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レーンキープアシストとパーキングアシストを支えるEPSという機構

高根英幸の” 先進! ”カーテクノロジー講座

レーンキープアシストとパーキングアシストを支えるEPSという機構

Vol.04 レーンキープアシストとパーキングアシストを支えるEPSという機構

パワーステアリングをモーターで行なうEPSは日本発祥のメカ

皆さんがクルマを運転する際、必ず操作するものにアクセルとブレーキのペダル、それにハンドル(正確にはステアリングホイールといいます)がありますよね。ステアリング操作は交差点やカーブを曲がるときだけでなく、直線路を走っているときでも実は道は真っすぐではなかったり、完全な平坦ではなかったりするために常に微調整しているものです(意識していないと気付きません)。

ADAS(先進運転支援システム)では、このステアリング操作を監視している運転支援システムとしてLDW(レーンキープデパーチャーウォーニング=車線逸脱警報)というものがあります。これはカメラで道路の車線などを読み取り、常に車線の中央付近を走行できているかを判断し、車線からクルマがはみ出そうになったら、警報を鳴らしてドライバーに危険を知らせるものです。さらに最近ではクルマの方で自動的に修正舵を当てて、車線の中央へと戻してくれようとするレーンキープアシスト(車線維持支援システム)も増えています。これは自動運転ではレベル1に相当するもので、うっかりわき見などをしても車線からはみ出ることを防いでくれる、便利な機能です。

車線からはみ出しそうになると警告するLDW

車線からはみ出しそうになると警告するLDW

それにしても、なぜこんなことができるのか、不思議に感じる人もいるのではないでしょうか。しかも実際に操舵をする機構は、これまでクルマに装備されてきたパワーステアリングなのです。

パワーステアリングは、そもそも停止状態や低速走行では操舵が重いステアリング操作を軽減するために開発されたものでした。エンジンの力で油圧ポンプを回して、ステアリングを切った方向に油圧をかけることで操舵力を軽減してくれるしくみです。

初期のものはアシスト力が強過ぎて指一本でクルクルとステアリングを回せてしまうものもあり、高速走行時にはフロントタイヤからの情報が伝わらず、操舵感もないため不安に思うものもあったほどでした。そこからエンジンの回転数や走行速度に応じてアシスト力が変化するように進化して、電子制御化も進んで走行条件や切り替えモードによりステアリングのフィールが選べるものも登場しています。

最近のクルマは油圧を使わず、モーターが操舵力をアシストするEPS(電動パワーステアリング)が主流です。これは日本で発明された機構で、そもそもEPSは、非力な軽自動車のアイドリング時でも(エンストすることなく)ステアリング操作を軽くするために考え出されたものでした。

モーターが直接ステアリングのギアボックスを回すため、構造は簡単になって軽量化にも貢献しますが、油圧のような柔軟さを得るのは難しく、当初のEPS搭載車はステアリングを操舵するフィーリングやアシストが自然な感じではない車種も少なくありませんでした。

しかし走行性能や走りのフィールにうるさい欧州メーカーもEPSを使うようになって、日本のステアリング系サプライヤーのノウハウも大きく進歩しました。

コラムアシスト式EPSの仕組み

コラムアシスト式EPSの仕組み

EPSと一口にいっても、車体の大きさや重さなどで操舵に必要な軸力も異なるため、車格に応じて3種類の構造を使い分けています。中でも軽自動車からミドルクラスの乗用車までと、一番幅広い車種に使われるコラムマウント式のEPSは日本のステアリングメーカー、ジェイテクトが世界でもシェア1位を誇っています。海外でも日本の自動車メーカーの生産拠点だけでなく、欧州や北米の自動車メーカーにも供給するほど日本の部品メーカーは高く評価されているのです。

ステアリング操作をサポートするだけでなく、EPSは自動運転や自動駐車の基幹技術にも

前述の通り今では車線からはみ出しそうになると警告してくれるだけでなく、自動的に修正舵を当ててくれるレーンキープアシストは、このEPSがベースになっています。モーターが自動的にステアリングを操作してくれるということは、ステアリングを回さなくてもタイヤは向きを変えてくれる、ということになります。現在のEPSは、ドライバーがステアリングを回そうとした力をトルクセンサーが検知して、その力にアシストする形で軸力を高めて転舵を行なっています。

