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猛暑はお米にとっても死活問題? レジェンド農家が語る、おいしいご飯と地球の守り方

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“お米界のレジェンド”と称され、米のおいしさを競う「米・食味分析鑑定コンクール」で何度も金賞に輝いてきた山形県高畠町の米農家・遠藤五一さん。50年近く田んぼと向き合い、おいしい米を追求してきた彼が今、強く実感しているのが気候変動の脅威です。近年の猛暑や水害の増加は、米作りに深刻な影響を与えているといいます。

一方で、豊かな土壌を育む有機栽培や、月の満ち欠けを利用した栽培サイクルなど、古くからの伝統的な農業の知恵は、自然と共生するための持続可能なアクションそのものだと遠藤さんは語ります。安全でおいしい米づくりから見えてくる、私たちにできるサステナブル・アクションとは何か? お話を伺いました。

INDEX

「一等米と名乗れない」猛暑が農家の死活問題になる理由

──米の特別栽培※1や有機栽培※2に取り組む遠藤さん。日々、田んぼや米と向き合う中で、気候の変化を感じるようになったのはいつ頃ですか?

遠藤:気候変動をはっきりと感じるようになったのはここ15年ほどでしょうか。特に身近に感じるのは、夏の猛暑と日射量の増加です。

昔と比べて直射日光が強くなったのを感じますし、農作業をする年配の方で白内障になる人が非常に増えている体感があります。私も目を守るために、日中は紫外線をシャットアウトするサングラスをかけて作業するようになりました。

──近年の猛暑は、お米の生育にも影響を与えているのでしょうか。

遠藤:特に「夜温」(夜間の気温)が下がらないことは致命的ですね。開花期である8月上旬から中旬頃に極端な高温が続くと、稲が交配できず、籾(もみ)に米粒が実りませんから、そういう年は収穫量が大幅に減少します。

稲の花。開花期に夜温が下がらないと稲が交配できず、米が実らなくなってしまう(写真はイメージです)

稲の花。開花期に夜温が下がらないと稲が交配できず、米が実らなくなってしまう(写真はイメージです)

また、田んぼの水管理は温度を下げるほうが難しく、水温が高いとデンプン不足で白く濁った「シラタ(白未熟粒)」が増えてしまいます。シラタの比率が上がると「一等米※3」を名乗れなくなりますから、米農家にとっては死活問題なんですね。

温暖化によって猛暑が常態化する今、従来の代表品種の多くが不作や品質低下に悩んでいます。たとえば、コシヒカリが誕生した約70年前は、最高気温が30℃以上の日を指す「真夏日」という言葉すらまだなかったので、高温耐性がなくて当たり前なんですよ。

──気候変動による環境変化が「米どころ」にも押し寄せているんですね。

遠藤:はい。気象の極端化は猛暑だけでなく、降水量にも表れています。2023年に発生した新潟県での水不足のニュースは、「信濃川に恵まれた新潟で渇水が起こるなんて……」と衝撃を受けました。

その一方で、ゲリラ豪雨による水害も多発しています。2020年や2024年には大雨で山形県の最上川が氾濫しましたが、そんなこと一昔前には考えられなかったことですよ。

安全でおいしい米作りは、人にも土にも地球にも優しい

──気候変動に直面する中で、米農家としての遠藤さんの意識に変化はありましたか?

遠藤:安全でおいしいお米を届けるための工夫は、地球に優しい営みでもあると感じています。私がこだわってきた持続可能な農業は、農薬や殺虫剤、化学肥料をなるべく使わず、魚粉などの有機質肥料を使用することで、微生物が生きている豊かな土壌づくりが基本です。

自然環境を尊重し、環境への影響を最小限に抑えるため、農薬や殺虫剤をなるべく使わない農法が取られている(写真はイメージです)

自然環境を尊重し、環境への影響を最小限に抑えるため、農薬や殺虫剤をなるべく使わない農法が取られている(写真はイメージです)

