公開日:2025年7月9日
地震保険は、地震や噴火、これらの津波による建物や家財の損害を補償する保険です。マンションも例外なく地震によって被害を受ける可能性があるため、地震保険で備える必要があります。
マンションは戸建てよりも構造的に地震に強いといわれますが、地震による被害を受けた場合は、修繕費用や生活再建への負担が大きくなる可能性があります。
マンションに住んでいる場合の地震保険は、分譲と賃貸では必要性が異なり、共用部分と専有部分で補償範囲も変わります。適切に備えるためにも、マンションにおける地震保険の必要性や補償内容、受け取れる保険金額などを理解しておきましょう。
地震保険とは地震や噴火、これらによる津波によって被った「建物」や「家財」の損害を補償する保険です。地震保険は単体での加入はできないため、火災保険に加入して地震保険を付帯する必要があります。
マンションの場合は、分譲か賃貸か、地域の地震リスク、経済状況など、個々の状況によって地震保険の必要性が異なります。
分譲マンション(持ち家)には専有部分と共用部分があり、専有部分の修繕費用や家財の補償は個人で備える必要があります。
地震によって生じた外壁や玄関ホールなどの共用部分の修繕費用は、マンションの管理組合が加入している地震保険などで対応します。なお、地震保険は地震による損害を全額カバーできる保険ではありません。しかし、被災後の経済的リスクを軽減するため、地震保険の加入をおすすめします。
特に住宅ローンが多く残っている場合は、地震保険の必要性が高いといえるでしょう。
たとえ地震で被害を受けてもローンの返済がなくなるわけではなく、被災後の生活の立て直しに大きな負担がかかるため、保険金による経済的な支えが重要です。
マンションの「共用部分」「専有部分」の分け方に関しては「マンションにおける地震保険の適用範囲」で詳しくご説明します。
賃貸マンションの場合は、入居者が建物に対する保険に加入する必要はありません。建物の所有者である大家が、火災保険や地震保険の加入手続きを行います。
ただし、家具や家電などの家財の損害に関しては、入居者が備える必要があります。地震保険の保険対象は居住用の建物と家財であり、家財の地震保険に加入することで家財の損害に備えることが可能です。
家財の地震保険に加入していれば、地震によって家財が破損した際に補償を受けられます。
ただし、地震保険は単独での加入ができないため、家財の火災保険にもあわせて加入する必要があります。
財務省が公表している「地震保険の加入促進について」によると、2021年度のマンション専有部分・共用部分における地震保険付帯率(持ち家)は、新規契約件数ベースでマンション共用部分が49.0%、専有部分は74.9%となっています。
地震保険付帯率は共用部分・専有部分ともに上昇傾向で、特に専有部分は2012年度の35.4%から13.6%の上昇が見られます。
地震保険の補償対象は「居住用の建物」と「その建物に収容されている家財(家具・家電・衣類など)」です。地震や噴火、これらによる津波によって生じた建物や家財の損害は火災保険では補償されません。
地震保険では、以下のようなケースで補償が受けられます。
【建物の補償例】
【家具の補償例】
マンションは「共用部分」と「専有部分」で構成されており、火災保険や地震保険では、それぞれで加入を検討する必要があります。
一般的にマンションの管理組合が契約するマンションの共用部分は、以下のとおりです。
これらの共用部分の地震保険はマンション管理組合が契約します。
ただし、マンションの共用部分に対する火災保険や地震保険の加入は法的な義務ではないため、加入していないケースもあります。共用部分の地震保険に加入しているか不明な場合は、マンション管理組合や管理会社に確認してみるとよいでしょう。
専有部分とは、分譲マンションなどの区分所有権建物において、区分所有者が所有している部分のことです。一般的には居住部分を指しますが、厳密には天井や床・壁などコンクリートで囲まれた内部空間になります。
マンション管理組合が加入する地震保険では、これらの専有部分や家財の損害がカバーされません。
そのため、専有部分の修繕や再建にかかる費用は、区分所有者の負担となります。区分所有者は、専有部分と収容されている家財の、地震による被害に備える必要があります。
地震保険料は、建物の所在地や構造、割引制度の適用有無、保険期間によって決まります。
保険料は、地震のリスクに応じて都道府県別に1等地から3等地までの3つに区分されており、リスクが高い地域ほど保険料も高くなります。また、木造住宅は、地震の揺れによる損壊や火災による焼失のリスクが高いため、鉄骨造やコンクリート造の建物に比べて保険料が高くなります。
さらに、建物の耐震性能に応じた割引制度が設けられており、一定の基準に基づく建築年または耐震性能を満たしている場合には割引を受けることが可能です。
なお、地震保険の保険料や補償内容に、保険会社による違いはありません。
地震保険では、一定の基準に基づく耐震性能を備えた建物に対して割引が適用され、建物や家財の保険料が10〜50%割引されます。最も高い割引が適用されるのは「免震建築物割引」と「耐震等級割引(耐震等級3)」で、いずれも50%です。
