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自動ブレーキは安全な反面、ドライバーの油断を逆に高める?

高根英幸の” 先進! ”カーテクノロジー講座

自動ブレーキは安全な反面、ドライバーの油断を逆に高める?

Vol.02 自動ブレーキは安全な反面、ドライバーの油断を逆に高める?

このところ、クルマの装備で人気を集めているものに自動ブレーキがあります。「ぶつからないクルマ」などのキャッチコピーでわかりやすく安全性を謳っているので、クルマを購入しようとする人たちにとってこの自動ブレーキ(正確には衝突被害軽減ブレーキといいます)は魅力的に映るのでしょう。自動ブレーキは、今や燃費性能と並んで新車の評価要素としてトップに挙げられるほど、私たちユーザーの関心を集める装備となりました。

自分のミスをクルマがフォローしてくれて、衝突事故を未然に防ぐ。運転に自信がない人はもちろん、ドライブを楽しむドライバーにとっても疲労時の「うっかりミス」をサポートしてくれる装備は頼もしい存在です。今回は、そんな自動ブレーキを装備したクルマを選ぶときの注意点について考えてみましょう。

自動ブレーキ搭載車でもその仕組み、作動の仕方はさまざま

クルマを選ぼうとするとき、装備面を比べるのは当然の行動ですが、自動ブレーキを搭載しているというだけで安全装備に関しては同等、と安易に判断しないで、その中身をしっかりと確認しましょう。メーカーやブランド、価格などよりも実際の効果を重視して選ぶことをおすすめします。

といっても基本的に試すことはできませんよね。メーカーやディーラーによっては自動ブレーキの作動を体験させてくれる試乗もあるようですが、センサーの種類や数、画像認識の処理能力など、僅かな手違いで事故も起きています。一口に自動ブレーキといっても仕様や実際の作動の精度、作動プロセスなどには色々な違いがあります。

カメラ方式

最もわかりやすいセンサーとしてはカメラがあります。フロントウインドウの上端、ルームミラーの裏側あたりに備わっているので気付く人も多いでしょう。このカメラの基本的な仕組みは、スマホやデジタルカメラに使われているものと同じです。違いは画像を認識して物体の大きさや種類、距離などを算出するために利用している、ということです。最近のスマホには、顔検出など人間の顔を認識して表示する機能がありますが、それを非常に高度にしたものだといえばいいでしょうか。

この画像認識の技術は、元々イスラエルのモービルアイ社が軍事用に開発したものです。自社で開発したスバル以外、ほとんどの自動車メーカーがこの技術を利用しており、民生用とするだけでなく近年は独自の進化を続けています。

カメラ方式による画像認識例(実際にモニターに表示される情報とは異なります ※画像提供:VOLVO)カメラ方式による画像認識例(実際にモニターに表示される情報とは異なります ※画像提供:VOLVO)

自動ブレーキの場合、路上にあるさまざまな物体の中から衝突する可能性のあるモノだけを識別することが大事ですが、カメラによる画像認識は正確に物体の種類を識別しやすい、というメリットがあります。人間の目と同じように、2台のカメラを使って、その見え方の違いから距離などを測定するステレオカメラ方式も増えています。しかしカメラ方式は天候などの外乱に左右されやすいという問題点もあります。カメラに直射日光が入る朝夕の時間帯や、濃霧や大雨、雪などの荒天では機能しないこともあります。

ミニ波レーダー

ミリ波というのは波長(電波が上下にうねって0に戻る周期)が1mmから10mm程度の電波のことで、周波数では30GHz〜300GHzくらいまでの電波となります。このうちクルマのセンサーとして使用が許されているのは77GHzと24GHz(正確にはサブミリ波)という周波数帯です。

ミリ波レーダーによる検知は、2mから200mくらいまでの距離に強みを発揮します。以前は近距離での識別は得意ではなかったのですが、ここ数年で車載のレーダー技術が進み、レーダー装置だけでも歩行者の検知まで可能になってきました。

レーダーは電波を発射して、その反射波をキャッチすることで、反射時間と周波数の変化から前方の物体の位置と相対速度を算出する仕組みです。計測する範囲を増やせば対象物の方向や大きさなども把握することもできます。このミリ波レーダー装置の短所は、装置が大きく高価であることです。一方長所は、カメラと比べ、天候の変化などに影響を受けにくいことや、高速道路など車間距離が大きい走行状態でも前走車との距離や相対速度を検知しやすいことです。

赤外線レーザー

同じように反射波を利用して対象物との距離や相対速度を検知できるセンサーに赤外線レーザーがあります。レーザー光というのは本来、拡散する習性の光を直線的に進むように集束させたもので、赤外線は可視光ではありません。目には見えませんが、暗闇でも昼間でも真っすぐに進み、対象物にぶつかって跳ね返ってきます。

