公開日:2025年12月5日
万が一「もらい火」で自宅が燃えてしまった場合、修理費用はどうなるのでしょうか。多くの方は「損害賠償を請求できるはず」と考えがちですが、実際は泣き寝入りとなってしまうケースも少なくありません。「失火責任法」によって、重大な過失がない限り、失火者に損害賠償責任を問えないと定められているためです。
しかし、相手に賠償を請求できなくても、火災保険に入っていれば自宅や家財の補償を受けられます。「被害にあったにもかかわらず、補償を受けられない」というときに備えるためにも、火災保険の補償内容を確認しておきましょう。
隣家が火災になり、自宅がもらい火で被害を受けた場合、「相手が原因なのだから、修理費用は補償されるだろう」と思う方がいるかもしれません。
しかし実際には、たとえ自分に落ち度がなくても、相手への損害賠償請求は原則としてはできません。その理由は、「失火責任法」という法律が存在するためです。
失火責任法とは、失火者に重大な過失がなければ、原則として損害賠償責任を負わないことを定めている法律です。そのため、隣家の失火による火災で自宅がもらい火の被害を受けても、多くの場合、失火者に損害賠償責任を求めることができません。
重大な過失である場合、失火者は火災の被害を受けた相手に損害を賠償しなければなりません。つまり、もらい火による被害で損害賠償請求ができるかどうかは、「火事を起こしてしまった者に重大な過失があったかどうか」が重要な基準となります。
以下のようなケースは、重大な過失(重過失)に当たる可能性が高くなります。なお、同様のケースであっても、ケースごとに当時の一般的な常識・背景や細かい状況を総合的に考慮して重大な過失に該当するか判断されることとなるため、以下のケースが必ず重大な過失ありとされるわけではありません。
重大な過失(重過失)とは、通常であればわずかな注意を払えば、たやすく危険を予見できたにもかかわらず、これを見すごしたような、「ほとんど故意に近い著しい注意欠如の状態」を指すとされています。
なお、重大な過失があり、損害賠償請求をすることができても、失火者が十分な財産を持っていなかったり、個人賠償責任保険(特約)に加入していなかったりすれば、結果として損害を賠償してもらえないこともあります。
以下は、重大な過失に当てはまらないと過去に判断されたことがあるケースです。ただし、火災の原因として予見できるとされる内容は、ときとともに変わってくるため、過去の事例と同じ判断になるとはかぎりません。
重大な過失に当たらないレベルの過失のときは、火災の原因が相手にあった場合でも、法律上は損害賠償義務を負わないことになります。
つまり、これらが原因でもらい火による被害を受けた場合でも、失火元の相手への損害賠償請求をできないということです。
火事の原因がもらい火だったとしても、相手に重大な過失がなければ自宅や家財を買い直す費用を請求できません。また、相手に損害賠償請求をすることができた場合であっても、相手に財産がない場合などは、損失分を支払ってもらうことができません。ただし、自宅が加入している火災保険で、自宅や家財の損害に対する補償を受けることは可能です。
火災保険に入っていなければ、被害を受けたにもかかわらず、自費で修理しなければならない場合もあります。「自分が火元になってしまったとき」だけではなく、「もらい火で相手から補償を受けられないとき」のためにも、火災保険への加入が必要といえるでしょう。
火災保険では、以下のような自然災害の他、水濡れなどの被害も補償されます。
補償の対象は、持ち家であれば建物と家財、賃貸であれば家財のみとなります。ただし、持ち家の方で建物のみを補償対象としている場合、家具や家電は補償対象外となるので注意しましょう。
また、保険金の支払額は、契約内容が「再調達価額(新価)」または「時価」かによって異なります。
例えば、20年前に3,000万円で建てた家が全焼した場合、「再調達価額」であれば、同等の家を建てるための3,000万円(※物価変動を反映)が支払われます。一方「時価」であれば、価値が1,500万円に減少していると判断された場合、その金額しか支払われません。
