公開日:2025年7月9日
「火災保険の給付金」といった言葉を聞いたことがある方がいるかもしれませんが、火災保険において給付金は存在しません。火災保険では「保険金」が支払われます。保険金は、火災保険の補償対象となる災害やトラブルが発生した際に、損害の補償を目的として保険会社から支払われるものです。
火災保険の保険金が支払われるケースや手続きの方法などをご説明します。気をつけたい詐欺などの事象についても触れていますので、トラブルになる前に確認しておきましょう。
一般的に「火災保険の給付金」といわれているものは存在しません。火災保険では、補償対象となる災害やトラブルが発生した際に、損害の補償を目的とした「保険金」が支払われます。
火災保険の保険金と似ているものに「見舞金」があります。これは損害に対する保険金とは別で支払われる「費用保険金」の一部に該当します。
費用保険金の内容は保険会社によって異なります。たとえば、チューリッヒのネット火災保険の場合、火災で燃えた建物や家財などのがれき撤去費用、近隣への失火見舞費用などが費用保険金に含まれます。
一般的に「火災保険の給付金」といわれているものは、実際には「保険金」のことを指します。しかし、「保険金」と「給付金」は厳密には異なるもので、以下のような違いがあります。
| 保険金 |
|
|---|---|
| 給付金 |
|
火災保険における保険金は、損害を補償する目的で支払われるものであり、保険事故の発生が前提です。一方で、給付金は保険契約で定められた支払事由に該当した場合に支払われるものであり、「損害を補償する」といった概念はありません。
「給付金」という言葉は生命保険や医療保険の分野で使われることが多く、火災保険では通常「保険金」と表現されます。当記事では、火災保険の保険金を「保険金(給付金)」と表記していますが、正確には「保険金」と認識しておくとよいでしょう。
加入している火災保険の補償範囲に含まれる災害やトラブルによる損害は、保険金支払いの対象となります。チューリッヒのネット火災保険で補償される災害やトラブルは以下のとおりです。
| 補償内容 | 建物の補償例 |
|---|---|
| 火災、落雷、破裂・爆発 |
|
| 風災、雹(ひょう)災、雪災 |
|
| 水災 |
|
| 水濡れ、外部からの物体の衝突など |
|
| 盗難 |
|
これらの他、火災で燃えた建物や家財などのがれき撤去費用、近隣への失火見舞費用など、修繕以外にかかる費用も補償されます。
続いて、損害保険料率算出機構の「火災保険・地震保険の概況(2023年版)」をもとに、実際に保険金が支払われた件数と金額を見ていきましょう。
| 事故種別 | 件数(件) | 保険金(百万円) |
|---|---|---|
| 火災、破裂・爆発 | 7,963 | 38,134 |
| 落雷 | 43,515 | 14,478 |
| 風災・雹(ひょう)災 | 218,640 | 108,617 |
| 雪災 | 97,180 | 59,206 |
| 水災 | 4,797 | 20,510 |
| 水濡れ | 57,066 | 38,850 |
※ 火災保険・地震保険の概況(2023年度版)第6表 火災保険 住宅物件事故種別支払統計表 2022年度のデータを参考
※2025年2月執筆時点
火災保険の補償対象は火災による損害だけではなく、風災・水災・雪災などの自然災害も含まれます。なお、築年数が経過した住宅ほど、建物の老朽化により被害を受けるリスクが高くなります。
火災保険に加入していても、すべての損害が補償されるわけではありません。契約内容や損害の原因によっては、保険金を受け取れないケースがあります。
火災保険には補償範囲があり、特定の損害は対象外となることがあります。たとえば、火災保険では地震による建物や家財の損害は補償されません。地震による損害には、地震保険で備えられます。
すでに火災保険に加入している方は、補償範囲をあらためて確認しておきましょう。
火災や災害が原因ではなく、建物や家財の経年劣化による損害は保険金支払の対象外です。たとえば、以下のような損害は、修繕費を自己負担する必要があります。
対象外となるケース
意図的な行為や不正請求は、保険金支払の対象外となります。たとえば、保険金を受け取ることを目的に、故意に損害を生じさせた・させようとしたときなどです。その他にも、保険金の請求について詐欺を行った、または行おうとしたときも対象外です。
対象外となるケース
火災保険の保険金額は、損害の程度や建物・家財の評価額などによって異なります。
火災保険の免責金額とは、損害が発生した際に自己負担する金額のことです。免責金額を設定すると、損害額から免責金額を差し引いた金額が保険金として支払われます。
免責金額は保険会社や契約内容によって異なりますが、設定しない場合は「0円(免責なし)」となり、設定する場合は5万円などの単位で選択できます。たとえば、損害額が100万円で免責金額が10万円の場合、保険金として支払われるのは90万円です。
※チューリッヒの場合は、免責金額なしのみです。
火災や災害で被害を受けた場合、火災保険の保険金を申請してもデメリットはありません。保険金を受け取ったことによって保険料が上がったり、将来の被害時に保険金が受け取れなくなったりすることもないため、被害にあった際はすみやかに保険会社へ連絡しましょう。
ただし、経年劣化などの理由による損害は補償対象外となる場合があるため、申請しても保険金が支払われない可能性があります。事前に補償範囲を確認したうえで、保険金を請求することが大切です。
受け取った保険金は、建物の修繕以外の目的で使用しても法律的な問題はありません。
