更新日:2023年8月17日
公開日:2019年12月24日
マンションやアパートなど賃貸住宅を借りるとき、不動産業者から入居条件として火災保険に入るよう説明されたことがある方も多いでしょう。
賃貸住宅は自分が所有している物件ではないため、「火災保険は関係ないのでは?」と疑問に思った方もいるかもしれません。
本記事では、賃貸住宅(アパート・マンション・戸建て)の火災保険の必要性や、賃貸住宅に必要な補償内容、自分で火災保険を選んで加入する方法などについて詳しく解説します。
火災保険とは、自宅が火災をはじめとする災害やトラブルにあい、家や家財が燃えたり壊れたりしたときに備える保険のことです。
火災保険の対象となる物件は、「建物」と建物内に収容されている「家財」の2つに分けられます。これらの保険は、それぞれの所有者が掛けるもので、賃貸住宅の「建物」については大家さん(オーナー)が加入します。したがって、賃貸契約を結んで一室を借りている場合、「建物」についての補償を検討する必要はありません。
しかし、上の階からの水漏れ、他の部屋からの出火によるもらい火などによる、室内の家具や家電、衣類などへの損害については、自分で備える必要があります。これらを補償してくれるのが「建物内に収容されている家財」を対象とする火災保険(家財保険)です。
また、「不測の事故による大家さんをはじめとする第三者への損害賠償責任」についても同様に備えておく必要があります。このようなケースは「借家人賠償責任」や「個人賠償責任」がセットされている商品で補償されます。
マンションやアパート、戸建てなど賃貸住宅を契約する際には、「借家人賠償責任」や「個人賠償責任」を含む火災保険(家財保険)に加入することが一般的です。
賃貸住宅に入居するときに加入する火災保険は大きく3つの補償で構成されます。ここでは、それぞれの具体的な補償内容についてご紹介します。
日本では失火責任法(失火ノ責任ニ関スル法律)により、重大な過失がなければ、自分が起こした火災で隣家などに火が燃え移っても損害賠償は負わないこととなっています。
つまり、隣家からのもらい火で自身の所有する家財が損害を被っても、損害を出火元に請求できないことを意味します。もらい火による損害に対しては、自身で備える必要があります。
家電や家具、衣類などを個々にみるとそれほど高額でないと思われがちですが、火事で全焼した場合に全部の家財を揃え直すとなると、かなりの額に上ります。そういったケースで、家財保険が役に立ちます。部屋の中に所有している家具・家電、衣服など、自身の財産(家財)を守るためにも加入がおすすめです。
例:隣家のもらい火で自分の家具や家電が被害を受けてしまった。
賃貸借契約において、賃借人は借りていた物件を退去するにあたり、借りてから生じた損傷を回復して明け渡さなければならない「原状回復義務」が定められています。
火事などで万が一、借りている部屋を原状回復して返せなくなってしまうと、民法第415条の債務不履行による損害賠償責任を負う可能性があります。
こうした、大家さんに対する法律上の損害賠償責任を負った際に金銭的な補償をしてくれるのが「借家人賠償責任補償」です。一般的に、不動産業者が賃貸契約時に保険加入を求めるのは、借家人賠償責任の補償を備えてもらうためです。
入居者が火災などを起こしたにも関わらず損害を賠償してもらえなければ、大家さん(オーナー)は多大な損失を被ることになります。これでは安心して物件を貸すことはできません。
双方に契約を取り交わしている大家さんと借り手においては、「失火責任法」ではなく「原状回復義務」が適用されます。借家人賠償責任は必ず備えておくのが良いでしょう。
例:自分が火事を起こし焼けた壁紙を交換することになった。
賠償金額の目安
賠償金額は、その時の状況や被害の内容によります。
フローリングや壁紙を貼り替えなければいけないケースもあるでしょうし、被害の状況によっては、室内全体のフルリフォームが必要になる場合もあるかもしれません。
そうした被害を修復する金額を負担することになる可能性もありますし、修復の工事をしている間は大家さんにとっては家賃収入が得られなくなるため、家賃補填の費用を賠償する場合もあるでしょう。ある程度の金額の備えをしたいところですね。
個人賠償責任に対する補償とは、2の「借家人賠償責任」では補償されない日常のトラブルなどにより他人にケガをさせたり、他人の財物を壊したりして法律上の損害賠償責任を負ったりした場合の補償です。
