“読む気候変動対策”メディア、
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- チューリッヒ保険会社は企業としての排出CO2削減などはもちろん行った上で、気候変動という全人的な問題へ対応するには一人ひとりの理解と参加も重要であると考え、多くの人が気候変動についてよりよく知り参加できる“きっかけ”作りを始めました。
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琵琶湖の湖岸に生息する多年草本のヨシ。茅葺き屋根の資材など、かつて生活必需品として取り入れられ、地域に産業をもたらし、人々の営みに密接に関係してきた。また、水質を浄化する働きがあり、二酸化炭素の吸収率もよく、地球温暖化防止に貢献するものでもある。近年、人々の生活様式が変わったことでヨシの産業としての利用は衰退の一途を辿るが、人が適度に手を入れることで産業のみならず、自然環境を守ることに繋がるという。自然との共生を取り戻す活動を追った。
[連載概要]
気候変動は、私たちの暮らしや自然環境に深く影響を与える課題です。
チューリッヒ保険会社は、気候変動に対し、より多くの人々とともに考え、行動するきっかけをつくりたいと考えています。
本連載は、その想いをもとに、YouTubeチャンネル『チューリッヒ保険会社のGreen
Music』で公開される作品の背景にある自然環境やその土地の取組みを掘り下げ、持続可能な未来につながる手がかりになればと考え生まれました。作品では伝えきれないストーリーをお届けしていきます。
滋賀県にある日本最大の面積と貯水量を誇る琵琶湖。およそ400万年もの長い歴史をもつ国内最古の湖の景観は人々の暮らしとともに育まれてきた。その湖岸にヨシが群生する景色は、この地域を代表する原風景としても知られる。イネ科ヨシ属の多年生草本であるヨシは、日本各地の湖沼、河川などの水辺に生えており、根と茎の一部は水中で、茎と葉の大部分は水面上にあるという抽水植物。かつては茅葺き屋根に使われる材として、あるいは葦簀(よしず)と呼ばれる日よけとして、生活に欠かせない重要な資源として重宝されてきた。ところが、「現代の生活環境の変化とともに、ヨシ関連の産業が衰退し、周辺の生態系にも影響が出始めているんです」と話すのは、特定非営利活動法人まるよし理事長の宮尾陽介さん。琵琶湖と繋がる最大の内湖である西の湖、そのほとりにある円山町でヨシの活用によるヨシ原の保全に取り組んでいる。
「この地域では昔から特に茅葺き屋根のためにヨシを多く使用してきました。生活必需品でもあったことから産業としても成り立ってきたのですが、1950年に公布された建築基準法により家屋の規制が厳しくなり、茅葺き屋根の利用がぐっと減少しました。ヨシの管理に欠かせないヨシ刈りは、だいたい専業農家が冬の農閑期にやる作業でしたが、今は専業農家自体が少ないのでこれまでのような労働力を確保できないのが現状です」
現在、ヨシを卸売りしているのは高齢者のみで、次世代への継承が難しい。産業の衰退により、ヨシを管理する人材が不足する。すると、ヨシ原は荒れ、琵琶湖の自然環境にも影響が出てしまうという。
西の湖周辺には美しいヨシ原が約100haあるという。2月はヨシ刈りの季節。この時期にきちんと刈取りをすることで良質なヨシが収穫できる。
円山町で生まれ育ったという特定非営利活動法人まるよし理事長の宮尾陽介さん。市役所に勤めながら精力的に保全活動に取り組む。
豊かな生態系を育む、ヨシの適切な管理とは?