これらの割引を適用するには、「住宅性能評価書」など所定の確認資料の提出が必要です。
また、割引を重複して適用することはできません。
以下で、さまざまなシミュレーション結果についてご説明します。
【共通の試算条件】
| 地域 | 割引 | 保険料(5年間) | |
|---|---|---|---|
| 東京 |
建築年割引 (10%) |
建物 | 174,450円 |
| 家財 | 29,080円 | ||
| 大阪 |
耐震診断割引 (10%) |
建物 | 73,650円 |
| 家財 | 12,280円 | ||
| 福岡 |
免震建築物割引 (50%) |
建物 | 25,800円 |
| 家財 | 4,300円 | ||
| 宮城 |
耐震等級割引 耐震等級2 (30%) |
建物 | 57,300円 |
| 家財 | 9,550円 | ||
| 愛知 | 割引なし | 建物 | 81,750円 |
| 家財 | 13,630円 | ||
※あくまでもシミュレーションの結果であり、条件によって実際の保険料は異なります。
おおまかなシミュレーション金額は、日本損害保険協会などが提供するシミュレーションツールで簡単に試算が可能です。
実際に地震による被害が生じた場合は、契約時に設定した保険金額をもとに、損害の程度に応じて保険金が支払われます。
地震保険の保険金額は、建物が5,000万円、家財が1,000万円を上限に、火災保険の保険金額の30〜50%の範囲内で設定できます。たとえば、建物の火災保険の保険金額を3,000万円で契約している場合は900〜1,500万円、家財の火災保険の保険金額を500万円で契約している場合は、150〜250万円です。
なお、マンションの「火災保険の保険金額」は、専有部分の火災保険の保険金額を指します。
地震保険の保険金は、建物や家財の損害の区分に応じて支払われます。
損害の区分と支払われる保険金額は、以下のとおりです。
| 損害の程度 | 支払われる保険金額 |
|---|---|
| 全損 |
地震保険の保険金額の100% (時価額が限度) |
| 大半損 |
地震保険の保険金額の60% (時価額の60%が限度) |
| 小半損 |
地震保険の保険金額の30% (時価額の30%が限度) |
| 一部損 |
地震保険の保険金額の5% (時価額の5%が限度) |
たとえば建物の地震保険金額を3,000万円、家財の地震保険金額を500万円で契約しており、地震によって建物・家財ともに「大半損」と認定された場合は、保険金額の60%である2,100万円(建物1,800万円、家財300万円)が支払われます。
ただし、損害の程度が「一部損」に至らない損害の場合は、保険金が支払われません。
マンションの地震保険の損害は、建物と家財それぞれで「全損」「大半損」「小半損」「一部損」に分類され、建物の損害認定は建物全体を基準に行われます。
地震保険の損害の基準は、以下のとおりです。
| 損害の状況 | ||
|---|---|---|
| 建物 | 家財 | |
| 全損 | 主要構造部※1の損害額が、 時価額の50%以上 |
家財の損害額が家財の時価の 80%以上 |
| 焼失もしくは流失した部分が、 建物の延床面積の70%以上 |
||
| 大半損 | 主要構造部※1の損害額が、 時価額の40%以上50%未満 |
家財の損害額が家財の時価の 60%以上80%未満 |
| 焼失もしくは流失した部分が、 建物の延床面積の50%以上70%未満 |
||
| 小半損 | 主要構造部※1の損害額が、 時価額の20%以上40%未満 |
家財の損害額が家財の時価の 30%以上60%未満 |
| 焼失もしくは流失した部分が、 建物の延床面積の20%以上50%未満 |
||
| 一部損 | 主要構造部※1の損害額が、 時価額の3%以上20%未満 |
家財の損害額が家財の時価の 10%以上30%未満 |
|
全損・大半損・小半損・一部損に至らない建物が床上浸水 または地盤面より45cmを超える浸水 |
||
※1:土台、柱、壁、屋根など
マンションの場合は、原則として1棟建物全体(共用部分を含む建物全体)で損害認定が行われます。
たとえば、専有部分の損害が「小半損」であっても、1棟建物全体の損害が「大半損」の場合は専有部分も「大半損」となります。一方、建物全体の損害が「小半損」で専有部分が「大半損」といったように専有部分の損害が建物全体の損害よりも大きい場合は、個別に「大半損」として認定されます。
家財の損害認定については、専有部分ごとの家財の損害状況のみで認定をします。
マンションの地震保険に加入することで考えられるデメリットは、以下のとおりです。
地震保険の保険料は、建物の構造や地域などによって異なります。条件によっては保険料が高くなり、経済的な負担を感じる方もいるでしょう。
保険料が高い場合は、利用できる割引制度がないかを確認することが大切です。たとえば、1981年6月1日以降に新築された建物であれば「建築年割引」で10%の割引が適用されます。
また、長期契約であれば、1年の更新ごとに支払うよりも保険料の支払総額を抑えることが可能です。
