速に増えつつある新興国の交通事故。その対策の手助けを積極的に推し進めることは、世界に向け多くのクルマを輸出し、外貨を得ている日本の義務ではないでしょうか。

日本の交通事故防止プログラムのノウハウは、クルマの輸出とともに推し進めるべき 日本の交通事故防止プログラムのノウハウは、クルマの輸出とともに推し進めるべき

さらなる交通事故防止にむけて、クルマ側でヒューマンエラーをカバーする技術が進化

話題を戻しましょう。上述したように、日本は交通事故死者数をピーク時から4分の1以下に減らすことに成功しました。しかしそれでも年間4,000人近くが亡くなっているという事実は厳然として存在します。交通事故死者数を減らす取り組みは、不幸な事故が“ゼロ”になるまで立ち止まることなく続けられるべきです。

政府は2016年に策定した第10次交通安全基本計画※で、2020年までに年間死者数を2,500人以下とする目標を掲げています。しかし、冷静に見て、この目標はかなりチャレンジングだというのが僕の考えです。

優れた視界の確保や疲れにくいシート、直進安定性の高いサスペンション、危険回避性能に秀でたサスペンション、よく効くブレーキ、視認性の高いメーター、操作しやすいスイッチなど、安全性の向上を目指した技術開発は日々続けられています。それと同時に、ABS(アンチ・ロック・ブレーキ・システム)やESC(横滑り防止装置)に代表される予防安全技術の普及と、ボディ構造やSRSエアバッグに代表される衝突安全技術の向上も、これまで多くの命を救ってきました。

しかし、これらクルマ側の改善によって実現できる死傷者低減率は限定的です。このままでは次第に死傷者数減少のペースは遅くなり、近い将来には横ばい状態へと移行することが予想できます。

第10次交通安全基本計画(道路交通)概要については内閣府のページを参照。

クルマの新しい安全技術がヒューマンエラーをカバー、自動車事故は減少する? クルマの新しい安全技術がヒューマンエラーをカバー、自動車事故は減少する?

そこで登場してきたのが、衝突被害軽減ブレーキ(自動ブレーキ)や車線逸脱防止システムなど、将来の自動運転化に繋がる技術を使った新しい安全技術です。トヨタの調べによると、衝突するまでドライバーが回避操作をまったくしなかった事故は全体の約40%に達するそうです。

そう考えると、クルマが事故の発生を予測し、ドライバーの操作とは関係なく衝突を回避、あるいは衝突被害を低減してくれる技術の重要性がわかります。前方不注意、居眠り運転、判断ミス、操作ミス……。自動車事故のほとんどはヒューマンエラーが原因です。したがって、クルマ側でヒューマンエラーをカバーすることができれば、事故の大幅な減少を期待できるということになります。

先進安全装備の有効性、アイサイトの事故発生件数は61%減

各メーカーが開発に取り組んだ結果、こうしたシステムは現在では軽自動車にも装備されるようになりましたが、まだ歴史が浅いため、事故低減効果についての定量的データはありませんでした。そんななか、先進安全装備の先駆けである「アイサイト」を手がけるスバルが驚くべき調査結果を発表しました。

アイサイトはフロントウィンドウ上部に組み込んだ2個のカメラ(ステレオカメラ)が人間の目の役割を果たし前方の状況を常に監視。カメラから送り込まれる数々の情報を画像処理することで、クルマ、自転車、歩行者、車線、などを認識し、危険を察知するとブレーキをかけたり警告音を鳴らすなどしてくれます。

スバルアイサイトの主な機能(2014年に登場した「アイサイトver.3」)
機能 詳細
ぶつからない技術 プリクラッシュブレーキ 自車が他車や歩行者などの障害物と衝突する危険がある場合に、ドライバーに警告を促してくれる機能。
ついていく技術 全車速追従機能付クルーズコントロール 高速道路や自動車専用道路などで前方の車を検知し、
自動で車間距離を保ちながら走る機能。
はみ出さない技術 アクティブレーンキープ 高速道路や自動車専用道路での走行時にステレオカメラで車線を認識し、はみ出さないようにステアリングアシストを行ってくれる機能。
飛び出さない技術 AT誤発進抑制制御&AT誤後進抑制制御 誤操作による事故を防ぐ機能。
前方の壁や生け垣などの障害物が検知され、誤発進したとシステムが判断した場合、警報音と警告表示で注意を喚起。
注意してくれる技術 警報&お知らせ機能 高速走行時の車のふらつきや、走行中の車線逸脱を検知した場合、ドライバーに警告を促してくれる機能。