火災保険に臨時費用保険金を受け取れる補償や特約が付いている場合、事故によって損害を受けた費用に対して、臨時費用保険金が支払われます。これは、火災によって必要となる仮住まいの宿泊費や生活復旧に必要なものの購入費用などに利用が可能です。臨時費用保険金は、保険会社や契約内容によって異なりますが、損害保険金の10〜30%(100〜300万円限度)※で定められているのが一般的です。
現在の火災保険の補償対象や保険金の契約はどうなっているか、この機会に見直すとよいでしょう。
※ チューリッヒの「臨時費用補償特約」は、損害保険金の10%(100万円限度)です。
地震による火災の補償について
地震による火災の補償は、地震保険で受けられます。
火災保険に加入していても地震保険に加入していなければ、地震による火災の補償を受けられない点に注意しましょう。なお、地震保険は単独での契約はできず、原則として火災保険とセットで契約する必要があります。
法律上、重大な過失がない限り、火元となった側が隣家への賠償をする義務はありません。しかし、もらい火で被害を受けた側としては、「火災の原因は相手にあるのに、補償がないのは納得できない」と感じることもあるでしょう。
自宅からの出火が原因で隣家に延焼してしまった場合でも、火災保険に「類焼損害補償特約」など※を付けていれば、保険会社から保険金が支払われ、相手への補償することができます。
※ チューリッヒには「類焼損害補償特約」の取り扱いはありません。
また、火災保険のなかには、特約で隣家へのお見舞い金としての費用を支払ってくれるものがあり、チューリッヒの場合は「失火見舞費用」が該当します。失火見舞費用は、保険の対象となる建物などから発生した火災・破裂・爆発によって、第三者の所有物に損害を与えた際にお見舞金などとして必要となる費用です。
失火見舞費用保険金の額は、例えば、1被災世帯あたり20万円(1回の事故で保険金額の20%が限度)としており、お見舞い程度のものです。
もらい火によって被害を受けたとき、失火元に原因があっても相手からの補償を受けられない可能性があります。火災保険に加入していなければ、「自分は悪くないのに、自宅の建て直しや家財購入の費用が全額自己負担」ということになるかもしれません。
自分で火災を起こしてしまったときはもちろん、もらい火による被害を補償するためにも、火災保険への加入は必要といえるでしょう。
火災保険は、火災や自然災害の他、隣家からの「もらい火」によってご自宅や家財が損害を受けた際の費用もカバーします。
大切な財産を守るためにも、火災保険を選ぶ際は、ご自身の状況に合った補償内容を慎重に検討するようにしましょう。
資格:CFP
東証一部上場企業で10年間サラリーマンとして勤めるなか、業務中の交通事故をきっかけに企業の福利厚生に興味を持ち、社会保障の勉強を始める。以降ファイナンシャルプランナーとして活動し、個人・法人のお金に関する相談、北海道のテレビ番組のコメンテーター、年間約100件のセミナー講師なども務める。趣味はフィットネス。健康とお金、豊かなライフスタイルを実践・発信しています。
相手に重大な過失がある場合は、相手に損害賠償請求をすることができます。
相手の家が火元であったとしても、重大な過失に該当しない限り、法律上は損害賠償請求をすることができません。その場合は、自分が加入する火災保険を使うことになります。
なお、失火元が「類焼損害補償特約」に加入している場合などは、相手から補償を受けられることがあります。
地震による火災の場合は、相手から補償を受けることができません。
もらい火による火災で家族が死亡したり、ケガを負ったりした場合でも、重大な過失に該当しない場合は、法律上は相手への損害賠償請求ができません。
また、相手が「類焼損害補償特約」を付けていた場合であっても、この特約の補償対象は、住宅と家財であり、人的被害は対象としていないため、この特約からの補償を受けることができません。
万が一火災によって家族が亡くなった場合、自身で生命保険や傷害保険などで死亡や傷害に対する備えをしていれば、そちらの保険金は受け取ることができます。
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