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渋滞で追い越し車線に移るのは逆効果? 快適なドライブとCO2削減を両立する運転術

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渋滞はドライバーや同乗者にとってのストレスになるだけでなく、ガソリンの浪費や燃費の悪化、さらにはCO2排出量を増加させ、地球温暖化を促進させる一因にもなります。

この記事では、東京大学大学院で「渋滞学」を提唱する西成活裕先生を招き、「ブレーキの連鎖」が渋滞を発生させる原理から、渋滞を緩和できる意外な方法、快適なドライブと環境負荷の低減を両立できるアクションまで、教えていただきました。

INDEX

渋滞の原因は約6割が「ブレーキの連鎖」

──ゴールデンウィークなどの長期休暇には、毎年のように高速道路で数十kmに及ぶ渋滞が発生します※1。そもそも、なぜ高速道路では渋滞が発生するのでしょうか。

西成:渋滞の原理は、シンプルにいえば「道路の容量が低下する部分が原因となり、ものの流れが詰まっている」状態です。高速道路においてその引き金となるのが「ブレーキの連鎖」。

一台がブレーキを踏むと、後続車のドライバーも追突を避けようとブレーキを踏む。この反応が後方へと伝わっていく過程で、速度の低下が少しずつ増幅され、十数台後ろではついに車が止まってしまう。これが渋滞の正体です。

──一人のブレーキが、後ろで大きな「だま」を作ってしまうのですね。

西成:そのとおりです。その「だま」が道路の容量を低下させる原因になります。高速道路における自然渋滞の原因のじつに約6割を占めるのが、下り坂や平地から上り坂に差しかかる場所での減速です(残りの4割はトンネルの入口部、インターチェンジの交流部、事故や工事など)。

傾斜がなだらかだと多くのドライバーは上り坂であることに気づかず、平地と同じ感覚でアクセルを踏み続けてしまいます。結果、無意識のうちにスピードが落ち、追いついた後続車がブレーキを踏まざるを得なくなるんです。

渋滞でCO2排出量は40%も増加する

──渋滞がCO2排出量を増加させるというのは本当でしょうか。

西成:自動車は、停止と発進、そして加減速を繰り返すときにより多くの燃料を消費してCO2を排出します。渋滞ではこれが頻繁に起きており、それによるCO2排出量は日本の年間総排出量の1.3%に相当します※2

国土交通省の資料によれば、走行速度が時速20kmから60kmに向上すると、CO2排出量は1kmあたり約40%も低減するといわれています※3。つまり、渋滞を緩和させてスムーズな走行を維持することは、温暖化対策にもなるわけです。

アリの行列を参考に渋滞緩和策を考案!

──ガソリン代の節約や燃費の向上という観点からも、渋滞を緩和させるために、一人ひとりにできることはありますか?

西成:私が「渋滞学」を構築するうえでヒントにしたのは、アリの行列でした。アリは混んできても無理に距離を詰めず、車間距離ならぬ一定の「アリ間距離」を保つことで全体の歩行ペースを維持し、渋滞を回避していることがわかったのです。

これを車に応用したのが「渋滞吸収走行」です。高速道路で車間距離を40m以上確保し、一定の速度で走り続けることで、前方のブレーキ連鎖を自分のところで吸収し、後続車に伝えないようにするというものです。

実際に警察庁と一緒に高速道路で実験したところ、連続するわずか8台の車がこの走行を実践するだけで、後ろに続く百台規模の渋滞が見事に緩和されました。十分な車間距離があれば、ブレーキのバトンを後ろに渡さずに済むわけです。

追い越し車線の利用は渋滞脱出に逆効果?

──ほかにも、渋滞を緩和するためにできるアクションはありますか?

西成:早く渋滞を抜けたいという心理から、多くの人が右側の「追い越し車線」に集まりがちですが、私の研究データでは渋滞時の車線利用率は、3車線ある場合、左から25%、35%、40%。つまり走行車線より追い越し車線のほうが遅いんです。

頻繁な車線変更は、後続車にブレーキを踏ませることにもつながり、新たな渋滞の火種になる。いま走行している車線をキープし、クルーズコントロール(速度維持)機能などを活用して一定の速度を保つほうが、結果的に早く進み、燃費もよくなります。

──行楽シーズンはあらかじめ渋滞を回避するような旅行プランを立てるのもよさそうですね。

西成:休暇を分散取得したり、渋滞情報を確認して出発時間をずらしたりするのはもちろん、あえて少し遠回りのルートを選ぶほうが、案外空いていてスムーズに到着できることもあります。高速道路から離れた国道や県道を使う場所へ行くとか、道中の風景や道の駅、ご当地グルメなどを楽しむような旅程にするのもいいですね。

ただし、高速道路が混んでいるからと一般道へ降りるのはおすすめしません。高速道路の渋滞時は並走する一般道も9割の確率で混んでおり、結果的に到着が遅くなるばかりか、信号での停止が増えるためさらにCO2排出を増やすことになります。

「全体最適」の考えが渋滞も温暖化も緩和する

──大気汚染対策としてエコドライブ普及連絡会が提唱している「エコドライブ10のすすめ」※4のように、日頃から取り組める運転時のエコアクションはありますか。

西成:ぜひ実践してほしいのが、高速道路の合流地点などで交互に一台ずつ合流する「ファスナー合流」。不要な停止や加減速が減って燃費改善につながります。ドイツでは交互に合流しないと罰金という法律もあるくらいなんです。

──最後に、「渋滞学」の視点から見た気候変動対策のポイントを教えてください。

西成:渋滞は「とにかく自分が早く行きたい」という短期的な意思決定の積み重ねで起きます。これは「自分が快適ならCO2を排出しても構わない」という“個別最適”の結果、温暖化を促進している構造とまったく同じ。

渋滞学の研究では「皆が譲り合ったほうが、全体の通過時間は早くなる」という結論が出ています。「急がば回れ」「損して得取れ」というゆとりを持つことが、自分も含めた全員の利益になる。こうした“全体最適”の考え方こそ、渋滞をなくし、ひいては地球の気候変動を食い止める大きな力になるはずです。

西成活裕

1967年東京都生まれ。東京大学大学院工学系研究科博士課程修了、博士(工学)の学位を取得。その後、ドイツのケルン大学理論物理学研究所、東京大学先端科学技術研究センター教授などを経て、現在は東京大学大学院工学系研究科教授。専門は数理物理学。さまざまな渋滞を分野横断的に研究する「渋滞学」を提唱し、著書『渋滞学』(新潮選書)は講談社科学出版賞などを受賞。テレビ、ラジオ、新聞など数多くのメディアで活躍している。

※1:NEXCO東日本.“ゴールデンウィーク期間における高速道路の交通状況(速報)【NEXCO東日本版】”.NEXCO東日本企業情報サイト.令和7年5月8日,(2026年3月23日閲覧).
※2:
国土交通省.“4.協働による重点プロジェクト④(国+地方自治体+民間企業)”.道路分野の脱炭素化政策集(Ver.2.0).2025年10月,(2026年3月23日閲覧).
※3:
国土交通省.“2.交通流の円滑化による二酸化炭素排出削減に向けた課題”.「平成19年度国土交通白書」第Ⅰ部>第2章くらしにおける地球温暖化の緩和に向けた課題.2008年5月9日,(2026年3月23日閲覧). 
※4:
エコドライブ普及連絡会.“エコドライブ10のすすめ”.環境省.平成24年10月,(2026年3月23日閲覧). 

DSR-3906

構成・執筆:原里実  編集:福田裕介(CINRA, Inc) 

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