公開日:2025年7月9日
地震保険が「いらない」といわれる理由として、支払う保険料に対して、補償の範囲や利用機会が見合っていないと考えられていることが挙げられます。しかし、大きな地震は予測することが難しく、2016年の熊本地震のように発生予測確率が低いと予測された地域にもかかわらず甚大な被害に見舞われたケースもあります。
そこで、地震保険がいらないといわれる理由として地震保険のデメリットを挙げたうえで、保険金や保険料の決まり方、地震保険の付帯率、保険料の抑え方についてご説明します。
地震保険が自分にとって本当に不要かどうか、検討してみましょう。
地震保険とは、地震や噴火、またはこれらによる津波によって被った「建物」や「家財」の損害を補償する保険です。被災後の生活を立て直すことを目的としています。
地震などによる建物や家財の損害は火災保険では補償されないため、これらの損害を補償するには地震保険が必要です。地震保険は火災保険とセットで契約する必要があり、単独での契約はできません。
地震保険は「地震保険に関する法律」に基づいて国と保険会社が共同で運営している公共性の高い保険であり、どの保険会社で加入しても補償内容や保険料に違いはありません。
地震保険が「いらない」といわれる理由には、以下の4点があります。
地震保険は、実際の損害額を支払う保険ではありません。そのため、受け取れる保険金額が、実際にかかった修理費や再購入費の支払金額より低くなる場合があります。
火災保険の保険金額は、火災保険の保険金だけで建て直したり買い替えたりできる再調達価額の評価額をベースに設定することが一般的です。しかし、地震保険の保険金額は火災保険の保険金額の50%までしか設定できません。
たとえば、火災保険の保険金額を、建物3,000万円・家財500万円に設定していた場合、地震保険の保険金額として設定できるのは、建物1,500万円・家財250万円までです。地震によって再調達価額3,000万円相当の建物とその建物内の家財が全壊・全損したとしても、受け取れる金額は最大で1,750万円(1,500万円+250万円)となります。
なお、地震保険で設定できる保険金額は、火災保険で設定した保険金額の30〜50%の範囲内です。ただし、建物は5,000万円・家財は1,000万円が上限となります。
地震保険では、実際の損害額ではなく、以下の4段階の損害の程度に応じて保険金が支払われます。
| 損害の程度 | 支払われる保険金 |
|---|---|
| 全損 |
地震保険の保険金額の100% (時価額が限度) |
| 大半損 |
地震保険の保険金額の60% (時価額の60%が限度) |
| 小半損 |
地震保険の保険金額の30% (時価額の30%が限度) |
| 一部損 |
地震保険の保険金額の5% (時価額の5%が限度) |
※財務省「地震保険制度の概要」内「保険金の支払」をもとに作成
仮に全損の認定を受けて地震保険金額の100%が支払われたとしても、その保険金だけで今までの住居と同等の建物を再建できるわけではありません。また、一部損の認定に至らない場合や、門や塀、垣、エレベーター、給排水設備のみの損害であった場合は、保険金が支払われません。
火災保険は、火災や風水災などの自然災害に加えて、家財の損失、残存物の片づけ費用、盗難など、日常の損害も補償されます。一方、地震保険の補償対象は「地震・噴火・津波」による被害に限定されており、日常的な損害や間接的な被害は補償の対象外です。
火災保険と比較して実際に保険が適用される頻度は低く、「支払った保険料に対して利用する機会が少ない」と感じる方もいるでしょう。
地震保険は損害額の全額が補償されるわけではなく、利用機会も少ないため、万が一の際に受けられる補償に対して保険料が高いと感じる方もいるでしょう。また、住んでいる地域によっては保険料が相場よりも高く感じ、加入したくても加入できない方がいるかもしれません。
地震保険の保険料は「建物の所在地(都道府県)」「建物の構造」「建物の免震・耐震性能」によって決まります。たとえば、地震発生リスクが高い地域や木造住宅に住んでいる場合は、保険料が比較的高くなります。
地震被害を受けた際に、地震保険以外の公的支援を受けられることも「地震保険はいらない」といわれる理由のひとつとして考えられます。
たとえば「被災者生活再建支援制度」では、災害により住宅が全壊するなど、生活基盤に著しい被害を受けた世帯に対して最大300万円の支援金が支給されます。しかし、被災者生活再建支援制度の補償だけでは、生活を再建するための資金として充分とはいえない可能性があります。
後述の「被災者生活再建支援制度だけでは足りない可能性がある」もあわせてご確認ください。
地震保険が必要とされる理由として、以下の2点が挙げられます。
家事で被害を受けたとしても、地震や噴火、またはそれらによる津波が原因の場合は、火災保険では補償を受けることができません。地震保険に加入していれば、地震による火災や地震後の地盤沈下、地震や噴火による津波などで生じた建物や家財の損害も補償されます。
