小さいお子さんとのおでかけに便利な車ですが、チャイルドシートに乗せると嫌がって、泣いて困るという方も多いでしょう。
万が一の事故が起きた場合、チャイルドシートを着用していないと子どもが危険にさらされてしまいます。子どもが嫌がってもチャイルドシートに慣れるように根気よく対応するのが大人の役目です。本記事ではチャイルドシートの重要性、取付ける座席について主に解説します。
6歳未満の幼児をクルマに乗車させる際、チャイルドシートを使用することが義務化されたのは、2000年のことです。
義務化以前からチャイルドシートメーカーの啓蒙活動などによって、チャイルドシートを利用するドライバーは2割程度ありました。義務化後その認知が高まり、利用するドライバーも5割程度と利用率が上昇しました。義務化から今年で19年が経過していますが、使用率は昨年66.2%(警察庁とJAFの全国調査より)と過去最高になりましたが、7割に届いていません。
つまり、3人に1人はチャイルドシートを使用していないということです。
このようにチャイルドシートの使用率は、依然として十分なものとは言えない状況にあります。これは、チャイルドシートが乗車中の乳幼児を守れる唯一の安全装備だということを理解している人がまだまだ少ない、ということを物語っています。
歩行中や自転車の後部に乗せている状態と比べ、車内のほうが安全と思われている方も多いようですが、状況によっては決して安全とは言えないことになるのです。
法律で義務化されても、報道に関心がなく、クルマに乗っていれば守ってもらっている、と思い込んでいるケースが考えられます。
お子さんがチャイルドシートを嫌がっても、根気よく説得し、絶対に使用することが大事です。「法律で定められているから」とか「使わないと交通違反になってしまうから」チャイルドシートを利用しているのではありませんよね。
大事なお子さんを守ってクルマで楽しく移動するために、チャイルドシートは必須の装備だと、理解してもらいましょう。
子育てや、子どもの教育の鉄則として良く言われることですが、チャイルドシートに関しても「急いでいるから」「近くだから」と例外をつくらないことが大切です。クルマに乗るときは必ずシートベルトをするという習慣にしてしまえば、お子さんは徐々に慣れ、嫌がることは少なくなります。
さらに気を付けなくてはいけないのは、チャイルドシートに座らせていれば安心と思っていても、使い方を誤ってしまうと実際に衝突事故にあってしまったときに、お子さんを守ることができないことになってしまう、ということです。
チャイルドシートは、クルマに正しく取り付け、そして正しく子どもが着座できていないと、高い衝突安全性を発揮することはできないのです。チャイルドシート利用者の内、クルマに正しく取り付けられていたのは38.4%、正しく着座していた子どもは46.2%と、チャイルドシートの取り付けやお子さんの着座方法においてミスユースがあることがわかっています。
さらに、チャイルドシートをキチンと使用していないと、衝突事故時の死亡リスクはおよそ6倍にも高まるというデータもあります。
チャイルドシートはお子さんが進行方向を向く取り付け方と、逆に後ろ向きになる取り付け方がありますが、1歳くらいまでは基本的に後部座席に後ろ向きに取り付けることをおすすめします。
これは人間が強い衝撃を受け止めるには、背中側からの衝撃のほうが耐えられるからです。たとえば宇宙飛行士がロケットに乗船して発射されるときも、衝撃を背中で受け止めるよう仰向けでイスに座っている姿勢になっています。
赤ちゃんのうちは身体が華奢で骨格が柔らかいことから、シートベルトでしっかりと拘束していると思っていても、衝突時の衝撃によってスルリとシートベルトから身体がすり抜けて、大きく揺さぶられるために重症を負ってしまうこともあるのです。
ですから乳児は特にシートベルトによる拘束の効果を期待するのではなく、チャイルドシートのシェルで身体を包み込むように守るのが効果的なのです。そのためには、後ろ向きで取り付けることが効果的なのは、おわかりですね。
