豪雪地帯などのニュースを見ていると、雪の日に車のワイパーを立てて駐車している様子が映し出されることがあります。近年はこれまで積雪が少なかった地域でも雪が積もることが増えていますので、雪の日のワイパー対策を知っておくといざというとき役立つでしょう。では、なぜ雪の日にはワイパーを立てるのか、その理由を解説します。
普段はフロントガラスについた状態で構わないのですが、ワイパーはフロントガラスから離して立てることも可能な構造になっています。雪が降ったときや、夜の間に降雪が予想されるときなどは、ワイパーを立てておいたほうがいい場合もあります。ワイパーを立てるべき理由は主に以下の3つです。
雪の日は寒いため、ワイパーゴムが凍ってしまうおそれがあります。ワイパーは通常、フロントガラスに接触しているため、その状態で凍結するとフロントガラスに張り付き、動かせなくなってしまうのです。
ワイパーは、以下のような部分の組み合わせで構成されています。
ワイパーブレード:フロントガラスの表面にゴムの部分を密着させ、汚れや雨水を拭き取る部分
ワイパーアーム:ワイパーブレードを動かす部分
リンク機構:ワイパーアームとモーターを連結し、動力を伝える部分
凍ってフロントガラスに張り付いたワイパーをそのまま動かそうとすると、ワイパーブレードのゴムが剥がれたり変形してしまったりする恐れがあります。仮にワイパーブレードが無事でも、ワイパーアームに過剰な負荷が加わり、折れ曲がってしまったり、リンク機構が破損してワイパーが動かなくなってしまったりするリスクがあります。
また、仮にワイパーを構成する各部分が無事でも、ワイパーの停止位置がずれたり、可動範囲が変わってしまったりする可能性があります。そのままの状態でワイパーを作動させているとワイパー本体だけでなく、モーターにも負荷がかかって故障の原因になります。
単純に、凍ったワイパーがフロントガラスに張り付いたまま固まっていると、ワイパーに傷がつかないように除雪しなければならないため、除雪がしづらくなるという理由もあります。
ワイパーゴムの張り付きや劣化を防ぐため、雪の日にはワイパーを「立てておいたほうがいい」ということはお分かりいただけたと思います。では雪の日にワイパーを立てることによるデメリットはないのでしょうか?
雪の日にワイパーを立てておくと、屋根などからまとまった落雪があった際、下敷きになったワイパーが折れてしまう恐れがあります。また、立てたワイパーの位置すら見えないほどの積雪の場合は、除雪のときにワイパーをひっかけて壊してしまうこともあります。このように、雪の日にワイパーを立てることはメリットばかりでなく、デメリットも存在することも覚えておいてください
雪の日よりも稀ですが、夏の暑い日にワイパーを立てる人もいます。理由は、フロントガラスの熱で、ワイパーゴムが変形してしまうのを防ぐためです。夏にワイパーを立てている人があまりいないのは、遮熱シートを使うなど、フロントガラスの熱を防ぐ方法が他にも存在するためでしょう。
前述のようなデメリットがあるとはいえ、総合的に判断するなら、やはり「雪の日にはワイパーを立てておいたほうがいい」といえるでしょう。たしかに落雪による破損の危険性は生じてしまいますが、適切な対処法を実施すれば解決することができるからです。「ワイパーを立てる際の注意点」については次の章でまとめて解説したいと思います。
一般的な車のワイパーは、手で掴んで持ち上げるだけで簡単に立てられるので特別なテクニックは一切必要ありません。初めてやる方も何の問題もなく立てられるはずです。
先にご説明したように、落雪によって立てたワイパーが破損してしまう恐れがあるため、軒先(屋根の端)やひさしの真下など、まとまった雪が落ちてくる可能性のある場所での駐車は避けたほうが無難です。
また、雪や風にさらされる場所の場合、車の前方が風下になるように駐車したほうが、後から車の周囲を除雪する際の負担が軽くなります。風向きは変わってしまうものですが、駐車のときは風向きも考慮してみてください。
「ボンネットに隠れてしまうワイパー」とは、「コンシールドワイパー」と呼ばれるものです。コンシールドワイパーは一部の高級車や外国製の自動車で採用されており、使っていないときはワイパーがボンネットの中に収納されるように設計されています。そのため、こうした車に乗っている人の中には「うちの車ではワイパーは立てられない」と思い込んでいる方がいるかもしれません。
コンシールドワイパーが採用された車種の場合、ワイパーを収納位置から出せる「ワイパースイッチ」がついています。このスイッチを使えば他の車と同じようにワイパーを立てられるので、何の問題もありません。ただし、ワイパーを立てたままの状態で動かしてしまうと、フロントガラスなどにぶつかり破損する危険があるので、ワイパーを立てた後は必ず元の収納位置に戻してから使用するように注意してください。
雪の日にワイパーを立てるのを忘れた場合や、予期せぬ降雪に見舞われてワイパーがフロントガラスに張り付いてしまった場合の対処法をご紹介します。
ワイパーブレードのゴムが凍結し、ワイパーがフロントガラスに張り付いてしまったら、自然に溶けるのを待つかエアコンの暖房などで温めて解凍しましょう。車外から熱を加えて解凍する場合、お湯をかけるのはおすすめしません。急激な熱膨張によりフロントガラスやワイパーブレードのゴムが破損する恐れがあるからです。水、あるいはぬるま湯のほうが好ましいでしょう。ただし、雪が降り続いている場合はかけた水分が再凍結してしまう危険もあるので気をつけてください。
手軽に短時間でワイパーを解凍したいのなら、「解氷スプレー」という商品を使用するのもおすすめです。
また、ワイパーの中には電熱線が入っていて自動的に解氷できる機能が備わったものもあります。一度、ご自分の自動車の説明書を確認しておきましょう。
ワイパーブレードは市販されているので、もし凍結によって変形したり、折れ曲がったりした場合は自力で交換することもできます。ワイパーアームやリンク機構が破損した場合や停止位置がずれてしまった場合は、自動車修理工場かカー用品店などで専門家に見てもらったほうが安全です。
雪の日にワイパーが動かないと、視界が悪くなり不便なだけでなく、事故に遭遇してしまうリスクも高まります。雪の日にワイパーを立てたほうがいいことを知らなかった方、滅多に雪が降らない地域に住む方々も、運転に支障が出ないよう、雪が積もる前にできるだけワイパーを立てておくことをぜひ覚えておきましょう。
最後に、車を所有されている方は、チューリッヒの自動車保険をご検討ください。
万が一の車の事故・故障・トラブルに備えておくと安心です。
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