地震保険に加入していなかったとしても、地震で被災した場合には公的支援を受けることが可能です。たとえば「被災者生活再建支援制度」では、住居の修繕や再建を支援するための費用が給付されます。
ただし、支援額は最大でも300万円のため、被災後の生活再建には不充分な可能性があります。たとえば、住宅ローンの残債がある状態で住宅が全壊して新たに建て直す場合、被災前の住宅ローンと建て直す際の住宅ローン、2つのローンを抱えることもあるでしょう。
地震保険の保険金で被災後の生活再建費用の一部をカバーできれば、経済的な負担を軽減できる可能性があります。
以下のように、住んでいる地域や建物の状況によっては、「地震保険はいらない」「地震保険の必要性は低い」と考えられるケースもあります。
地震が発生する可能性の少ない地域や、噴火・津波のリスクが少ない地域に住んでいる場合は、被災リスクが低いと考えられます。ただし、地震は予測が難しく、過去の発生状況だけでリスクを判断するのは難しいと理解しておきましょう。
たとえば、2016年の熊本地震は、M7.0級の地震発生確率が30年以内に1%未満であったにもかかわらず発生し、大きな被害をもたらしました。発生予測確率が低い地域でも、予期せぬ大地震が起こる可能性があります。
新築住宅やマンションなど、近年の耐震基準を満たした建物は、地震による被害を軽微に抑えられる可能性が高いとされています。被害が小さければ受け取れる保険金も少ないため、保険は必要ないと考える方もいるでしょう。
ただし、耐震性の高い建物に住んでいる場合でも被害リスクはゼロではありません。地震の揺れによる建物倒壊のリスクが少なかったとしても、地震による火災や津波、液状化などによって被害を受ける可能性があります。また、地震の揺れで家具や家電などが転倒・落下し損壊する可能性もあります。
地震保険では、耐震・免震などの対策を行っている住宅に対して保険料を割引する制度を設けているため、保険料を抑えながら地震による被害に備えることが可能です。
割引制度については、後述の「地震保険の保険料を抑えられる「割引制度」でご説明します。
賃貸住宅に住んでいる場合は、建物を対象とした地震保険に加入する必要はありません。地震保険は建物の所有者のみが契約でき、建物自体の損害は所有者が負担するためです。
ただし、家財の損害は地震保険で備える必要があります。火災保険に加入したうえで、地震保険には家財のみで加入することを検討しましょう。
地震保険に加入しておけば、地震によって洗濯機や冷蔵庫、炊飯器、テレビ、パソコンなどの生活家電や、ベッドや棚などの家具といった家財が損害を受けた場合、補償が受けられます。
充分な貯蓄がある場合は、地震保険に加入する必要はないと考える方もいるでしょう。充分な貯蓄があれば、地震や津波などの被害を受けても、経済的な困難に陥るリスクが低く、住宅の再建や修繕、家財の買い替えに必要となる費用を賄えるかもしれません。
ただし、地震の規模や損害の程度によっては、想定以上の費用が必要になる可能性があることも認識しておくことが大切です。特に、家屋の全壊にともなう立て直し費用や仮住まいの費用、家財の買い替え費用、地盤改良工事費などの支出が重なると、貯蓄だけでは補いきれない場合があります。また、災害後には建築費が高騰し、再建費用が大幅に増えることも予想されます。
充分な貯蓄があるからといって、地震保険が不要とは限りません。被災した場合の収入の減少も想定して、加入するかどうかを判断することが大切です。
以下のような方は、地震保険の必要性が特に高いといえるでしょう。
特に今後大きな地震の発生が想定されているエリアに住んでいる場合は、地震保険への加入を検討しましょう。
地震調査研究推進本部によると、今後30年以内※に70〜80%の確率で「南海トラフ地震」や「首都直下地震」が発生すると予想されています。
※地震調査研究推進本部「関東地方の地震活動の特徴」
※2025年1月執筆時点
地震は予測が困難な自然災害です。大きな地震が予想されていない地域でも発生する可能性はゼロではありませんが、被害が想定される地域に住んでいるのであれば、特に備えておく必要があります。
自然災害リスクの高い地域に住んでいる場合も、地震保険で備えることがおすすめします。洪水や土砂崩れなどのリスクが高いほど、地震による被害が大きくなる可能性があります。
以下のような自然災害は、地域ごとの災害発生リスクを可視化した「ハザードマップ」で確認できます。
ハザードマップは、各自治体のウェブサイトに掲載されており、印刷物として配布されていることもあります。
また、国土交通省が運営する「ハザードマップポータルサイト」では、全国の市町村が作成したハザードマップを地図や災害種別から検索が可能です。住んでいる地域の自然災害リスクを確認しておきましょう。
戸建てや分譲マンションを住宅ローンで購入して多くの残債がある場合は、地震保険が役立つことがあります。
