事故の衝突を大きく軽減するエアバッグは、現在多くの車に搭載されている重要な安全装置です。日本で標準装備になっているエアバッグはフロントエアバッグで、側面を防御するサイドエアバッグの標準装備化は欧州に比べ遅れています。
しかし最近は日本でも自動車の安全基準が高まり、サイドエアバッグを標準装備した車種も増え始めています。自動車の安全装備におけるエアバッグの重要性を再確認しながら、サイドエアバッグとはどのようなものか、その効果などについて解説します。
日本ではまだ認知度の低いサイドエアバッグですが、欧州ではもはや標準的な安全装置です。サイドエアバッグのしくみと、なぜ必要とされるのかを説明します。
現在日本で使用されているエアバッグは「SRSエアバッグ」と呼ばれるシートベルト併用式エアバッグで、シートベルトの働きを補助し、衝突時の衝撃を軽減するものです。衝突など大きな衝撃が起こった際に窒素ガスでエアバッグを瞬間的に膨らませ、乗員の頭部や胸部への衝撃を和らげます。しかしシートベルトを正しく着用していないとエアバッグは有効に作動せず、逆に事故の被害が大きくなることもあります。エアバッグの効果を有効にするためにもシートベルトの正しい着用が必須です。
国産の自動車はまだフロントエアバッグのみが標準装備で、サイドエアバッグはオプションとして設置することが主流です。
フロントエアバッグは衝突事故による被害を大幅に軽減してくれますが、それだけで十分とはいえません。フロントエアバッグでカバーできる衝撃は衝突事故の一部のものに限られるからです。
たとえばフロントのエアバッグが確実に作動するのは自動車が正面衝突したときに限られ、それ以外のケースでは正常に作動しないこともあります。またガードされるのも前方だけで、車の側面から追突された場合など、横からの衝撃には対応できません。
まず、どのような条件がそろったときにフロントエアバッグが作動するのかを認識することで、その役割と限界が理解できます。以下の国土交通省がまとめたフロントエアバッグが膨らむ条件を見てみましょう。
出典:国土交通省 自動車総合安全情報より
機械が作動するには、その設計時に設定された条件を満たさなければならず、そうでない場合はその有効性は発揮できません。フロントエアバッグが作動する細かな条件を確認すると、改めてサイドの衝撃を緩和するサイドエアバッグ搭載の重要性が明らかになります。
ではサイドエアバッグの特長はどのようなものなのでしょうか。同じくサイドからの衝撃を和らげるカーテンエアバッグの特長についても解説します。
サイドエアバッグ
サイドエアバッグはシートのドア側に搭載されるエアバッグです。事故の衝撃を感知したら乗員とドアの間で瞬時にエアバッグが開き、乗員の頭部と胸部を守り上体への衝撃を軽減します。フロントエアバッグと同様、シートベルト併用式(SRS)です。また、側方からの衝突の場合に対してのみ作動し、膨らんだ後はすぐにしぼんでしまうため、前面衝突、後面衝突、多重衝突、横転・転落などの場合の効果は期待できません。
カーテンエアバッグ
カーテンエアバッグはドア上部のルーフラインに搭載されるエアバッグです。事故の衝撃を感知したらドアと座席の間にブラインドが下りてくるようにエアバッグが瞬時に開きます。サイドウインドウの全体を覆い、乗員とドアの間のクッションとなり、乗員の頭部と胸部をガードします。カーテンエアバッグは作動後しばらくの間膨らんだままになるので、車が横転などをした際の被害の軽減にも効果的です。
サイドエアバッグの効果は自動車が側面衝突を起こした際に顕著に表れます。車の側面衝突は正面衝突よりも乗員に与える衝撃が大きくなります。これは、正面衝突の場合は車のフロント部分が一定のガードになるのに対し、側面衝突はドア1枚しかガードするものがないためです。そのため側面衝突が乗員に与える被害は正面衝突よりも甚大なものになってしまいます。
こうした被害を減少するのにサイドエアバッグやカーテンエアバッグは驚くほどの効果を発揮します。サイドエアバッグの実験(ミニバンの側面衝突試験)でも、エアバッグ「有」と「無」とでは死亡率など事故の被害を確実かつ大幅に減少できるとの結果が出ています(※1)。
サイドエアバッグやカーテンエアバッグはこれからの自動車に必要不可欠な安全装置といえるでしょう。
(※1)IIHS(米国道路安全保険協会/Insurance Institute for Highway Safety)の調査(2016年)による