集合住宅で多いのが、水漏れによる階下の家財等への損害賠償事故です。その他、個人賠償責任の補償は幅広くケアされます。たとえば「自転車運転中の交通事故による損害賠償」といった日常生活上で生じた損害賠償責任も対象となるなど、自宅を離れている間のトラブルも補償範囲内です。一家に一契約備えておきたい保険といえるでしょう(他人の財物の場合、「借りているもの」については補償の対象外となります)。
例:自室の洗濯機のホースが外れて、下の部屋に漏水し衣服類を汚したため、弁償を求められた。
賃貸用の火災保険(家財保険)には、その他にも細かなオプションが付帯されています。万一のとき加入者を大いに助けてくれるものですが、せっかくの補償もどのようなときに使えるのかを知らなければ、使いようがありません。しっかりチェックしておきましょう。
3つの補償以外にも、賃貸住宅用の火災保険(家財保険)には火事や自然災害によって発生した損害への補償とは別に、まとまった出費をカバーする補償もあります。例えば、損害時に発生する仮住まい費用や片付け費用などが補償対象となる商品もあります。
チューリッヒ少額短期保険の「ミニケア賃貸保険(賃貸家財総合保険)」には、事故により、借りている部屋に30日以上住めなくなった場合に、生活再建費用として10万円が支払われる補償があります。
補償される損害の例 | 支払額 | |
---|---|---|
生活再建費用 | 家財補償の対象となる事故(盗難を除く)が発生し、修復作業のため連続して30日以上居住できなくなった。 | 1回の事故につき10万円 |
修理費用 | 空き巣被害に遭い、玄関のドアロックを壊された。賃貸借契約で玄関のドアは入居者が修理することになっているので、修理を行った。 | 1回の事故につき100万円が上限 |
被害事故法律相談費用 | 大雨で部屋が雨漏りし、ベッドや洋服が汚損したので大家さんに弁償するよう求めたが、取り合ってくれなかったので、弁護士に相談した。 | 1年の保険期間で30万円が上限 |
損害防止費用 | 火災、落雷、破裂・爆破の事故の際に消火器具を使用するなど、損害の発生または拡大防止のために有益と認められる費用 | 実際に生じた費用 |
残存物取片づけ費用 | 家財保険の保険金が支払われる事故で、がれきなど残存物の片づけ費用が生じた | 家財の保険金の10%に相当する額 |
賃貸住宅用の火災保険(家財保険)で、すべての損害が補償されるわけではない点には注意が必要です。
水災補償を除いた契約を選ぶと、洪水などの被害は補償されません。
また、地震を原因とした火災や津波の被害を補償してもらうためには、地震保険にも加入しておく必要があります。
そのほか、対象物の欠陥や経年劣化による故障や滅失、加入者の故意もしくは重大な過失または法令違反による損害についても、火災保険(家財保険)の補償対象外となります。加入を検討している商品の補償の範囲をしっかりと確認しておきましょう。
賃貸借契約の際に不動産業者から提案を受ける火災保険(家財保険)は、物件の更新期間である2年間分をまとめて契約するケースが多いです。エリアや建物の構造にもよりますが、保険料は、2年分で1万〜2万円程度が相場です。
「本当に困る部分だけを補償対象とする」「実際にかかる補償額を計算する」ことで、マンションやアパートなど賃貸住宅の火災保険料を、節約できることがあります。賃貸住宅の火災保険料を節約するコツをご紹介します。
火災保険(家財保険)の中には、子供が走ってテレビを壊したなど、日常のささいなトラブルでも保険金が出る商品もあります。一方で補償される範囲が広がると、一般的に、保険料は高くなります。
パソコンに飲み物をこぼしてしまって壊れた場合でも、持ち運びがしやすいノートパソコンだと補償対象にならないものの、備え付けのデスクトップであれば補償対象になるといった細かな分類がなされていることもあります。
発生頻度が高い事象まで補償をしていると保険料が上がってしまうため、本当に困るであろう事態だけ補償を期待するというのも、加入者が保険を上手に選ぶコツです。
補償されないケースはどういう内容なのか、それは自分の預貯金の中で充分に対応できるのか、といった観点でチェックして、本当に困りそうな部分についてだけ、保険を頼りにする選び方も良いでしょう。
家財の保険金額は、世帯員の年齢や家族構成などとは関係なく評価され、補償額も一律で提案されるケースが一般的です。20代の単身者と、世帯主が50代である5人家族では、家財の評価は当然異なります。適切な補償額を考えることで、賃貸住宅の火災保険料を節約できることがあります。