さらに、地震保険料控除も利用できる点を押さえておきましょう。1年間に支払った地震保険料は一定の金額の所得控除を受けられるため、所得税や住民税を節税できます。
地震保険料控除を受けるには、年末調整や確定申告で保険会社などから交付された「保険料控除証明書」または「QRコード付控除証明書」を申告書に添付するか、申告書提出の際に提示する必要があります。)
地震保険で支払われる保険金は実際の損害額に対して支払われるわけではありません。損害の程度に応じて支払われるため、認定された損害の程度によっては、実際にかかった修理費や家財の再購入費より低くなることもあるでしょう。
ただし、地震保険は実際の損害額を補償する保険ではなく、生活の再建を支援するための保険である点を認識しておくことが大切です。
地震により被害を受けると公的支援制度からの給付を受けられますが、住宅が全壊するなど生活基盤に著しい被害を受け、被災者生活再建支援制度を利用した場合であっても、受け取れる金額は最大300万円です。公的支援制度の給付だけでは、被災後の生活の立て直しには不充分な可能性があります。
地震保険の保険金が、被災後の生活再建の助けになるでしょう。
耐震・免震・耐火構造のマンションは地震による被害を受けにくいため、地震保険を利用する機会が少ない可能性があります。
しかし、加入の必要性は建物の構造だけでなく、地域の地震発生リスクや自身の経済状況も踏まえて判断することが重要です。
たとえば、大地震のリスクが高い地域に住んでいる場合や、貯蓄が少なく被災時の生活再建が難しい場合は、地震保険の保険金が経済的な支えとなることもあります。
特に、被災による収入減が懸念される場合は、生活の安定を確保する手段として検討する価値があるでしょう。地震保険のメリットとコストを比較し、自身にとって最適な選択をすることが大切です。
地震保険の保険金請求の流れは、マンションと戸建てで違いはありません。
一般的な流れは以下のとおりです。
地震・噴火などにより損害が生じたら、早めに保険会社に連絡することが大切です。
マンションの地震保険が必要かどうかは、住んでいる地域や建物の構造、自身の経済状況などを踏まえて総合的に判断することが大切です。
ここからは、マンションに住んでいる方で、地震保険の必要性が高い方と低い方の特徴をご説明します。
以下に該当する方は、地震保険の必要性が高いといえるでしょう。
地震保険で受け取った保険金は、建物や家財の修復に限らず、さまざまな用途に使用できます。地震保険に加入して保険金を受け取れることで、被災後の金銭的な不安を軽減できるでしょう。
以下に該当する方は、地震保険の必要性が低いといえるでしょう。
これらの特徴に当てはまる場合は地震保険の必要性が低いと考えられますが、必ずしも不要とは限りません。また、たとえ災害リスクが低い地域に住んでいたとしても、想定外の大規模地震が発生した場合に被害が広範囲におよび、貯蓄だけでは対応が難しくなることも考えられます。
地震保険の必要性が低いと考えていても、自身の状況やリスク許容度を踏まえ、地震保険への加入を慎重に判断することが大切です。
地震保険は単体では加入できず、火災保険とセットで加入する必要があります。契約中の火災保険で地震保険に加入するだけでなく、契約する火災保険を切り替えたうえで地震保険に加入することも可能です。
地震保険の保険料や補償内容はどの保険会社で加入しても同じですが、火災保険は保険会社により違いがあります。火災保険を選ぶ場合は、複数の保険会社から見積りを取り、保険料や補償内容を比較してみるとよいでしょう。
比較する際は保険料だけでなく、必要な補償が受けられるかなども含め、総合的に判断することが大切です。
地震を原因とする火災で専有部分の壁や床が損傷したり家財が損害を受けたりした場合、地震保険に加入していなければ補償されません。万が一に備えて、マンションでも地震保険に加入しておくことをおすすめします。
資格:CFP
東証一部上場企業で10年間サラリーマンとして勤めるなか、業務中の交通事故をきっかけに企業の福利厚生に興味を持ち、社会保障の勉強を始める。以降ファイナンシャルプランナーとして活動し、個人・法人のお金に関する相談、北海道のテレビ番組のコメンテーター、年間約100件のセミナー講師なども務める。趣味はフィットネス。健康とお金、豊かなライフスタイルを実践・発信しています。
マンションに限らず、地震保険だけを単独で契約することはできません。火災保険とセットでの加入が必要です。
地震による建物被害のリスクが小さいと考えられる耐震性の高いマンションの場合でも、家具や家電が転倒して壊れるリスクはあります。
家財の地震保険に加入していれば、そういった被害に備えられます。
地震保険の保険対象である「建物」は、契約者が所有している「住居にのみ使用される」建物と、門、塀、垣などの付属建物を指します。マンションの場合は、区分所有建物の専有部分を指し、廊下やバルコニーなどの共用部分は含まれません。
一方で「家財」は、その建物に収容されている、契約者または契約者と生計をともにする親族の所有する家具、家電製品、衣類など、生活に必要な動産一式を指します。
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