サイドエアバッグはフロントエアバッグと同様、シートベルトを正しく着用していないと十分な効果は期待できません。たとえエアバッグが作動してもシートベルトを着用していない場合は、着用している場合に比べ事故による死亡率は約15倍にもなるという調査もあります(※2)。運転席や助手席だけでなく後部座席に乗る際もシートベルトを着用することは法令で定められた義務です。事故から身を守るためにも必ずシートベルトを着用するようにしましょう。
またサイドエアバッグやカーテンエアバッグを搭載した車に乗る際は、次の点にも注意する必要があります。
専用のシートカバー以外は使用しない
シートカバーは専用のもの以外を使用すると、シートカバーに引っかかってサイドエアバッグやカーテンエアバッグが正常に作動しなくなる恐れがあります。シートカバーはサイドエアバッグやカーテンエアバッグに対応したものを選ぶようにしましょう。
ドアにもたれかからない
ドアにもたれかかっているとサイドエアバッグやカーテンエアバッグの作動の邪魔をし、さらにはエアバッグが膨らむ際にけがをしてしまう可能性もあります。ドアにはもたれかからないよう注意しましょう。
エアバッグ警告灯の点滅には要注意
エアバッグ警告灯が点滅する原因はさまざまです。
シートベルトプリテンショナー(乗員をシートに固定させるために、5〜10cm程ベルトを強制的に巻き上げる装置)の故障や、内部の汚れ、接触不良により生じたシートベルトバックル(受け側)の故障 、もしくは電圧の低下によるバッテリーの容量不足などです。
その他にも、コンピュータの故障やセンサーの故障など、エアバッグの駆動回路や電気系統の異常がまず疑われます。いざというときにエアバッグが正常に作動しない事態が懸念され、車の運転そのものにも支障をきたすトラブルに繋がりかねないので、エアバッグ警告灯が点滅した場合は、すぐにディーラーや整備工場へ相談しましょう。
サイドエアバッグもカーテンエアバッグも後付けはできません。
サイドエアバッグはオプションで装備する場合、5万円から10万円程度ですので、新車を購入する際に装備することをおすすめします。また最近はサイドエアバッグシステムを標準装備する自動車も増えてきています。
サイドエアバッグの搭載は欧米では標準ですが、日本ではまだまだ一般的とはいえません。しかし日本でもこれからはサイドエアバッグの搭載が標準になると考えられます。
自動車の安全基準は日本よりも欧米の方が進んでいます。アメリカ合衆国やドイツでは2012年のサイドエアバッグ標準装備率が90%、2016年には97%というデータ(※3)があり、欧米の安全基準への意識が伺えます。安全装置の標準装備は車の評価対象になり、売り上げにも大きく影響することが、サイドエアバッグの標準装備が進んだ要因でしょう。
対して日本では安全装置の標準装備は車の評価対象にはなっていません。ゆえにサイドエアバッグを標準装備する必要性を、日本の自動車メーカーは欧州のメーカーほど感じることがありませんでした。そのため国内車ではサイドエアバッグが装備されている車種は一部に限定され、オプション装備されることが一般的だったのです。
しかし日本でもサイドエアバッグやカーテンエアバッグの標準装備化が進み始めました。
国土交通省は2016年1月に「ポール側面衝突時の乗員保護に係る協定規則」を発表しました。この規則は、新車に行う側面からの衝突テストを「より厳格な欧州基準」に義務化したものです。
今後は側面からの衝突に対する安全性がこれまで以上に求められ、サイドエアバッグやカーテンエアバッグを標準装備した自動車が増えることが予想されます。特にサイドにスペースのないコンパクトカーや軽自動車への標準装備化は一気に進むものと思われます。「ポール側面衝突時の乗員保護に係る協定規則」は2023年1月20日以降の新車から適用されています。日本でもサイドエアバッグの標準装備が当たり前になる日は近いといえます。
欧州に比べ遅れていた日本のサイドエアバッグ標準装備です。しかしようやくその必要性が一般的な認識になりつつあります。エアバッグは自動車事故から乗員を守る重要な安全装置です。自動車購入時には、フロントエアバッグだけでなくサイドエアバッグの必要性もよく考えて、安全安心なカーライフを手に入れましょう。
最後に、車を所有されている方は、チューリッヒの自動車保険をご検討ください。
万が一の車の事故・故障・トラブルに備えておくと安心です。
インターネットから申し込むと、
初年度最大21,000円割引
DD190306-1