公開日:2026年5月20日
損害保険料控除が今も使える制度なのか気になる方も多いかもしれません。
損害保険に関する所得控除の制度は、過去の税制改正をきっかけに大きく整理されています。現在は、地震保険を中心としたしくみへと移行していますが、契約内容や加入時期によっては、例外的に控除の対象となるケースもあります。
適切な控除を受けるためにも、控除される条件を確認しておきましょう。
2006年の税制改正により、2007年からは従来の損害保険料控除が廃止され、新たに地震保険料控除が創設されました。損害保険料控除が廃止された理由は、地震災害による損失に備える重要性が高まり、地震保険への加入を重点的に促す必要があったためとされています。
損害保険料控除とは、かつて設けられていた保険料控除制度の一つで、税金の対象となる課税所得を計算する際に、支払った保険料を所得から差し引けるしくみです。控除の対象となる保険料を支払った場合、所得税と住民税でそれぞれ一定の所得控除を受けられるため、支払う税金が安くなります。
損害保険料控除では、一定の条件を満たす火災保険や傷害保険などの損害保険料が控除の対象とされていました。
税制改正により損害保険料控除が廃止されて以降、火災保険料は控除対象外となりました。2007年分の所得からは、火災保険に付帯している地震保険料の部分のみが控除の対象です。
ただし、例外的に税制改正前に契約した長期の火災保険(旧長期損害保険)については経過措置があり、一定の条件を満たす場合に限り、地震保険料控除の対象となります。
経過措置に該当する契約の詳細は、「旧長期損害保険(経過措置の対象となる契約)」でご説明しています。
地震保険料控除の対象となるのは、「地震保険」と「経過措置の対象となる長期損害保険契約」の2つです。
地震保険とは、地震や噴火、これらで発生した津波による損害を補償する保険です。火災保険に付帯する形で加入するしくみとなっており、地震保険のみを単独で契約することはできません。
地震保険の保険料を火災保険の保険料と合算して支払った場合は、地震保険料の部分のみが控除の対象になります。
なお、地震保険料控除の対象となるのは、その年に保険料を支払った本人、または生計を一にする配偶者や親族が所有する、居住用の建物や家財を補償する地震保険に限られます。事務所・店舗など居住用ではない部分が含まれている併用住宅の場合、原則として居住用部分の面積の割合分のみが地震保険料控除の対象となります。
一方、会社などの法人名義の契約や併用住宅のうち居住用ではない部分は、地震保険料控除の対象外です。
損害保険料控除が廃止される前に加入した長期損害保険契約にかかる損害保険料は、経過措置として、地震保険料控除の対象となる場合があります。
対象となるのは、以下の条件をすべて満たす契約です。
※出典:国税庁「No.1145 地震保険料控除」をもとに作成
2025年12月執筆時点
これらの条件を満たした旧長期損害保険契約は、満期日まで控除の対象になります。
なお、旧長期損害保険が火災保険の場合で付帯している地震保険のみに関する変更や、保険契約者の改姓などの保険料に影響のない変更は、3.の「損害保険契約の変更」に該当しません。
地震保険料控除の控除額は、支払った保険料の種類(地震保険料・旧長期損害保険料)や金額によって異なります。ここでは、1年間に支払った保険料の種類別に控除額をご説明します。
地震保険料控除の対象となる保険料が、地震保険料のみの場合の控除額は以下のとおりです。なお、年間支払保険料(合計)は、地震保険の部分のみに対するものです。
| 年間支払保険料(合計) | 控除額 | |
|---|---|---|
| 所得税 | 50,000円以下 | 年間支払保険料の全額 |
| 50,000円超 | 一律50,000円 | |
| 住民税 | 50,000円以下 | 年間支払保険料×1/2 |
| 50,000円超 | 一律25,000円 |
※出典(所得税):国税庁「No.1145 地震保険料控除」
※出典(住民税):東京都主税局「個人住民税」
2025年12月執筆時点
たとえば、1年間で支払った地震保険料が3万円の場合、控除額は所得税が3万円、住民税が1万5,000円です。支払保険料が5万円を超える場合は、所得税は一律5万円、住民税は一律2万5,000円が控除額となります。
地震保険料控除の対象となる保険料が、旧長期損害保険料のみの場合の控除額は以下のとおりです。
なお、年間支払保険料(合計)は、旧長期損害保険の部分のみに対するものです。
| 年間支払保険料(合計) | 控除額 | |
|---|---|---|
| 所得税 | 10,000円以下 | 年間支払保険料の全額 |
| 10,000円超〜 20,000円以下 |
年間支払保険料×1/2+5,000円 | |
| 20,000円超〜 | 一律15,000円 | |
| 住民税 | 5,000円以下 | 年間支払保険料の全額 |
| 5,000円超〜 15,000円以下 |
年間支払保険料×1/2+2,500円 | |
| 15,000円超〜 | 一律10,000円 |
※出典(所得税):国税庁「No.1145 地震保険料控除」
※出典(住民税):東京都主税局「個人住民税」
2025年12月執筆時点