では、ヨシの適切な管理とはどのような作業なのだろうか。ヨシの新芽が出るのは3~4月。夏に向けて急成長し、2~5mまで成長する。10~11月に稲穂のような実をつけ、翌年の1月頃に葉が落ちていく。次の春までの間にヨシ刈りをして、ヨシの丸だて(ヨシを刈り取って乾燥させるために束ねて立て掛けること)、火入れ(新芽の肥料とする、雑草の種を焼く、害虫駆除などのため)を行うというのが一年のサイクルとなる。
「4月頃には新たに芽が出てきますが、前の年のヨシが収穫されずに残っていると、新しい芽の成長を阻害してしまいます。春までには刈取りを終え、刈り跡を焼くことで、次の冬には良質なヨシが収穫でき、いろいろな製品に活用できるのです」
取材に訪れたのは2月。ちょうどヨシ刈りの季節だったので見せてもらった。この日は地元の高校生たちがボランティアで参加していた。ヨシは間近で見るとかなり大きい。このエリアのヨシの高さは大体3mくらい、ぐんと聳え立つ印象だ。ヨシを前に宮尾さんが刈り方をレクチャーする。一見難しそうだが、コツさえ掴めば案外手際良くできるそうだ。
「直径約18㎝で束ねたものを1束として、1束作るのに約10分。1日8時間働いて48束ほどできる。丸だて1つぐらいになります。慣れればそこまで重労働ではなく、何よりヨシ刈りしていると清々しい気分になりますね」
この地域では、古くから季節ごとに人の手が適切に入っていたからこそ、美しい風景と産業が守られてきた。また、そのことが多様な生態系を育むことに繋がる。魚や鳥の棲み家となり、豊かな自然環境も育まれていった。
「水面より下から生えてきて空中に伸びていくというのが、ヨシの基本的な生え方。水中の茎が密集している状態であれば小さな魚だけが入り込むことができる。必ずしも外来魚が大きいというわけではないですが、例えばホンモロコみたいな小さめの在来魚たちが外来魚に食べられることもなく、産卵しやすい環境になっています。それから、オオヨシキリなどの鳥たちの休憩場所や寝床にもなっていて、ヨシがあるからこその生態系が保たれているのです」
ヨシ刈りは地域住民や企業主催のボランティアで行われる。この日は、以前、宮尾さんが課外授業でレクチャーした地元の高校生が参加。
同じ量になるよう1束ずつまとめるのもポイント。刈り取った部分は抜け殻のようなものでヨシの生態にとっても影響はない。
しっかりと乾燥させるため、ヨシの丸だてを作る。3束を基点にすると思いのほか簡単に立てることができる。
自然環境の保全に貢献するヨシ、新たな産業創出へ
元々は産業や景観維持のために保全が推進されてきたヨシだが、ヨシ自体には二酸化炭素を吸収する能力が高く、地球温暖化の防止に貢献する存在でもあるという。また、栄養塩(リンや窒素)を吸収するので、水質を浄化する役割も果たす。
「もっというと、ヨシが生えているだけではダメで、“刈り取る”ことによって、自然環境が良くなるというのが正しい表現ですね。二酸化炭素を吸収したヨシを刈り取らなければ立ち枯れた後、腐ってしまい、ヘドロ化した場合、二酸化炭素の約28倍もの温室効果のあるメタンガスが発生し、再び大気中に排出されてしまう。また立ち枯れしたヨシが腐ると吸収した栄養塩も放出されてしまう。だからこそ、人の手が必要なのです」
これからさらに保全を進めていく上で、宮尾さんが一番課題だと考えているのがヨシの使い道だ。「刈っても売れない」「廃棄するしかない」ということが人の作業を遠ざけている要因でもある。そのためには、何より“出口”を作らなければならない。茅葺きや葦簀の需要は圧倒的に減ってしまったが、現在はヨシ紙やよし笛の他、構造材や内装材として使えるようなヨシのボード製作が進んでおり、使い道の幅が広がりつつある。
「伝統を守りながら、産業として現代に活かす。新たな産業の創出ができれば、ヨシの重要性、ヨシ原を守ることの意義を知ってもらえます。ひいては、この地域の原風景を守り、自然環境を守ることに繋がっていく。それが自然と人間が共生してきた地域の持続可能なあり方ではないかと思っています」
ヨシ刈り作業は清々しいと宮尾さん。「懸念は、昔は12月初旬には刈取りを開始していたのが、今は暖かいので葉が落ちず1月にずれていること。温暖化の影響もあるのだと思います」
熱田千鶴
編集者。講談社『FRaU』SDGs号editor in
chief、マガジンハウス『&Premium』コントリビューティングエディター。旅やライフスタイル系メディアを中心に、雑誌、書籍、web
などの企画、編集、執筆に携わる。主な書籍に『LIFECYCLING』(PIE
International)、『柚木沙弥郎92年分の色とかたち』(グラフィック社)、共著に『柚木沙弥郎のことば』(グラフィック社)。
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Photo:Masanori Kaneshita Text:Chizuru Atsuta
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