また、収穫した玄米は、冬の間に積もった天然の雪の力で冷やす「雪室」を活用して保管しています。電気を使わずに農作物の劣化を防げるので、最高にサステナブルだと思いますよ。

それに、迷信と思われるかもしれませんが、栽培のサイクルは今も「月の満ち欠け」をもとにしています。新月のときは土壌の水分が豊富になるので、種を蒔くと発芽率や活着率が高くなるんです。世界各地で古くから伝えられてきた経験則ですね。

──自然に逆らわず、受け入れて活用するということでしょうか。

遠藤:自然との共生とは「自然を壊さない」という約束が前提であり、次の世代へとバトンタッチしていくためには伝統的な文化の継承が必要だと思います。私は、人と土との繋がりが持続可能な未来を築くと信じています。

──健康も資源も消耗させないサイクルの実践は、まさに持続可能な農業の姿ですね。

遠藤:はい。次世代のためにも、現代の夏に適応した高温耐性のある新品種の導入には力を入れています。遠藤農園では作り始めて今年4年目となる「ゆうだい21」はすでに高い評価を得ていますし、2027年デビュー予定の「ゆきまんてん」にも注目が集まっているんですよ。こうした品種は猛暑の中でも高い一等米比率を保てるように開発されていて、気候変動への有効な適応策となるはずです。

“有機栽培のお米を選ぶ”こともサステナブル・アクションの1つ

──地球環境を守るために、私たち消費者ができる身近なアクションには何が挙げられるでしょうか?

遠藤:消費者として「有機栽培されたお米」を選ぶことは、生産者の健康を守ることであり、環境保護の当事者になることでもあります。

よく「有機栽培の農作物は高い」と言われますが、例えば1俵(60kg)6万円の高級なお米でも、お茶碗1杯分(約50g)に換算するとわずか50円です。コンビニに並ぶ菓子パンやミネラルウォーターと比べてみると、高価すぎるとは感じないのではないでしょうか。

環境に配慮したお米を選ぶことは、社会貢献の中でもとても合理的なアクションだと思います。

遠藤さんのお米は何よりも「おいしい」と評判。「米・食味分析鑑定コンクール」ではダイヤモンド褒賞を獲得している(写真はイメージです)

遠藤さんのお米は何よりも「おいしい」と評判。「米・食味分析鑑定コンクール」ではダイヤモンド褒賞を獲得している(写真はイメージです)

──最後に、この記事を読んでいる読者の方へメッセージをお願いします。

遠藤:「医食同源」という言葉があるように、健康的な食品を選ぶことは、自分の身を守る第一歩です。有機農業で栽培されたお米は、あなたの体にも、社会にも、地球にも優しく、何よりおいしい。新品種の「ゆうだい21」も自信作ですから、ぜひ食べてみてくださいね。

※1:農林水産省のガイドラインに基づき、農薬と化学肥料の双方をその地域の通常の基準(慣行レベル)から5割以下に減らした栽培方法のこと

※2:化学肥料や農薬を使用せず、遺伝子組換え技術を利用しないことを基本に、環境への負荷をできる限り低減した栽培方法のこと。国が定めた基準をクリアしたものだけが「有機JASマーク」を付けて販売できる

※3:国が定める農産物検査法に基づいた検査で、形や見た目の美しさなどの最も厳しい基準をクリアした最高等級のお米のこと

遠藤五一

山形県高畠町で江戸時代から続く米農家の12代目。1986年から有機農業に取り組み、自然と共生する持続可能な米づくりを実践。お米のおいしさを競う「米・食味分析鑑定コンクール」で連続金賞を獲得し、2007年には全国でも数少ない最高栄誉「ダイヤモンド褒賞」を受賞。その卓越した栽培技術から“お米界のレジェンド”と呼ばれ、メディア出演や全国各地での技術指導でも広く活躍している。

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構成・執筆:小西麗  編集:福田裕介(CINRA, Inc) 

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