しかし、モーターだけで転舵できるようになれば、ステアリングからの入力は操舵力そのものではなく、回そうという信号だけでもいいことになりますよね。このように操作を信号化して制御する技術をバイワイヤー(by wire=電動)といいます。ステアリング・バイ・ワイヤーは日産がスカイラインに搭載して、すでに実用化されていますが、今後ますます導入が進むと考えられています。

今やアクセルだけでなくブレーキもドライバーの操作は電気信号となってクルマに伝えられていますが、今後はステアリング操作もこのように電気信号となってクルマを動かすようになっていくでしょう。

ステアリング・バイ・ワイヤーを採用したスポーツカーの試作車(ホンダ)

ステアリング・バイ・ワイヤーを採用したスポーツカーの試作車(ホンダ)

余談ですが、ステアリング・バイ・ワイヤーは状況に応じてステアリング舵角の調整(例えば高速道路では舵角を小さめに、駐車場では舵角を大きめに)を行ったり、路面からの衝撃を吸収できるといったメリットがありますが、それだけではありません。
現時点では、バイワイヤー機構のシステムがダウンしたときのために、機械的にステアリング系統がつながるしくみも盛り込まれていますが、開発が進めばエンジンルーム内にステアリング系の部品を通す必要がなくなるので車体の軽量化に貢献するだけでなく、エンジンルームのレイアウトの自由度やダッシュボードのデザイン性などが向上するというメリットもあります。

こうした技術は、そもそも機体が大きいために操縦士が直接動かすことができない航空機で開発されたもので、そこからクルマへと導入されました。そのため安全上からもトラックやバスにもレーンキープアシストの導入を望みたいところですが、タイヤが大きく軸重も重いためにEPSはまだ実現できていないので、レーンキープアシストの導入は当分先のことになりそうです。

このようにレーンキープアシストは、便利な機能ではありますが、都市高速のようにカーブが多く道路の幅が狭いところでは、スムーズに走ろうと道路の形状よりも緩やかに曲がろうとすると警告したりステアリングを補正しようとすることもあります。こういうときなどはちょっと煩わしさを感じさせてしまう部分もまだあります(車種によっては制御のレベルを調整可能です)。

EPSがそうであったように、最新の電子制御技術は、導入初期はスムーズな動きやシステムの信頼性などに問題を抱えている場合が少なくありません。自動運転の開発も、まさにそういった段階にある技術だといっていいと思います。だから個人的にはレベル4といわれる完全自動運転を実現して市販車に搭載されるまで、中途半端な機能や精度の状態で量産車に搭載すべきではないのでは? とも思っています。

レーンキープアシストとACCを組み合せたPRO PILOT動作時の様子(日産セレナ)

レーンキープアシストとACCを組み合せたPRO PILOT動作時の様子(日産セレナ)

システムの未熟さだけが問題なのではありません。
道路インフラが自動運転を想定したものではないため、高速道路でも車線のペイントが突然無くなっていたり、古いペイントと新しいペイントが混在して、コンピュータを惑わせるような環境であることも、自動運転の作動を不安定なものとしてしまいます。

それに人間の感覚がまだ自動運転に慣れていない、という問題もあります。長時間、運転操作をしていないと、自分がドライバーであるという意識が希薄になってしまう恐れがあるのです。私自身、渋滞でACCを利用して長時間走行していると、自分が運転していたことを忘れそうになったことがあるほどです。

このところ急速に増えてきたインテリジェントパーキングアシスト(駐車支援システム)もEPSが不可欠な装備です。
駐車が苦手なドライバーにとって、自動的に駐車スペースにクルマが走っていってくれるのは便利です。けれども左右に他人のクルマが止まっているスペースでは、車両感覚を掴んでいないドライバーは「ぶつかりそうで怖い」と思ってしまうこともあります。実際に街で使われる機会はあまりありませんでしたが、今後は徐々に利用するユーザーも増えていくでしょう。

自動運転や自動駐車において、ステアリングの制御は不可欠な機能。今後、EVや燃料電池車ばかりになったとしても操舵系は必要な機構です。将来は丸いステアリングホイールではなく、操縦桿のようなスティック型やM字型のステアリングが登場するかも知れませんね。

次回は死角を補完する運転支援システムを中心にお話しましょう。

※ 本記事は著者個人の見解・意見によるものです。

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※1 大手損害保険会社(3社)から切替えた当社ご契約者アンケートより算出。(回答数:1,829件/集計期間:2018年1月-2018年8月)お客さまの申告による、加入中の保険会社から提示された継続保険料と当社契約保険料の差額であり、当社商品・補償内容が前契約保険会社と異なるケースも含まれます。

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