更新日:2025年2月4日
公開日:2020年7月10日
最近の車には、さまざまな安全装置が搭載されています。自動ブレーキもその一つで、前方の危険を察知し、運転者への警告や緊急的にブレーキを作動させて衝突を回避するもので、国交省では「衝突被害軽減ブレーキ」という名称を使用しています。
日本国内では、軽自動車を含む新型車には自動ブレーキ(衝突被害軽減ブレーキ)装置の搭載が義務化されています(継続生産車も義務化される予定です)。
自動ブレーキ(衝突被害軽減ブレーキ)のメリットや義務化の概要についご説明します。
自動ブレーキ(衝突被害軽減ブレーキ)義務化の背景の一つとして、高齢運転者の運転操作ミスによる事故が増えていることがあります。自動ブレーキ(衝突被害軽減ブレーキ)を含む安全運転サポート車の普及が運転ミスによる事故の低減につながることが期待されています。
「自動ブレーキ(衝突被害軽減ブレーキ)の義務化」は2021年11月から、国内で販売する新型車を対象に搭載義務化が始まっています。
自動ブレーキ(衝突被害軽減ブレーキ)の搭載義務の開始時期は、新型車と継続生産車、国産車と輸入車で異なり、以下のようなスケジュールとなっています。
国産車 | 輸入車 | |
---|---|---|
新型車※ | 2021年11月 | 2024年7月 |
継続生産車 | 2025年12月 | 2026年7月 |
※軽トラックは2027年9月
※「新型車」とは、新車(新しく購入した車)のことではなく、メーカーが生産する「新しいモデルの車種」のことです。
義務化される自動ブレーキ(衝突被害軽減ブレーキ)の要件は、次の通りです。
※出典元:国土交通省「乗用車等の衝突被害軽減ブレーキに関する保安基準(概要)」
自動ブレーキ(衝突被害軽減ブレーキ)義務化の対象車は、2021年11月以降にフルモデルチェンジをする新車のみです(2024年7月からは輸入車も義務化)。2025年12月以降は、既存の車種も自動ブレーキ(衝突被害軽減ブレーキ)義務化の対象になります。
現在自動ブレーキ(衝突被害軽減ブレーキ)が搭載されていない車を所持しているからといって買い替える必要はありません。
自動ブレーキ(衝突被害軽減ブレーキ)ではありませんが安全性を高めたいという場合、国土交通省が性能認定している「ペダル踏み間違い急発進抑制装置」を後付けすることができます。
ホンダアクセス | 踏み間違い加速抑制システム(08Z35-PM0) |
---|---|
トヨタ自動車 | 踏み間違い加速抑制システム2) |
三菱自動車工業 | ペダル踏み間違い時加速抑制アシスト(MZ6078) |
日産自動車 | 後付け踏み間違い加速抑制アシスト |
トヨタ自動車 | 踏み間違い加速抑制システム |
ダイハツ工業 | ペダル踏み間違い時加速抑制装置「つくつく防止」 |
スズキ | ふみまちがい時加速抑制システム(9921T-72M00) |
マツダ | ペダル踏み間違い加速抑制装置(D651-V7791) |
国土交通省 ペダル踏み間違い急発進抑制装置の性能認定装置一覧より 2024年12月現在
後付けの運転支援装置には他にも、カメラによって前走車や障害物との衝突の危険を知らせる装置もあります。自動でブレーキは作動しませんが、警報により安全性は高まります。
一般的に自動ブレーキの名称で呼ばれますが、国土交通省では運転者をサポートする「衝突被害軽減ブレーキ」という名称を使用し、その性能の評価認定制度も始まっています。
自動ブレーキ(衝突被害軽減ブレーキ)は、カメラやレーダーにより先行車との距離を常に検出し、危険な状況にあるかどうかを監視します。
前方の自動車や歩行者を検知し、追突の危険性が高まったら、まずは音や警告灯などで警告し、ドライバーにブレーキ操作を促します。
それでもブレーキ操作がなく、このままでは追突や衝突の可能性が高いとシステムが判断した場合、自動的にブレーキが作動し、被害軽減を図る装置です。
自動車保険では、自動ブレーキ(衝突被害軽減ブレーキ)搭載車を対象にした保険料の割引を設定している保険会社もあります。
チューリッヒの自動車保険を例にご説明します。
チューリッヒの自動ブレーキ割引(2025年2月記事執筆現在)
車にAEB(衝突被害軽減ブレーキ)、いわゆる自動ブレーキが搭載されており、かつ以下の条件を満たす場合に自動ブレーキ割引が適用となります。
対象用途車種 | 自家用普通乗用車、自家用小型乗用車、自家用軽四輪乗用車 |
---|---|
条件 |
|
(注1)申込み時の車台番号と自動車検査登録情報協会のデータベースと照合し、AEB装置の有無を確認しています。確認の結果、割引が適用されない場合もあります。
また、型式がわからない場合には、ASV割引の適用対象外となります。型式は、自動車検査証(車検証)の型式欄で確認ができます。
(注2)型式が発売された年度に「3」を加算した年の12月末までの期間とします。
約3年経過した後は、統計情報より得られるリスク軽減効果が、型式別料率クラスに反映されるので割引の適用はなくなります。
(2025年2月執筆現在)
衝突事故に被害軽減が期待されている自動ブレーキ(衝突被害軽減ブレーキ)ですが、あくまでドライバーの運転を支援する機能であり、運転操作の主体はドライバーです。
また車種によってシステムの作動する条件は異なります。
これまでも自動ブレーキ(衝突被害軽減ブレーキ)性能の過信を原因とした交通事故が発生しており、警察庁、国土交通省でも自動ブレーキ(衝突被害軽減ブレーキ)は完全に事故を防ぐものではなく、走行時の状況によっては、障害物を正しく認識できないことや、衝突を回避できないことがあることを注意喚起しています。
自動ブレーキ(衝突被害軽減ブレーキ)が十分な機能をしない場合として、独立行政法人自動車事故対策機構は、以下のような場合を挙げています。
自動ブレーキ(衝突被害軽減ブレーキ)というシステムを過信するのは危険です。
車の取扱説明書に記載してある、自動ブレーキ(衝突被害軽減ブレーキ)の作動条件をしっかり確認しておきましょう。
エアバッグも同様ですが、センサーによって検知する装置は、誤作動や作動しないこともあります。合流や出会い頭などの衝突を回避するのも難しいようです。
日本では、2021年から国産の新型車への自動ブレーキ(衝突被害軽減ブレーキ)装置の搭載が義務化されています(2024年から輸入車も義務化)。自動ブレーキ(衝突被害軽減ブレーキ)は安全運転をサポートするものですが、自動ブレーキ(衝突被害軽減ブレーキ)を過信してしまったことによる事故も起きています。
自動ブレーキ(衝突被害軽減ブレーキ)はあくまでドライバーの運転を支援する機能であることを忘れずに、自動ブレーキ(衝突被害軽減ブレーキ)搭載車であっても安全運転を心がけることが大切です。
※記載の情報は、2025年2月時点の内容です。
1965年生まれ。芝浦工業大学工学部機械工学科卒。トヨタ直営販社の営業マン、輸入車専門誌の編集者を経て自動車ジャーナリストとして独立。さまざまな自動車雑誌の他、エンジニア向けのウェブメディアなどに寄稿している。
近著に『電気自動車用パワーユニットの必須知識』(日刊工業新聞社)、『エコカー技術の最前線』(SBクリエイティブ)、『図解カーメカニズム基礎講座パワートレーン編』(日経BP社)がある。
日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員
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