出典:スバルウェブサイト アイサイト主な機能 より

ではアイサイトにはどの程度の事故軽減効果があったのでしょう。調査対象となったのは2010年から2014年にかけて販売されたスバル車。25万台のアイサイト搭載車と、5万台の非搭載車の事故情報を比較したところ、1万台あたりの事故発生件数は61%減。さらに詳しく見ていくと、対歩行者事故は49%減、対車両事故は62%減、追突事故については84%も減ったのです。

安全装備が充実するとドライバーが過信しかえって事故が増えるのでは?という主張をする人もいましたが、そんな懸念を完全に覆し、先進安全装備の有効性を示す決定的なデータが登場したわけです。

アイサイト(ver2)搭載車の事故発生率低減

アイサイト(ver2)搭載車の事故発生率低減
※ 2010年度から2014年度に日本国内で販売したスバル車(アイサイト搭載車246,139台、非搭載車48,085台)が対象
出典:株式会社SUBARUプレスリリース「スバル アイサイト搭載車の事故件数調査結果について 」のデータをもとに加工

新幹線や旅客機は、「人間はミスを犯す」という前提にたち、人間の介在する要素を極力減らす(自動化率を高める)という開発手法を採用したことによって安全性を飛躍的に高めることに成功しました。クルマの世界でも、ハイテクによって事故を減らせることが証明されたのです。

完全な事故防止はまだ先、事故被害低減の視点から新車購入は最新モデルがオススメ

もちろん、事故発生件数61%減というデータは、完全に事故を防止できるわけではない、とも読めます。しかし、たとえ事故が起きても、自動ブレーキの介入によって衝突速度を60km/hから50km/hに引き下げれば衝撃は30%、さらに40km/hまで引き下げることができれば半分以下まで低下します。

詳細なデータは発表されていませんが、重大事故を中程度の事故に、中程度の事故を軽微な事故に抑えることができることは容易に想像できます。事故発生件数の低下とあわせ、事故による被害低減についても大いに評価すべきでしょう。

ヒューマンエラーをゼロにするためには完全自動運転の登場を待つしかありませんが、それにはまだまだ時間がかかります。僕としては、皆さんにできるだけ安全なクルマを選んでいただきたいと考えていますが、新しい技術だけに各社さまざまな技術が乱立し、わかりにくい部分もある、というのが正直なところです。

国は先進安全技術をわかりやすく伝えるため、サポカー/サポカーS(セーフティ・サポートカーの略)という名称をつくり、啓発活動を始めました。先進安全機能やサポカー/サポカーSについては次回詳しく説明しますが、今後新車を買うのであれば、迷うことなく先進安全装備の付いたモデルを選ぶことを強くオススメします。

「サポカー/サポカーS」とは

サポカー/サポカーSとは 「セーフティ・サポートカー(サポカー)」とは自動ブレーキを搭載した、すべての運転者に推奨する自動車。 サポカー/サポカーSとは 「セーフティ・サポートカーS(サポカーS)」とは自動ブレーキに加え、ペダル踏み間違い時加速抑制装置などを搭載した、特に高齢運転者に推奨する自動車。

出典:経済産業省「サポカー/サポカーSのウェブサイト」より抜粋

※ 本記事は著者個人の見解・意見によるものです。

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※1 大手損害保険会社(3社)から切替えた当社ご契約者アンケートより算出。(回答数:1,829件/集計期間:2018年1月-2018年8月)お客さまの申告による、加入中の保険会社から提示された継続保険料と当社契約保険料の差額であり、当社商品・補償内容が前契約保険会社と異なるケースも含まれます。

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※1 大手損害保険会社(3社)から切替えた当社ご契約者アンケートより算出。(回答数:1,829件/集計期間:2018年1月-2018年8月)お客さまの申告による、加入中の保険会社から提示された継続保険料と当社契約保険料の差額であり、当社商品・補償内容が前契約保険会社と異なるケースも含まれます。

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