メーカーや機種によってチャイルドシートの取り付け方も色々な違いが存在します。購入時には、自分にとって使いやすいものであるか、またお子さんを確実に守れるよう国土交通省の安全基準(Eマーク)を取得しているかを基準に選びましょう。
お子さんと二人、クルマで出掛ける機会が多いママさんドライバーも少なくないでしょう。その際にチャイルドシートをどこに取り付けるか、これは大きな問題です。
後部座席のチャイルドシートに乗せると大泣きしてしまって、かえって運転に集中できないこともあります。運転中にお子さんの顔が見えた方が安心しますし、お子さんも親御さんの顔が見えれば安心して大人しく乗ってくれるので、助手席にチャイルドシートを取り付けようと考える方も多いでしょう。
道路交通法で、6歳未満の子どものチャイルドシートの着用が義務付けられていますが、取付ける座席についての規定はありません。
ですから助手席にチャイルドシートを取り付けるのは違反ではないということになります。
しかし、気を付けなければならないのが助手席用のSRSエアバッグとの関係です。助手席にチャイルドシートを設置していて、事故衝突時に助手席用のSRSエアバッグが作動してしまうと、エアバッグの膨張によってお子さんがチャイルドシートと助手席の間で挟み込まれてしまう事態になって、子どもが大ケガをする可能性があります。
エアバッグの膨張圧力は、乗員の頭部が直接バッグ表面に包み込まれることを想定して、ガスの圧力やバッグの開き方が調整されています。そのため乗員よりエアバッグに近く、チャイルドシート背面がバッグの膨らみによって後方へと押されると、助手席の柔らかな座面が沈むことでさらにチャイルドシートは押し上げられて、チャイルドシートと助手席シートの空間が完全に潰されてしまうのです。
欧州車には助手席のエアバッグスイッチをオフにする機能が存在するクルマがあり、助手席のエアバッグをキャンセルすることを条件に、助手席のチャイルドシート取り付けが可能な場合がありますが、チャイルドシートは後部座席に装着したほうがよいでしょう。
国土交通省や警視庁のチャイルドシート関連のウェブサイトでは、後部座席にチャイルドシートを装着することを推奨しています。
安全性の高さから言えば、後部座席に後ろ向き、つまり前席のシート背面後ろ側に背中合わせでチャイルドシートを取り付けて使用するのが一番です。前述のようにエアバッグの膨張によりお子さんがチャイルドシートとシート背面に挟み込まれてしまうことが防げるだけでなく、ほぼ車体の中央に座ることになるため、前後どちらからの衝突事故に対しても高い乗員保護性能が期待できます。
さらに隣にパパやママが乗って顔が見えていれば、お子さんも安心して乗ってくれていることでしょう。
6歳未満の子どもがクルマに乗るときに着用が義務づけられているチャイルドシートですが、なかなか慣れなくてクルマでのおでかけが大変と感じている方も多いでしょう。しかし子どもの安全を守るのは大人の役目です。
・国の安全基準への適合が確認されたチャイルドシート、子どもの体格に合ったものを選ぶ
・メーカーの使用上の注意を遵守して、正しい取付けをする
・チャイルドシートは後部座席に装着する
このようなポイントを守って、お子さんとのクルマでのおでかけを安全なものにしてください。
最後に、車を所有されている方は、チューリッヒの自動車保険をご検討ください。
万が一の車の事故・故障・トラブルに備えておくと安心です。
1965年生まれ。芝浦工業大学工学部機械工学科卒。トヨタ直営販社の営業マン、輸入車専門誌の編集者を経て自動車ジャーナリストとして独立。さまざまな自動車雑誌のほかエンジニア向けのウェブメディアなどに寄稿している。
近著に『エコカー技術の最前線』(サイエンス・アイ新書)、『カーメカニズム基礎講座パワートレーン編』(日経BP社)がある。企業の社員ドライバーに対し交通事故低減とマナー向上を目指す講習を行なうショーファーデプトで、チーフインストラクターを務める。
日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員
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