ただし、保険金を受け取ったにもかかわらず修繕をせず放置すると、さらに損害が拡大するリスクがあります。修繕を行わないことで再度損害が生じても、同じ箇所について保険金を請求することはできません。このようなリスクを考慮すると、受け取った保険金は修繕に使うのが賢明といえるでしょう。
また、多くの保険会社では、建物を対象とした保険金の請求において、保険対象の建物を復旧しないと保険金が支払われない制度を導入しています。たとえば、チューリッヒのネット火災保険では2024年10月1日以降の契約から自動付帯されている「建物の復旧に関する特約」がこれに該当します。
この特約では、建物の損害が生じた日の翌日から起算して3年以内に「事故発生直前の状態(※)」に復旧した場合に限り、保険金が支払われます。ただし例外として、やむを得ない事情がある場合や、復旧を確約したうえで保険会社の承認を得られた場合は、復旧前に保険金が支払われます。また、全損の場合や、法令による規制などで復旧できない場合には、復旧の事実または復旧の確約なしでも保険金が支払われます。
※ 構造、質、用途、規模、型、能力などにおいて事故の発生の直前と同一の状態をいい、同等以上の状態を含みます。
火災や自然災害による損害を受けた場合、火災保険の保険金申請は契約者自身で行う必要があります。まずは、すみやかに加入している保険会社に連絡しましょう。多くの保険会社では、ウェブサイトに事故受付窓口があり、24時間対応しています。
火災保険の申請を代行する業者も存在しますが、保険金から業者が手数料を差し引いて、契約者が受け取れる金額が減ったり、悪質な業者の詐欺行為に加担させられたりといったトラブルが多く報告されているため注意が必要です。国民生活センターでも、不正な請求を勧める業者に関する注意喚起が行われています。
保険金の申請に必要な修理見積書の作成は工務店が無料で行っている業務であり、高額な手数料を請求されることは通常ありません。トラブルを避けるためには、普段から付き合いのある信頼できる工務店に依頼することが大切です。
火災保険の保険金の申請は以下の手順で行います。
災害が発生したら、まず加入している保険会社に連絡します。電話やインターネットで必要事項を記入し、保険金請求の手続きを開始しましょう。
保険会社が指定する必要書類を準備し、提出します。
必要書類の例
盗難による損害の場合は、これらに加え、警察署への届出内容がわかる報告書などが必要です。
保険金の請求では、契約者自身が被害状況を記録し、写真などを保険会社に提出する必要があります。ただし、写真だけでは損害の範囲や状況の判断が難しい場合、自宅に損害保険登録鑑定人が訪問し、調査を実施することもあります。
被害状況の確認が完了すると、保険会社の担当者が契約者に保険金について説明します。不明な点があれば、このタイミングで質問しておきましょう。
説明を受けたあと、契約者の指定口座に保険金が振り込まれます。
ここでは、保険金を請求する際のポイントや注意点をご説明します。
災害が発生しても、当日中に保険会社へ連絡しなければならないわけではありません。ただし、災害発生時の状況を正確に申告する必要があるため、時間が経過すると詳細を忘れてしまう可能性があります。
保険金をスムーズに受け取るためにも、早急に保険会社へ連絡しましょう。
保険金を請求できる期間は3年以内です。3年を経過すると時効となり、請求できなくなるため注意しましょう。
保険金の請求において、災害発生時の損害状況を写真におさめておくことは重要です。損害額の計算に必要になるため、スマートフォンなどを使って撮影しておきましょう。可能であれば、さまざまな角度で複数枚の写真を撮っておくと安心です。
昨今、火災保険の保険金にまつわる詐欺などのトラブルが増えています。
よくある詐欺の手口として、「火災保険を使えば自己負担なしで住宅を修理できる」「保険金が出るようサポートする」と勧誘し、保険金の申請代行を持ちかけるケースがあります。具体的には、「住宅の損害を無料で調査する」といわれ、点検を依頼すると、「損害が発生している」「保険金の申請が必要」と勧められ、申請手続きを代行するとして手数料を請求されたあと、最終的には連絡が取れなくなるといったものです。
また、インターネット上に「火災保険で給付金がもらえる」といった広告が表示されることもありますが、詐欺業者の可能性があるため注意が必要です。不審な勧誘を受けた場合は安易に応じず、国民生活センターや加入している保険会社に相談するなど、慎重な対応を心がけましょう。
火災保険の支払いに関する情報を見ると、誤ったものや不確かなものが多く出回っています。トラブルに巻き込まれないためにも、迷ったときは自身だけで判断せず、保険会社や保険代理店に相談するよう心がけてください。
資格:CFP
東証一部上場企業で10年間サラリーマンとして勤めるなか、業務中の交通事故をきっかけに企業の福利厚生に興味を持ち、社会保障の勉強を始める。以降ファイナンシャルプランナーとして活動し、個人・法人のお金に関する相談、北海道のテレビ番組のコメンテーター、年間約100件のセミナー講師なども務める。趣味はフィットネス。健康とお金、豊かなライフスタイルを実践・発信しています。
一般的に「火災保険の給付金」といわれているものは、存在しません。火災保険では、補償対象となる災害やトラブルが発生した際に、損害の補償を目的とした「保険金」が支払われます。
加入している保険会社に連絡し、申請手続きを行うと、保険金が支払われます。申請時には保険会社が指定する書類の用意が必要です。
火災保険の保険金は、損害発生から3年以内に申請する必要があります。3年を経過すると時効により請求権が消滅し、申請できなくなるため注意しましょう。
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