あなたの“読む”が気候変動対策に

あなたの“読む”が気候変動対策に

レールのゆがみ、道路の陥没……気候変動による交通インフラへの影響と対策とは?

“読む気候変動対策”メディア
Green Timesについて

記事を“読む”だけで森林保全活動の支援につながります
チューリッヒ保険会社は企業としての排出CO2削減などはもちろん行った上で、気候変動という全人的な問題へ対応するには一人ひとりの理解と参加も重要であると考え、多くの人が気候変動についてよりよく知り参加できる“きっかけ”作りを始めました。
  1. STEP 1
    「Green Times」の
    記事を読む
  2. STEP 2
    気候変動を考えるきっかけになったか、ボタンで回答
  3. STEP 3
    きっかけになった数に応じて、チューリッヒ保険会社が森林保全活動へ寄付

「レールのゆがみで電車が運休」「道路が陥没して通れない」。近年、こうした交通インフラのトラブルが増えています。その背景にあるのが、気候変動による酷暑や豪雨です。なぜ気候変動は交通インフラにダメージを与えるのでしょうか。地盤工学を専門とする芝浦工業大学の稲積真哉教授に、トラブルのメカニズムや最新の対策、私たちにできることを伺いました。

INDEX

酷暑で鉄のレールがゆがむって本当?

―まずは、酷暑が要因と考えられる交通インフラのトラブルについて、近年の事例をいくつか教えてください。

稲積:直近の事例では、2025年7月28日、最高気温が36.4℃の猛暑日となった富山市で、路面電車のレールがゆがむトラブルがありました。復旧までに7時間もかかり、121本が運休して、約4,000人に影響が出たのです。また同日、兵庫県を走るJR加古川線でもレールのゆがみが見つかり、約1,600人に影響が出ました。

道路でも、2022年に東京都の千代田区や品川区、府中市や町田市などで陥没が相次いで確認されました。いずれも連日の猛暑が要因と考えられています。

―暑さ以外にも、交通インフラに影響を与える気候条件はあるのでしょうか?

稲積:近年増加している集中豪雨や線状降水帯による大雨も、交通インフラのリスクを高める要因です。地下の老朽した管路に水がしみ込んで地盤がゆるくなり、地面の陥没が起こると道路や鉄道が遮断されてしまいます。

気候変動が交通インフラを破壊するメカニズムとは

熱でゆがんだレールを冷却している様子(画像出典:米国運輸省)

熱でゆがんだレールを冷却している様子(画像出典:米国運輸省)

―なぜ、酷暑や豪雨が交通インフラのトラブルを引き起こすのでしょうか。そのメカニズムを教えてください。

稲積:まず鉄道ですが、レールの素材である鋼は、温度が1℃上がると約0.0012%伸びる性質があります。ごくわずかな変化に感じるかもしれませんが、夏の高温でレールの温度が50℃を超えると、標準的な25mのレールの場合、1cm近くも伸びてしまうのです。レール同士はつながっているため、伸びた分の逃げ場がないと、レールは波打って折れ曲がり、電車を安全に支えられなくなってしまいます。

道路は黒いアスファルトが熱を吸収しやすいため、気温35℃ほどでも路面の温度は65℃を超えます。アスファルトは60〜70℃を超えると柔らかくなり、膨張して盛り上がります。過去には、10cmも隆起した例があるほどです。さらにアスファルトの下の地盤も、熱で水分が蒸発して収縮・沈下し、陥没を誘発します。

特に危険なのが「酷暑+豪雨」の組み合わせです。暑さで劣化したアスファルトに雨水がしみ込むと、地盤の軟弱化が加速し、陥没リスクがさらに高まります。また、インフラの老朽化もトラブル発生を促進する要因です。日本の道路や橋の多くは高度経済成長期に作られており、50年を超えたいま、酷暑と豪雨が重なって事故の多発が懸念されています。

―電車の運休や道路の通行止めなどが相次ぐと、私たちの生活や経済には、どのような影響があるのでしょうか?

稲積:移動が困難になるということは、“社会の血流”が止まることを意味します。物流が停滞して食料品や日用品などの生活必需品が不足し、価格が高騰する恐れがあるほか、救急や消防といった緊急車両の到着が遅れて人命に関わる事態も考えられます。

鉄道の場合、一度の大型運休で数億円規模の経済損失が発生するとも言われています。特に観光地や地方への打撃は深刻で、ひいては国全体のGDP(国内総生産)にまで影響をおよぼしかねません。

AI点検、保水・遮熱舗装で交通インフラを守る

―気候変動に起因する交通インフラのトラブル発生を防ぐために、自治体や企業ではどのような対策に取り組んでいるのでしょうか。

稲積:鉄道においては、JR東日本が2026年に発表したばかりのモニタリングシステム「HARIBOUハリボウ」※1が画期的です。これは、車両が走行しながら取得したレールのデータをAIで自動分析し、ゆがみの予兆を検知するシステムです。

道路では、アスファルトに保水機能を持つ塗装を施したり、赤外線を反射する遮熱性舗装を施したりする対策が進んでいます。保水性舗装は打ち水のような効果があり、路面温度が約10~14℃低くなります。遮熱性舗装も路面温度を約10℃下げることがわかっています。植栽で地盤を安定化させる「グリーンインフラ」を取り入れる自治体も増えてきました。

―気候変動による交通インフラの危機を少しでも減らすために、私たちが日ごろからできることはありますか?

稲積:まずは、「気候変動は、自身の足元にある地盤を直接脅かすものだ」と認識することから始めましょう。そのうえで、庭や屋上などで雨水を貯留したり、緑化をしたりして気候変動がこれ以上、加速しない環境づくりに貢献することです。また、自治体へ道路の保水性塗装の導入などを要望するのも1つの手でしょう。

地盤工学の専門家としてお伝えしたいのは、土は熱や水の変化に非常に敏感な「生き物のようなもの」だということ。その“声”に耳を傾け、気候変動の事実を正しく理解することが重要です。

稲積真哉

芝浦工業大学工学部・土木工学課程教授。京都大学大学院修士課程修了、京都大学大学院博士課程修了。京都大学大学院助教授、明石工業高等専門学校准教授を経て2017年4月から現職。土木学会、地盤工学会、日本材料学会に所属する傍ら、日本杭抜き協会(代表理事)、DCS工法研究会(技術顧問)など、多くの外部組織の役職を兼務している。

※1:東日本旅客鉄道株式会社“線路メンテナンス用分析プラットフォーム「Viz-Rail」の新機能の実装~モニタリングデータによりレール張り出し現象の予兆を把握~” . JR東日本. 2026年4月8日. https://www.jreast.co.jp/press/2026/20260408_ho03.pdf , (2026年6月2日閲覧) .

DSR-5521

構成・執筆:佐藤葉月  編集:宇野宙(CINRA, Inc) 

ご回答ありがとうございます

この記事は気候変動について
考える“きっかけ”になりましたか?

気候変動について考えるあなたへ

チューリッヒ保険会社のスーパー自動車保険は「カーボンニュートラル自動車保険」です。契約者数に応じて森林保全活動を行う団体へ寄付を行うほか、あなたのお車が排出するCO2をご自身で任意にオフセット(相殺)することもできます。
自動車保険をご検討の際には、“気候変動対策になる自動車保険”という選択肢も。

カーボンニュートラル自動車保険
詳しくはこちら