現在販売されている新車の多くには、自動ブレーキ(衝突被害軽減ブレーキ)システムをはじめとする、安全運転の支援装置が搭載されています。
どのくらい事故防止に寄与しているかデータで立証することは難しいのですが、交通事故の件数、負傷者数、死者数ともに減少傾向が続いていることからも、事故防止に寄与していると思われます。
なお自動車保険には、自動ブレーキ(衝突被害軽減ブレーキ)を搭載した自動車に対する保険料の割引が設定されている保険会社もあります。
本記事では、車の自動ブレーキ(衝突被害軽減ブレーキ)、AEB装置・AEBSについてご説明します。
2019年2月、国連欧州経済委員会(UNECE)は日本や欧州連合(EU)など40ヵ国が自動ブレーキ(衝突被害軽減ブレーキ)の新車搭載を、2020年初めから義務化するという規制案に合意したことを発表しました。
本規制案で新車への搭載が義務化となった自動ブレーキは先進緊急ブレーキシステム、「Advanced Emergency Braking System(AEBS)」というものです。
先進緊急ブレーキシステムは、障害物や人間などを察知して衝突を回避するシステムで、日本ではすでに開発が進んでいるものです。
この規制案にもとづき、加盟国それぞれで国内基準の策定が行われ、日本では乗用車や軽商用車に標準搭載とする規則が2020年初めにも適用される見通しです。
これにより、交通事故の発生防止や被害軽減を世界的な基準とすることが可能になります。
安全装置が障害物を検知して自動的にブレーキをかけるのが自動ブレーキで、国土交通省では「衝突被害軽減ブレーキ」と呼んでいます。
「サポカー」「サポカーS」と呼ばれる安全装置搭載車には、衝突被害軽減ブレーキが搭載されていることが必要な条件となっています。
また、衝突被害軽減ブレーキが、一定の性能を満たしていることを国が認定する衝突被害軽減ブレーキ(AEBS)認定制度も、2018年度より始まりました。
自動ブレーキ(衝突被害軽減ブレーキ)が一定の性能を有していることを国が認定する衝突被害軽減ブレーキ(AEBS)認定制度は、今後車を選ぶときの新たな基準として機能するものと思われます。
ドライバーは、自分の目で前方や側方、ミラーを使って後方を監視しながら運転を行い、リスクと判断したらブレーキやハンドル操作で回避する行動をとります。
自動ブレーキ(衝突被害軽減ブレーキ)もまた、ドライバーの目の代わりにカメラやレーダー、脳の代わりにコンピュータが判断し、神経と筋肉の代わりに電気信号を発してブレーキをかけます。
「眼」にあたるデバイスはいくつか方式がありますので、ご紹介しましょう。
室内フロントガラス上部に設置したカメラが撮影した画像から、物体の種類や距離を計算、ブレーキ作動につなげるものです。
1台の「単眼カメラ」と、人間の眼のように2つのカメラで対象を測定する「ステレオカメラ方式」があります。カメラ方式は受光素子に映った映像を分析して物体の性質などを判定します。
単眼カメラは物体の形や大きさが識別でき、クルマや白線、対向車のランプだけでなく歩行者も認識できます。
ステレオカメラ方式は2つ以上のカメラの視差からより測定の精度を高められるのが特徴です。ただし、悪天候など、像を結びにくい場合には、能力が下がってしまうことがデメリットとして挙げられます。
カメラの代わりに、波長が1mm〜10mm程度の電波を利用し、電波が反射する性質を利用して物体の位置と距離、相対速度を算出するものです。車両から前方2〜200mの距離で有効です。
目に見えない赤外線を照射する方式で、20m先までの距離であればかなり正確に対象物までの距離を把握できます。こちらも、荒天時には気象の影響を受けやすいデメリットがあります。
自動ブレーキの「眼」にはこのような方式の違いがあります。最近は単眼カメラとレーダーを併用するなど複数の方式を組み合わせるメーカーが増えています。
各自動車メーカーは、先進技術を利用してドライバーの安全運転を支援する以下のようなシステムをパッケージして搭載しています。
その安全運転を支援する技術の1つが自動ブレーキ(衝突被害軽減ブレーキ)です。
各メーカーの先進安全技術の名称とその中の自動ブレーキ(衝突被害軽減ブレーキ)の名称を以下に示します。
メーカー | 先進安全技術、運転支援システムパッケージの名称 | 自動ブレーキ(衝突被害軽減ブレーキ)の名称 |
---|---|---|
トヨタ | トヨタ・セーフティ・センス | プリクラッシュセーフティ |
日産 | インテリジェント モビリティ | インテリジェント エマージェンシーブレーキ |
ホンダ | ホンダセンシング | 衝突軽減ブレーキ(CMBS) |
マツダ | i-ACTIVSENSE(アイアクティブセンス) |
|
三菱 | e-Assist(イーアシスト) |
|
スバル | アイサイト | プリクラッシュブレーキ |
スズキ | セーフティ サポート |
|
ダイハツ | スマートアシスト | 衝突回避支援ブレーキ機能 |
自動車保険では自動ブレーキ(衝突被害軽減ブレーキ)装着車を対象にした保険料の割引を設定している保険会社もあります。
保険会社によって細部に違いはありますが、 「自動ブレーキ割引」などとして、 前方の障害物との衝突を避けたり、衝突時の速度を落とすための「自動ブレーキ装置」を装備する車両について、保険料の割引を適用する場合が多いようです。
チューリッヒの自動車保険を例にご紹介します。
チューリッヒの自動ブレーキ割引(2019年8月記事執筆現在)
先進安全装置のうちAEBという「自動ブレーキ装置(AEB装置)」を装備する車両に対して、自動ブレーキ割引が適用されます。
自家用普通乗用車、自家用小型乗用車、自家用軽四輪乗用車が対象で自動ブレーキ(衝突被害軽減ブレーキ)搭載車であることに加えて、「自家用普通乗用車または自家用小型乗用車の場合は、発売後約3年以内の型式の自動車であること」が条件になっています。
「発売後3年以内」という条件は、自動車保険のしくみに関係があります。
自家用普通乗用車と自家用小型乗用車は、車の型式ごとの事故発生状況などに応じて保険料を9段階に区分する「型式別料率クラス」により保険料が決定されています。
自動ブレーキ(衝突被害軽減ブレーキ)搭載車は、事故のリスクを下げていることは間違いないのですが、新車発売時にはそれを証明する実際のデータが取れません。そこで、別枠を作って別途割引が適用されるようにしているのです。
チューリッヒの場合、お申込み時に申告する車台番号を、自動車検査登録情報協会のデータベースに照会して自動ブレーキの有無を確認します。確認の結果、割引が適用されない場合もあります。
自分の車が自動ブレーキ割引の対象かどうかは車検証に記載されている車台番号で確認することができますので、各保険会社にお問合わせください。
自動ブレーキ(衝突被害軽減ブレーキ)など、いわゆる先進安全装置はかなりの普及を見せています。
しかし、PIO-NET(パイオネット:全国消費生活情報ネットワークシステム)に寄せられた先進安全装置に関する相談142件のうち、最も多いのが自動ブレーキ(衝突被害軽減ブレーキ)の119 件(83.8%)であることが国民生活センターから発表されています(2018年1月)。
国交省でも衝突被害軽減ブレーキは完全に事故を防ぐものではなく、走行時の周囲の環境によっては障害物を正しく認識できないことや、衝突を回避できないことがあることを注意喚起しています。
衝突被害ブレーキなどの安全装置を過信せず、責任はドライバー自身にあると自覚し、安全運転を心がけましょう。
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