たとえば、地震で住宅が全壊や半壊して住めなくなった場合でも、被災前の住宅ローンを支払わなければなりません。それに加え、新たに住む家の家賃や新たなローンが発生すれば、二重の支払いとなり経済的負担が大きくなる可能性があります。
地震保険に加入していれば保険金を受け取ることができ、住宅ローンの返済や被災後の生活を立て直すための資金に充てられます。住宅ローンの支払期間がまだ何十年もある場合は、加入を検討するとよいでしょう。
被災によって仕事を失ったり、収入が減少したりする可能性が高い場合も、地震保険の加入を検討しましょう。
特定の地域に依存しているビジネスや、物理的なインフラが重要な職業ほど影響を受けやすく、長期間収入を得られなくなることも考えられます。貯蓄が少ない場合は、さらに経済的な負担が大きくなるでしょう。
地震保険に加入していれば万が一の際に保険金を受け取ることができ、収入が得られるまでの生活費に充てることが可能です。
地震保険の付帯率は、年々増加傾向にあり、特に阪神・阪神淡路大震災(1995年)や東日本大震災(2011年)など、大きな地震が発生したタイミングで大きく上昇しています。
損害保険料率算出機構の「地震保険 地方(市、区等)別付帯率 2023年度」によると、2023年度に契約された火災保険(住宅物件)のうち、地震保険を付帯している件数の割合は69.7%です。
地震保険では、一定の基準に基づく耐震性能を備えた建物に対し、保険料の割合が適用されます。
保険料が高いと感じる場合でも、割引制度を活用することで抑えられる可能性があります。割引制度は以下の4種類です。
| 割引制度 | 割引率 | 適用条件 | |
|---|---|---|---|
| 免震建築物割引 | 50% | 「住宅の品質確保の促進等に関する法律」の「免震建築物」の基準に適合している | |
| 耐震等級割引 | 耐震等級3 | 50% |
|
| 耐震等級2 | 30% | ||
| 耐震等級1 | 10% | ||
| 耐震診断割引 | 10% | 耐震診断または耐震改修により、建築基準法の耐震基準を満たしている | |
| 建築年割引 | 10% | 1981年6月1日以降に新築された建物である | |
築年数の古い住宅に住んでいる場合でも、耐震診断または耐震改修によって、建築基準法の耐震基準を満たせば耐震診断割引が適用され、保険料が10%割引になります。
あわせて、地震保険料控除を利用すれば所得税や住民税の負担も軽減できます。割引制度と地震保険料控除を併用することで、割引+節税の相乗効果が期待できます。
地震保険は「いらない」といわれることもありますが、必要性は住まいや個々の経済状況などによって異なります。
特に地震や災害の発生リスクが高い地域に住んでいる方や、住宅ローンの残債がある方、収入の減少などにより被災後の生活の立て直しが難しくなる可能性が高い方は、地震保険の加入を前向きに検討するとよいでしょう。
なお、地震保険は火災保険とのセットでのみ加入ができます。火災保険に未加入の方は、以下のシミュレーションで保険料をぜひ確認してみてください。
地震や噴火を原因とする損害から建物と家財を守りたいときは、「建物」と「家財」の両方に地震保険の保険金額を設定する必要があります。仮に建物にしか地震保険をかけていないとすれば、万が一のときに家財は補償されないため注意が必要です。
資格:CFP
東証一部上場企業で10年間サラリーマンとして勤めるなか、業務中の交通事故をきっかけに企業の福利厚生に興味を持ち、社会保障の勉強を始める。以降ファイナンシャルプランナーとして活動し、個人・法人のお金に関する相談、北海道のテレビ番組のコメンテーター、年間約100件のセミナー講師なども務める。趣味はフィットネス。健康とお金、豊かなライフスタイルを実践・発信しています。
新築戸建てや分譲マンションでも、地震保険に加入することをおすすめします。
たとえば、住宅ローンで購入している場合や貯蓄だけでは生活の再建が難しい場合、被災後に収入がなくなる可能性がある場合などです。地震保険に加入していれば、地震で被害を受けた際に、保険金を住宅ローンの残債や生活再建のための費用に充てることが可能です。
地震保険の家財補償がいらないかどうかは、個々の状況や家財の価値などによって異なります。
家財の価値が低い場合や、被災後の生活に必要な家電・家具などの再購入に必要な資金を貯蓄でカバーできる場合は、必要性が低いといえるでしょう。一方で、高額な家財があり買い替えにかかる費用が大きくなる場合や、再購入費用を貯蓄で賄えない場合などは、必要性が高いといえます。
地震保険の加入を後悔した方や地震保険を解約した方の理由として、以下のことが考えられます。
・被害を受けても損害額の全額は補償されないため
・利用する機会が少なく、保険料が負担になったため
・貯蓄と公的支援制度で充分だと考えたため
地震保険の必要性は、人によって異なります。住宅の状況や経済状況を踏まえて必要性を判断することが大切です。
ダイレクト型だからお手頃な保険料