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将来、身近な場所でスズメが見られなくなる? 専門家が語る、鳥と昆虫の減少と変わりゆく生態系

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かつては当たり前だった身近な鳥や昆虫たちの姿が、近年姿を消しつつあります。

調査によると、かつてはどこにでもいたスズメやオオムラサキがわずか数年で激減し、近い将来、私たちの日常風景から姿を消してしまうことも予測されているのです。

その背景を探ると、「餌」をめぐる繁殖時期とのミスマッチや、生態系に起きている変化が見えてきます。

今回は、長年にわたり鳥類調査に携わってきた認定NPO法人バードリサーチの植村慎吾さんに、変わりゆく鳥と昆虫の現状と、これからの私たちにできることについてお話をうかがいました。

INDEX

5年で32%減。気候変動で鳥が消える?

─近年、スズメやヒバリが「絶滅危惧種」レベルで減っているというのは本当ですか?

植村:はい、残念ながら事実です。全国の里地・里山で行われている「モニタリングサイト1000 里地調査」などの調査データを分析すると、スズメやヒバリといった農地・開けた土地に生息する鳥たちは、2015年から2020年のわずか5年間で約32%も減少しました※1。年間にすると約7%ずつ失われている計算です。ただし、これは里地調査のみの結果なので、スズメの減少を過大評価してしまっている可能性はあります。

このペースが止まらなければ、現在の減少傾向が続けば、地域によっては極めて見かけにくくなる可能性があります。特に気温が高い地域や南の地域では、こうした減少がより顕著に起きていくだろうと予測されています。

2009年から2020年の生息環境ごとの鳥類の記録個体数の経年変化。中でも農地の鳥の減少率が高いことがわかる

2009年から2020年の生息環境ごとの鳥類の記録個体数の経年変化。中でも農地の鳥の減少率が高いことがわかる

─なぜ、これほどのスピードで減少しているのでしょうか。

植村:要因の一つとして考えられているのが、気候変動による餌の減少です。温暖化によって積雪が少なくなると、春先の雪解け水が減って山が乾燥したり、地中の温度が高くなったりするため、そもそも虫がうまく発生できなくなります。

飛んでいる虫を主食とするツバメやアマツバメも、過去20年の間に大きく数を減らしていますが、こうした鳥たちの減少も、環境変化が原因の一つだと考えられています。

加えて、渡り鳥を例に挙げると、温暖化の影響で雛の餌となる虫の発生時期は年々早まっています。一方、数千km先から渡ってくる鳥たちは、自身の飛来時期をすぐには変えられません。その結果、最も餌を必要とする子育ての時期に、すでに虫がいなくなっているという「繁殖時期とのミスマッチ」が起きているんです。

渡り鳥のキビタキ

渡り鳥のキビタキ

鳥の巣も、昆虫の発生源のひとつ

─もし環境の変化などで鳥や昆虫が減少してしまえば、その影響はさらに大きな生態系の連鎖へと波及していくのでしょうか?

植村:はい。気候変動による環境の変化は、すでに鳥の生息域を変えはじめています。

例えば冬鳥のシロハラは、近年、全国的な数は変わっていませんが、越冬地の分布が変化しています。北日本での積雪時期が遅くなったため、以前ほど南下しないようになったんですね※2

ただ、元の越冬地である西表島では、シロハラはイリオモテヤマネコの冬の主要な餌になります。そのため、シロハラが来なくなることでイリオモテヤマネコの数も減り、島の生態系に影響が出てくることが懸念されています。

冬鳥のシロハラ

冬鳥のシロハラ

─昆虫は鳥の餌になるだけではなく、鳥の巣が昆虫(絶滅危惧種)の生息拠点にもなっているそうですね。バードリサーチが行っている「カワウの巣の昆虫調査※2」について、あらためて教えていただけますでしょうか。

植村:この調査は2025年に着手したばかりのプロジェクトですが、非常に興味深い知見が得られています。

まず大きな前提として、鳥の巣は、多種多様な昆虫にとっての「貴重な栄養源」と「発生源」を兼ね備えたシェルターとして機能していることがわかってきました。巣のなかには鳥の排泄物や餌の残り、羽毛などが蓄積されますが、それらが特定の昆虫たちにとっては絶好の栄養供給源となります。

今回の調査は主に河川周辺をフィールドとしていますが、他のエリアにおいても同様の現象が起きている可能性が高いと考えています。

身近な野鳥観察からはじめる気候変動対策

─鳥たちの減少は、最終的に私たち人間の生活にどう跳ね返ってくるのでしょうか。

植村:生態系は非常に複雑なので、断定的な予測は難しいのが実情です。しかし、鳥は「生態系の指標」です。哺乳類は夜行性が多いため数えにくく、昆虫は種類が多すぎる。一方、鳥は昼間に行動するものが多く、種数が「適度に少ない」ため、観測しやすいという特長があります。

鳥の数が大きく減ることは、目に見えにくい昆虫や植物など、生態系全体に何らかの不具合が起きているサインであり、生態系の機能が落ちれば、巡り巡って人間の生活にも必ず影響が出てきます。

─こうした変化に対し、私たちが今日から始められるアクションはありますか?

植村:まずは、身近な生き物の名前を調べてみることから始めてみてほしいです。カラスやハトにも種類があり、スズメもじつは2種類います。今日見かけた鳥が何という名前で、どう生きているのかを知る。その「解像度を上げる」ことが、生態系の変化や気候変動に気づく第一歩になります。皆さんが関心を持ち、観察してくれることが、数十年後の未来を変える大きな力になるはずです。

特定非営利活動法人バードリサーチ 研究員

植村慎吾

認定特定非営利活動法人バードリサーチ研究員。九州大学理学部、大阪市立大学大学院、北海道大学大学院を経て、2020年度より現職に就く。大学院時代は南西諸島を中心にアカショウビンの研究に従事。現在は、日本全国の鳥類の分布や生態を把握するための「全国鳥類繁殖分布調査」や「モニタリングサイト1000」の大規模調査プロジェクトに従事している。

※1:環境省生物多様性センター. “里地生態系”.モニタリングサイト1000.(2026年5月8日閲覧)
※2:環境省自然環境局生物多様性センター. “モニタリングサイト1000 陸生鳥類調査情報 2024年9月号 Vol.16 No.1” . モニタリングサイト1000. 2024年9月30日. https://www.biodic.go.jp/moni1000/findings/newsflash/pdf/terrestrial_bird_NL_Vol.16_No.1.pdf , (2026年6月1日).
※3:バードリサーチ.“カワウの巣の昆虫調査”.バードリサーチ.(2026年5月8日閲覧)

DSR-4994

取材・執筆:入江百音  編集:玉野井崚太(CINRA, Inc) 

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