1年間に運転免許の取り消し処分を受けた人数は、全国で32,980人に上ります(令和4年/警察庁「運転免許統計」)。免許の取り消し処分は、重い行政処分です。そこで、免許の取り消し処分について、取り消し処分の条件・点数、取り消しまでの流れ、講習・再取得の方法などをご説明します。
それでは最初に、免許の取り消し処分を受けた場合の影響や、違反点数について見てみましょう。
事故や交通違反による点数の積み重ねにより、違反点数が加算されると免許の停止や取り消しという行政処分を受けることになります。運転免許に関わる行政処分は、道路交通法に基づいて都道府県公安委員会が行いますが、免許の取り消し処分は、最も重い行政処分です。
免許の取り消し処分を受けると、運転免許の効力が失われ、車を運転できなくなります。そのため、再び車を運転するためにはあらためて免許を取り直す(再取得)必要があります。
免許の取り消し処分は、自動車などの運転者の交通違反や交通事故に一定の点数をつけて、過去3年間の累積点数などに応じて行われます。
点数制度に用いられる点数は
を起こした場合の「基礎点数」と、「付加点数」で構成されています。
種類 | 主な違反行為 | 違反点数 | |
---|---|---|---|
①基礎点数 個々の違反行為に付される基本的な点数 | 一般違反行為 |
|
25点、19点、16点、15点、14点、13点、12点、6点、3点、2点、1点の11種類 |
特定違反行為 |
|
62点、55点、51点、48点、45点、35点の6種類 | |
②付加点数 基礎点数に加えられる点数 | 結果の重大性や、運転をしていた人の不注意の程度に応じて加算 | 20点〜2点 |
上の基礎点数とは、個々の違反行為に付される基本的な点数です。違反行為は「一般違反行為」と「特定違反行為」に区分され、それぞれ違反点数が設定されています。
一般違反行為は、座席ベルト装着義務違反、信号無視、速度超過など、比較的軽い違反行為を指します。
特定違反行為は、特に重大な違反行為を指しています。
付加点数とは、基礎点数に加えられる点数です。
結果の重大性や、運転をしていた人の不注意の程度に応じて加算されます。
運転免許が取り消しになる違反点数は過去3年以内の運転免許の取り消し・停止回数(前歴)によって決まります。
ただし、免許取消歴保有者※1は、欠格期間※2が延長されます。
欠格期間 ( )は運転免許取消歴保有者 | 前歴(過去3年以内の運転免許停止などの処分回数) | |||
---|---|---|---|---|
0回 | 1回 | 2回 | 3回以上 | |
1年(3年) | 15点〜24点 | 10点〜19点 | 5点〜14点 | 4点〜9点 |
2年(4年) | 25点〜34点 | 20点〜29点 | 15点〜24点 | 10点〜19点 |
3年(5年) | 35点〜39点 | 30点〜34点 | 25点〜29点 | 20点〜24点 |
4年(5年) | 40点〜44点 | 35点〜39点 | 30点〜34点 | 25点〜29点 |
5年 | 45点以上 | 40点以上 | 35点以上 | 30点以上 |
過去3年以内に行政処分を受けたことがない場合、15点以上になると取り消し処分に該当します。
欠格期間 ( )は運転免許取消歴保有者 | 前歴 | |||
---|---|---|---|---|
0回 | 1回 | 2回 | 3回以上 | |
3年(5年) | 35〜39点 | − | − | − |
4年(6年) | 40〜44点 | 35〜39点 | − | − |
5年(7年) | 45〜49点 | 40〜44点 | 35〜39点 | − |
6年(8年) | 50〜54点 | 45〜49点 | 40〜44点 | 35〜39点 |
7年(9年) | 55〜59点 | 50〜54点 | 45〜49点 | 40〜44点 |
8年(10年) | 60〜64点 | 55〜59点 | 50〜54点 | 45〜49点 |
9年(10年) | 65〜69点 | 60〜64点 | 55〜59点 | 50〜54点 |
10年 | 70点以上 | 65点以上 | 60点以上 | 55点以上 |
※行政処分基準点数については、警視庁が公開している「行政処分基準点数」をご覧ください。
免許取り消しとなるのは、交通違反や交通事故で点数が累積した場合だけではありません。
2014年6月の改正道路交通法の施行で、運転免許の取得・更新時に、運転に支障を及ぼす可能性がある一定の病気などの症状の申告が義務付けられました。