たとえば、年間支払保険料が1万5,000円の場合、控除額は所得税が1万2,500円、住民税が1万円です。支払金額が2万円を超える場合は、所得税は一律1万5,000円、住民税は一律1万円が控除額となります。
地震保険と旧長期損害保険の2つの契約が別々にある場合は、それぞれで計算した控除額を合算できます。ただし、所得税は5万円、住民税は2万5,000円が上限です。
また、1つの損害保険契約に地震保険部分と旧長期損害保険部分の両方が含まれている場合は、いずれかを選択して控除を受けることになります。
地震保険料控除を受ける方法は、「年末調整」と「確定申告」の2パターンがあります。
それぞれの方法を詳しく見ていきましょう。
会社員などの給与所得者の場合は、年末調整で地震保険料控除の申請を行います。なお、年末調整ではなく、確定申告で行うことも可能です。
保険会社から送付される「地震保険料控除証明書」をもとに、勤務先で配布される「給与所得者の保険料控除申告書」を記入し、勤務先の担当者に提出する流れです。
「給与所得者の保険料控除申告書」の記入例を見てみましょう。
「地震保険料又は旧長期損害保険料区分」にて、支払った保険料が地震保険の場合は「地震」、旧長期損害保険料の場合は「旧長期」に◯をつけます。旧長期損害保険料と地震保険料の両方を支払っている場合は、2行に分けて記入し、それぞれ該当する区分に◯をつけましょう。
自営業やフリーランスの方、また給与所得者でも自分で年末調整を行わない方は、確定申告にて地震保険料控除を受けられます。
確定申告は、原則として毎年2月16日から3月15日までの期間に行います。期限日が土・日・祝日にあたる場合は翌平日が期限です。
地震保険料控除の対象となる保険を契約している場合、保険会社から「地震保険料控除証明書」が届きます。ただし、地震保険料控除証明について電子データの発行のみとした場合には、ハガキでの郵送はありません。
保険料控除証明書には、控除額を計算するもととなる「年間支払保険料」が記載されています。年末調整や確定申告の際に提出するため、届いたら大切に保管しておきましょう。
チューリッヒのネット火災保険では、地震保険料控除証明書は毎年10月中旬以降に、契約者の自宅住所へ郵送しています。
保険料控除証明書が届かない場合、地震保険料控除の対象外の可能性があります。たとえば、地震保険に加入しておらず、火災保険のみの契約で、経過措置の対象となる旧長期損害保険契約もない場合は、保険料控除証明書は発行されません。
これまで旧長期損害保険の経過措置の対象として届いていた控除証明書が届かなくなった場合は、経過措置の適用期間が終了している可能性があります。今一度契約内容を確認してみましょう。
なお、保険料控除証明書が届いたあとに紛失した場合は、保険会社のウェブサイトなどから再発行の手続きが可能です。
保険期間が10年などの長期契約の火災保険は、契約当時と現在で、生活状況や建物の状態が変わっているケースも少なくありません。補償内容を見直すことで、今の状況に合った補償内容や保険料に調整できる可能性があります。
火災保険の見直しとあわせて地震保険に加入しておけば、地震による損害に備えられるだけでなく、地震保険料控除も受けられます。
また、火災保険料は近年、値上げ傾向が続いているため、契約満了後に新たに加入する場合でも、以前と同じ保険料が適用されるとは限りません。
複数の保険会社でシミュレーションを行い、補償内容と保険料のバランスを比較しながら選ぶとよいでしょう。
損害保険料控除は2007年に廃止されており、現在は地震保険料控除のみが対象となっています。経過措置の対象となる旧長期損害保険契約をお持ちの方は、契約内容の変更により控除対象外となる場合があるため、見直しの際は事前に確認しておきましょう。
資格:CFP
東証一部上場企業で10年間サラリーマンとして勤めるなか、業務中の交通事故をきっかけに企業の福利厚生に興味を持ち、社会保障の勉強を始める。以降ファイナンシャルプランナーとして活動し、個人・法人のお金に関する相談、北海道のテレビ番組のコメンテーター、年間約100件のセミナー講師なども務める。趣味はフィットネス。健康とお金、豊かなライフスタイルを実践・発信しています。
現在の税制では、火災保険料は控除の対象外と定められているためです。2006年の税制改正により2007年からは「損害保険料控除」が廃止され、火災保険料は控除の対象に含まれなくなりました。
控除を受けられるのは、地震保険料控除の対象となる「地震保険」または「経過措置の対象となる長期損害保険契約」に限られます。
地震保険料控除の対象の保険契約については、「地震保険料控除の対象となる損害保険契約」でご説明しています。
地震被害への備えを重点的に支援するためです。従来の損害保険料控除が改正され、地震保険に加入した場合に限定して控除を受けられる「地震保険料控除」が創設されました。
損害保険料控除はすでに廃止されており、現在は地震保険料控除のみが控除の対象です。地震保険料控除では、税金の対象となる課税所得を計算する際に、1年間に支払った地震保険料に応じて一定額が所得から差し引かれるため、最終的に計算される所得税・住民税が少なくなります。つまり、控除額に税率を乗じた分が安くなることになります。
控除額の具体的な計算方法は「地震保険料控除の控除額の計算方法」でご説明しています。
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