あなたの“読む”が気候変動対策に

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わたしなりのサステナビリティ

モデル・青柳文子が考えるエシカルな選択。「自分のため」が地球環境の配慮につながる

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チューリッヒ保険会社は企業としての排出CO2削減などはもちろん行った上で、気候変動という全人的な問題へ対応するには一人ひとりの理解と参加も重要であると考え、多くの人が気候変動についてよりよく知り参加できる“きっかけ”作りを始めました。
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今日の献立を決めるとき、友人へのプレゼントを考えるときなど、みなさんはどのような基準で選択していますか?

「自分の行動を丁寧に考えて決めることは、自信にもつながる」と語るのは、オランダで生活をしているモデル・俳優の青柳文子さん。暮らしのなかで環境に配慮した選択を心がける青柳さんは、なぜ気候変動に興味をもったのでしょうか。また、どんな基準で生活にまつわる選択をしているのでしょうか。

気候変動に対して関心を向ける著名人や文化人によるコラム連載『わたしなりのサステナビリティ』。気候変動問題に意識を向け、考えるきっかけにするため、今回は、日々のエシカルな選択について、青柳さんに書いていただきました。

INDEX

モデル・俳優

青柳文子

1987年生まれ。二児の母。独創的な世界観とセンスで同世代女性から支持を集め、雑誌、映画、ドラマ、CMなどに出演。映画や旅行についてコラムを執筆、商品プロデュースなどさまざまな分野で才能を発揮している。2021年に初のエッセイ本『あか』を出版。

人が多く住む街には「本当の」暗闇がない。自然とともに過ごして感じた不自然な暮らし

子どもの頃から動物が好きでした。2匹の犬と暮らし、小動物もよく育てた。大都会に生まれ、幼い頃に移住した九州も便利な場所に住んだため、コンクリートに囲まれた生活。たまに行くキャンプや川や海の思い出は鮮烈で、そのときの感動はいまも肌感覚として思い起こせます。

初めて乗馬に連れて行ってもらったとき、自分より大きな動物と言葉なくして通じ合えた感覚は、「自分は人間である前に動物なのだ」と教えてくれました。

(画像提供:青柳文子さん)

(画像提供:青柳文子さん)

成長してからもどうにか馬や自然と関わりあえる環境を求め、人口より牛のほうが多い村で農村留学を体験。1年弱と短期間ではありましたが、初めて「本当の」暗闇のなかで、夜空の下に立ち野生動物の息吹を聞きました。

人間の多く住む街のほうだけ空が明るく照らされている不気味さを味わって、ずっと不自然な暮らしをしていたのだと感じたのを覚えています。都会では聞こえなかった音や感じたことのない風の動きに、五感とそれ以上のものが研ぎ澄まされるような感覚は忘れられません。子どもながらに、自分は人間である前に動物で、自然の一部なのだから奢らずにいたいと思うようになりました。

10年以上前にカナダへ短期留学したときには、それまで目を向けていなかった、産業による気候変動の影響についてなども知りました。身の回りと、少し遠くの世界にまでも「解像度を上げて見る」と、いままで見えていなかった現実が鮮明になり、自分自身がその問題の一因となっている──その事実にショックを受け、世界のほんの一部しか見ていなかった自分を恥じました。

環境問題は、わが子の未来とともにある。子どものために、自分のために、暮らしを見直した

そんな原体験を持ちつつも、20代は東京で過ごし、とにかく自分の身の回りのことに翻弄され、それ以外のすべてをおざなりにする月日を重ねていました。都会でうまく暮らすには、あらゆる感覚に蓋をしないといけないのだ、と言い訳をして過ごしていたら、「環境問題」の4文字やそれにまつわる言葉たちにピンとこなくなってしまっていました。

気候変動、人種差別、飢餓、貧困などもそう。世間でよく目にする言葉は、見慣れてしまえばしまうほど、その問題の重みが薄れ、身体から離れてしまうような節がある。意味を理解したつもりでも、言葉だけが一人歩きしているような、生きた言葉として使えていないような。

しかし、自分の子どもが生まれたことで、諦めてしまっていたさまざまな社会問題に「待ったなしで向き合わなければならないときが来た」と感じました。私の人生では折り合いをつけてしまっていた問題を、この子の未来に引き継いではいけない。気づけば自分も責任を負える世代。大人がどうにかしなければ。社会のためというよりは、ただただわが子の未来のために。つまりは自分のために。

(画像提供:青柳文子さん)

(画像提供:青柳文子さん)

調べるうちに、環境問題の解決は、複雑に絡み合う社会問題の解決につながることでもあると知りました。現状をより深く知ると同時に個人でもできることがたくさんあるとわかり、芋づる式に自分の行動が変わっていった。

個人での心がけはあまりにも小さいことのように思えて、途方もない気持ちになることもある。より大きなアクションになるようにと、環境に悪影響をおよぼさないクリーンエネルギー由来の電力会社に変えた。パワーシフト。銀行に預けているお金は、石炭燃料事業に融資をしていない銀行に移した。ダイベストメント。

ものを買うときの基準は、デザインや機能性を重視しつつ、それが不要になったときどうなるかを考えるようになりました。長く使える丈夫なものを探し、不要になればセカンドハンドとして誰かに使ってもらえるような価値のあるもので、いつかは誰も必要としなくなるそのときに、地球に還せるものかどうか。処分に余分なエネルギーを使わずに済むかどうか。

毎日使うものは、なるべく地球に還る素材か、半永久的に使えるものを選びたい(画像提供:青柳文子さん)