そして、道路交通法第101条の6により、医師が診察により以下に該当すると診断し、その人が免許を受けているということが判明した場合には、公安委員会にその診断結果を届けることが可能になりました。
免許を受けた人が、交通事故を起こしていない場合でも、特定の状態にある場合、または上のいずれかに該当するとき、住所地の公安委員会はその人の免許の取り消しまたは6ヵ月を超えない範囲内で期間を定めて免許の効力を停止することができます。(道路交通法第103条)
一定の病気に該当することなどを理由に免許取り消し処分を受けた場合でも、その後の病状の回復などにより再び免許を取得することができます。この際、取り消しの日から3年以内であれば、学科試験と技能試験が免除されますが、3年を超えた場合には、あらためて試験に合格しなければなりません。
違反点数が一定の基準に達すると、以下のとおり免許の取り消し処分に向けた手続きが始まります。
免許取り消し処分の場合には、公安委員会における「意見の聴取」手続きが行われます。該当者にはあらかじめ意見聴取の開催日を知らせる「意見の聴取通知書」が届きます。
意見の聴取とは、取り消し処分が適正であるかを警察が最終的に判断するために、本人から意見を聞く手続きです。違反時の状況などについて事実確認や質問を受けたり、処分される本人が意見を述べたり、自分にとって有利な資料などを提出することができます。
こうした手続きを取ることで、悪質な事故や違反でない場合など一定の条件を満たす場合には、免許取り消しではなく、180日以下の免許停止などに処分が軽減される可能性があります。意見の聴取は欠席することもできますが、伝えたい主張がある場合は、この機会を活用するとよいでしょう。
意見の聴取を経たうえで、免許取り消し処分が決定されると、「運転免許取消処分書」が発行され、処分が執行されます。この時点から運転免許は効力を失い、欠格期間が進行します。
その後は、もう一度車を運転するためには免許を再取得する必要があり、再取得する前に車を運転すると無免許運転として処罰されることになります。
最後に、免許の取り消し処分を受けた後、再取得するまでの手順を説明します。
免許取り消しの処分を受け、再度免許を取得するためには、まず「取消処分者講習」を受けなければいけません。取消処分者講習とは、過去に免許取り消しなどの処分を受けた人に対して行われる講習です。
講習の内容は、運転適性検査、性格と運転に関する概説、危険予知運転の解説、実車講習などで、連続した2日間、13時間にわたって行われます。取消処分者講習を受講すると、「取消処分者講習終了証明書」が交付されます。
運転免許を取得する際に必要となりますので大切に保管してください。取消処分者講習は、各地の運転免許試験場や指定自動車教習所で、欠格期間終了前、終了後のどちらでも受講できます。
ただし、取消処分者講習終了証明書の有効期間は1年間と定められているため、免許の再取得を希望する予定を踏まえて、講習を受ける日程を考える必要があります。
運転免許を再取得する方法は
の2つがあります。
一発試験とは、自動車教習所に通わず、運転免許試験場で直接学科試験と技能試験を受ける方法です。自動車教習所で普通免許を取得するためには、最低でも学科教習を26時限、技能教習を34時限(オートマ限定は31時限)受講する必要があります。
運転免許試験場での一発試験は時間と費用を節約できるメリットがあります。
もうひとつの方法が、指定自動車教習所に通って免許を再取得する、というものです。こちらのメリットは、しっかりと運転技術や交通規則について習得しなおし、免許の取得ができる点です。
一発試験の場合、数回受けても合格できないこともあります。試験に不安がある場合は、教習所を利用したほうがよいでしょう。
行政処分のなかで、最も重い処分である免許取り消しのルールについて、おわかりいただけたでしょうか?
違反点数が重なって免許取り消しになる場合もありますし、一発で免許取り消しになる違反もあります。また、一定の病気や障害により免許が取り消しになることもあります。
免許取り消し後、再取得する場合は取消処分講習の受講、試験を再度受験する必要があります。免許取り消しにならないように、日ごろから安全運転を徹底しましょう。
最後に、車を所有されている方は、チューリッヒの自動車保険をご検討ください。
万が一の車の事故・故障・トラブルに備えておくと安心です。
※記載の情報は、2024年2月時点の内容です。
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