赤外線レーザーは近距離から20m程度の距離まではかなり正確に対象物までの距離を測定することができます。ただし光なので、これも荒天時など外乱の影響を受けることもあるようです。軽自動車には、これ1つで前方の障害物を検知する自動ブレーキを採用している車種もあります。
近所の市街地を走るだけ、というのなら速度も低く、自動ブレーキの種類もそれほど気にする必要はないかも知れません。しかし国道などの幹線道路や高速道路を走行するようなら、最低でもカメラ1基と赤外線レーザーを備えた自動ブレーキを搭載しているクルマを選ぶ方が安心でしょう。

センサーの種類や数だけでなく、システムの処理能力や実際のブレーキ制御の方法なども、実際の効果をかなり左右します。対象物を検知すると、まず警報が鳴り、次いで軽くブレーキをかけてくれるものもあれば、ギリギリまで警報も鳴らさず、いきなり急制動を開始する車種もあります。ドライバーがハンドル操作やブレーキ操作をすると制御が解除されるものもあれば、ドライバーの操作に関わらず急制動を続ける車種もあります。

自動ブレーキの作動は本来「あってはならない状態」ということ

自動ブレーキの作動は本来「あってはならない状態」ということ

ドライバーが気付かない危険から守ってくれる便利な自動ブレーキですが、落とし穴が存在することを覚えておいてください。というのも、自動ブレーキは作動しない場合もあれば、本来必要ない状況で急制動をしてしまう誤作動を起こす可能性もゼロではないのです。一般道では車道の右側を逆走してくる自転車や、さまざまな構造物や障害物など、予想外の事態が起こることも十分に有り得ます。

また、ドライバーが気付かない危険から守ってくれるということは、周囲から見ればいきなり急停車するクルマに過ぎません。なぜなら、クルマが自動的に急ブレーキを掛けるため、その寸前までブレーキをかけるような挙動は何一つ感じさせないからです。「ぶつからないクルマ」は「ぶつけられやすいクルマ」にもなり得るのです。

さらに、しばらくは自動ブレーキを装備していない既存のクルマと混在する状況ですから、万が一交通事故が起きてしまったら、事故の原因、第一当事者(事故の主原因となる運転者)の責任などがこれまでより複雑になってしまうことも避けられそうにありません。

運転免許を取得、維持しているということは、運転するための技術や運動機能、交通ルールに関する知識は備わっているということでもあります。すなわち、クルマが自動的にブレーキをかけるような運転は本来「あってはならない」のです。とはいえ、実際に自動ブレーキが作動すると「助かった〜」と思うことになるのでしょうね。

でもクルマに頼った気持ちで運転していることは、とても危険です。これから急速に自動ブレーキ搭載車両の普及率が高まっていくことで交通事故の絶対数は減っていくかも知れませんが、それとともに「クルマが何とかしてくれる」と油断してしまうドライバーが増えていくとしたら、それは別の意味で危険性を高めていくことにつながってしまいます。

クルマの基本性能や走りのフィールも重視しましょう

クルマの基本性能や走りのフィールも重視しましょう

安全性能を考えるならば、ボディの衝撃吸収性など基本性能を重視することも大事です。最近のクルマは衝突安全性を高めていて、軽自動車でも高い安全性を実現していますが、現実の衝突事故では衝突エネルギーの大きさは車体の重量と衝突速度に比例します。軽自動車同士の衝突、あるいは建物との衝突では、自車の運動エネルギーを吸収できるだけの安全性を備えていればいいのですが、相手が大型乗用車やトラックとなれば、衝突時には相手の運動エネルギーを受け止めることになります。そういった意味では安全性のために車体が大きいクルマを選ぶメリットも存在するのです。

さらに原点に立ち返って考えれば、クルマ自体の基本性能をキチンと見定めることも重要です。事故を防ぐ危険回避能力は自動ブレーキの性能だけではありません。ステアリングを切ったときの応答性、ペダル配置などの操作系のレイアウト、重量配分や足回りなどによる操縦安定性といった基本性能は、色々な場面でドライバーを助けてくれます。

来年の1月から自動車保険にも自動ブレーキ搭載車両の割引制度が始まります。軽自動車は2年ほど導入が遅れるようですが、保険料が下がるのはいいことです。燃費も向上して故障も少ない最新のエコカーたち。その中から選ぶなら、少々の燃料費の差や装備の違いだけではなく、走りのフィールが自分の感覚にマッチするか、自宅やよく行く場所の駐車場などでの使い勝手なども確認しておきたいですね。

次回は前走車を追従して走行してくれるACC(アダプティブ・クルーズ・コントロール)を中心とした話題をお届けしましょう!

※ 本記事は著者個人の見解・意見によるものです。

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※1 大手損害保険会社(3社)から切替えた当社ご契約者アンケートより算出。(回答数:1,829件/集計期間:2018年1月-2018年8月)お客さまの申告による、加入中の保険会社から提示された継続保険料と当社契約保険料の差額であり、当社商品・補償内容が前契約保険会社と異なるケースも含まれます。

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※1 大手損害保険会社(3社)から切替えた当社ご契約者アンケートより算出。(回答数:1,829件/集計期間:2018年1月-2018年8月)お客さまの申告による、加入中の保険会社から提示された継続保険料と当社契約保険料の差額であり、当社商品・補償内容が前契約保険会社と異なるケースも含まれます。

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