毎日使うものは、なるべく地球に還る素材か、半永久的に使えるものを選びたい(画像提供:青柳文子さん)

廃棄物処理の現状を知ると、気軽にはものを買えなくなった。でもそのおかげで、浪費が減って暮らしにゆとりが生まれました。買い物は投票だとよくいうけれど、環境への影響などを意識しながら買い物をしていると、理想の世界をつくり上げていくゲームのような感覚になってきて毎日が楽しい。あとは、歩く日を増やすとか、新しく植物を育てるとか、自分なりのカーボン・オフセットもけっこう楽しい。

「海面が上昇したら自分の家が沈むかも」。オランダでの暮らしで感じたこと

いま私はオランダに住んでいるのですが、ここはさすがのサスティナビリティ先進国。感心させられることも多いです。国土全体のなかで海面より低い場所が多いことから、「海面が上昇したら自分の家が沈むかも」というそれはもう死活問題で、いまのところ出会う人はみんな環境意識が高い。というか、配慮するのが当然で、行動に移していないほうが恥ずかしいといった具合。

普段からパッケージフリーの買い物をするように心がけているのと、オランダでは資源として回収してくれるものが多いこともあり、ひと月に出すゴミの量は1、2袋ほどになりました。

(画像提供:青柳文子さん)

(画像提供:青柳文子さん)

オランダの国民性としても、壊れても修理しながらものを大切に使うし、生産背景にまで配慮された商品が好まれることもスーパーマーケットのラインナップからうかがえます。物質的、表層的なものよりも本質的な価値観を大切にする人と関わるのはとても気持ちがいい。

また、慢性的な住宅不足だとしても、むやみに自然を切り開きはしない。都市開発でも多くの自然と広い公園は必須で、それが国民の幸福度につながること、自然と共に生きることの大切さを社会全体が認識している。そうやって美しい風景も守られ、観光資源にもなっている。寄付の文化が根付いていることも、自然から受ける恩恵によって生まれた心の豊かさのあらわれだと思えます。

(画像提供:青柳文子さん)

(画像提供:青柳文子さん)

いまあるすべての人やものに役割があり、この世界は成立している

ほかにも、オランダは花の国でもあり、みんな本当に庭を綺麗に整えています。馬や羊を畜産のためでなく、趣味で飼っている人も多い。私個人の趣味である乗馬やガーデニングも、よく考えたら環境に負担をかけなくてすむ遊びだ。ただインテリアとして楽しんでいた植物たちも、空気を浄化し、ミツバチや蝶を支えている。

そういったことに気づくと、より一層楽しく、意義も感じるようになります。ミツバチや蝶は私が食べる作物の受粉を手伝ってくれる、人間が生きるうえで欠かせない存在。忌み嫌っていた虫たちだって、いてくれないと花が咲かない。害虫だと思っていた虫にも感謝できるようになりました。

(画像提供:青柳文子さん)

(画像提供:青柳文子さん)

自分の手で植物を育て、庭に新たな生態系が生まれていくのを見守るなかで、ふと「人間の世界も同じだな」と感じることがあります。土や、光、風、水、菌などのバランスが複雑に支えあってようやく花が咲くように、どんな人にも(それがどんな悪い人であろうと)役割があって、すべてのものに存在意義がある。そんなことを頭のなかだけでなく肌で感じ、腑に落ちました。

日々の生活は小さな選択の連続。それが自分をつくり、自信にもつながる

自分のためはもちろん、行動の指針を子どもやパートナー、あるいは地球、自然など大切にしたいものにも焦点を合わせると、なんだかとても生きやすくなったと感じます。何をするにも迷わなくて済む。自分がどうしたいかよくわからないときは、社会全体としてはどうするのが合理的かを考えると、驚くほど毎日がシンプルに、そして楽になります。

(画像提供:青柳文子さん)

(画像提供:青柳文子さん)

今日のごはんは何にしよう。和食にしようか、洋食にしようか。地球環境的には和食かな、身体にもやさしい。そう、地球にやさしいことは大抵自分にもやさしいのだ。友人へのプレゼントは何にしよう。靴下を渡したいけど、どうせなら自然由来の素材にしてみよう。

コンビニで買うおやつに悩むとき。プラ包装よりは紙包装のものにしようか。そもそもコンビ二で買うのってどうなんだろう、そういえばあのおじいさんがやってる小さなお店に行ってみようか。

選ぶものも、訪れる場所も、出会う人も変わってくる。日々の生活は小さな選択の連続で成り立つけれど、その選択一つ一つに、自分以外にも有益なのだと思えると、なんだかとっても充実感が出てくる。

(画像提供:青柳文子さん)

(画像提供:青柳文子さん)

自分が満たされているので、ほかの人にもやさしくなれる。あらゆる自分の一挙一動を丁寧に考えて決めることは、自分の行動に責任を持つことにつながり、それが直接、自信にもつながる。

誰も地球環境を破壊したいなんて思っていないはず。ただ知らなかっただけでとった日々の行動が、方々で悪影響をおよぼすうえに、結果的に自分の首を絞めているなんて悲しすぎます。矛盾が生まれたり、ときに間違えたりしても、考えなしの行動はしたくない。なるべく誰かを傷つけず、自分を嫌いにならなくて済む選択を探し続けたいです。

これからも自分の一つ一つの行動によって生まれる、良いめぐりのなかにいられたらいいな、と思います。

文:青柳文子  編集:森谷美穂、吉田真也(CINRA, Inc) 

ご回答ありがとうございます

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