一度、自宅にある家具・家電をリストアップし、すべて買い直すとしたらどのくらいかかりそうかを集計してみると補償額の目安になります。
ここでも、すべてを補償でカバーしようとするよりも、損害のうちいくらなら自分で負担できそうかを考え、免責(被害があったとしても補償を受けられない金額の設定。例えば免責20万円を設定しておくと被害が100万円でも受け取れる保険金は80万円になるなどがあります)を設定するなどすると、保険料の節約にもつながります。
個人賠償責任保険はクレジットカードに付帯サービスとしてついていることや、月々数百円支払って加入できる商品、自転車保険の中に含まれている場合もあります。
重複があっても保険料が高額になるような保険ではありませんが、充分な金額を備えられているか、自分以外の家族が起こしたトラブルも対象になっているか、補償の範囲などをしっかりチェックする意味でも、他の契約や重複契約などを整理・確認しておくのがおすすめです。
賃貸契約と火災保険(家財保険)契約は別のものです。
必ずしも不動産会社で紹介された火災保険(家財保険)に入らなければいけないというわけではありません。大家さんや不動産会社から求められる契約条件を満たしていれば、どの火災保険(家財保険)に入るかは基本的には自分で選べます。
状況によって、不動産会社に紹介された火災保険(家財保険)に入るケース、自分で選んだ火災保険(家財保険)に入るケースに分かれることになります。
ここでは、それぞれのポイントをご紹介します。
せっかく気に入った部屋が見つかったので、「できるだけスムーズに入居したい」または「賃貸住宅の火災保険を比較検討する時間がない」という場合は、不動産会社から紹介された火災保険(家財保険)に加入することになります。加入の際は補償内容、補償額の設定などが自分のニーズに合っているかどうか、一度持ち帰って検討することが大切です。
不動産会社から勧められた家財評価の目安でそのまま契約すると、余分な保険料を払うことになったり、逆に高額な家具を買い揃えているような場合には、補償額が足りなかったりする場合もあります。
保険金額は、所有する家財の総額がどのくらいかを確認し、その金額がカバーされるよう過不足のない金額で設定することをおすすめします。
自分で選んで賃貸住宅の火災保険(家財保険)を契約する場合も、補償額の設定については不動産業者を通じて加入する場合と基本的な考え方に大差はありません。しかし、保険会社や保険商品の選択肢が広がるため、複数の商品を比較検討するとよいでしょう。「どのようなケースで補償されるか、あるいは補償されないか」「付帯されているオプションは自身にとって必要か」といった視点で検討し、支払う保険料についてもしっかりチェックしてください。いざというときに本当に役に立つ保険を選択しましょう。
マンションやアパートなど賃宅住宅の火災保険(家財保険)は、火事や自然災害、予期せぬ部屋のトラブル時に、自己の家財の補償、大家さんに対する補償、第三者に対する補償をまとめてサポートしてくれる非常に頼もしい存在です。
また、不動産会社で紹介された火災保険(家財保険)に、加入しなければならない義務はありません。自分で火災保険(家財保険)を選んで、加入することができます。
加入の際は、本当に自分に合った保険を選ぶことが非常に重要です。例えば、ダイレクト型の保険会社では、リーズナブルな保険料で火災保険(家財保険)を提供しているので、情報をしっかりキャッチし、保険選びの選択肢に取り入れてみましょう。
チューリッヒ少額短期保険の「ミニケア賃貸保険(賃貸家財総合保険)」は
を入力するだけで、かんたんに保険料の見積りをとることが可能です。
賃貸住宅の契約の際、加入が条件となることが多い火災保険(家財保険)ですが、ネットで簡単に見積り、手続きができる商品が増えています。
チューリッヒ少額短期保険「ミニケア賃貸保険(賃貸家財総合保険)」についてはこちら」
ご自身の所有している家財や契約する物件など、ニーズに合った補償内容を検討してみてください。
独身時代に貯蓄80万円しか持たずマンションを購入したことをきっかけにお金の勉強と貯蓄を始める。現在では夫婦で複数の物件を所有し、賃料収入も得ている。
お金に関する書籍は『「定年」からでも間に合う老後の資産運用 (講談社+α新書) 』など20冊以上。YouTubeチャンネル「FUROUCHI vlog」では、日記にお金のTipsを交える動画を更新している。
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP認定者、宅地建物取引士