高齢ドライバーの増加にともない、高齢者の交通事故も大きな社会問題になっています。
大きく期待されるのがドライバーの安全運転をサポートするADAS、先進運転システムのさらなる実用化です。
本記事では、これからの車社会を支えるADASについて、どのような機能があるのか、自動運転との違いも交えてご説明します。
ADAS とは「Advanced Driving Assistant System」の略称です。
読み方は「エーダス」、自動ブレーキ装置や急発進防止装置などを含む先進運転支援システムのことです。
ドライバーは車を運転しているときは前方だけでなく、常に周囲にも目や耳を使って状況把握をし、安全運転に努める必要があります。
しかし、死角がどうしてもできてしまうなど人間の認知能力には限界があります。
人間の認知能力を補うための、総合的な運転支援システムがADASです。
たとえば、車両に搭載されたカメラやセンサーが周囲の状況を迅速かつ正確に把握し、危険があれば素早くドライバーに通知したり、自動車の動きを制御したりと、さまざまなサポートをドライバーに対して行います。
このように、ドライバーの安全な運転を支援することを目的とするADASは、最新の車の多くにすでに設置されています。
日本におけるADASは1991年、国土交通省のASV(先進安全自動車)推進計画が始まりです。
そして産学官連携のもと、ASVの開発・実用化・普及を促進するため、技術検証を進めてきました。
このASV推進計画の活動を通して自動車はかつてない変革を遂げ、レーダーが前方の衝突物を検知し知らせる衝突被害軽減ブレーキなどの機能が実用化されるようになりました。
なおASV(先進安全自動車)推進計画第6期となる2016年度から2020年度は、「自動運転の実現にむけたASVの推進」として、自動車の自動運転化も視野に入れた活動が進められています。
ADASの運転支援機能は先にあげた衝突被害軽減ブレーキをはじめ、実に多岐にわたります。ここではその一端をご紹介します。
運転手が設定した速度での定速走行を実現しドライバーの負荷を軽減します。さらに速度を加速したり減速したりして、前方車との車間距離を維持しながら走行することも可能です。
高速道路などで、ドライバーがウィンカーを出さずに車線を逸脱したり車線を逸脱したりする可能性をフロント部分のカメラが察知し、警報音やハンドル振動、表示などで危険性を知らせます。
前方の障害物と衝突する危険性をレーダーが検知し、運転手へ警告します。
万が一ドライバーが適切に車を減速できない場合は、自動ブレーキ制御で衝突事故を回避したり衝突による被害を軽減したりします。
夜間や雨天時など周囲が良く見えない状況のときに、周囲の人の熱源を赤外線カメラが察知し、ディスプレイに表示し事故を防ぎます。
走行中にフロントに設置されたカメラが交通標識を認識し、車内のディスプレイに表示することで交通標識の見落としを防止し安全運転をサポートします。
走行中、ドライバーからは死角となりがちな斜め後方から接近する車両をレーダーが検知し、LEDの点灯で警告を促します。
この状態でドライバーが方向指示器を操作すると、警告音で注意を促す機能です。
駐車場からバックで出るときに、左右の車両と接触の危険性があると、警報音などでドライバーに注意を促します。
車の駐車スペースを確認し、スムーズかつ安全に駐車ができるようにハンドル操作をアシストする機能を持つシステムです。
バック駐車、縦列駐車もスムーズにできます。
ステアリングやアクセルなどが操作されていない状況が続いたり、車が不自然な動きをしたとき警報音を発したりして注意喚起します。
車内カメラが、ドライバーの表情から眠気や居眠り運転などを感知した場合も、警報音などで警告します。
誤ってアクセルペダルを踏み込んだときに、障害物を検知したセンサーにより警報音などで危険を知らせる機能です。
急発進を抑えたり、自動的にブレーキが制御されるものもあります。
私たちの暮らしがIoT(Internet of Things)と呼ばれる技術により大きく変わってきたように、車もインターネットを通じて、さまざまなインフラやサービスとつながることで大きく変わる可能性があります。
車同士がそれぞれの位置、速度などの情報を送受信し、見通しの悪い交差点などでの衝突事故を未然に防ぐシステムです。
道路上に路側機を設置してドライバーに安全情報を送信するシステムです。
路側機を媒介に車同士が情報通信を行い、事故を未然に防いだり、路側機自体が周囲の車や人の状況を、通信システムを持つ車に送信し、事故を未然に防いだりします。
ADASは、自動車メーカーはもちろん各部品メーカーも最新技術の研究開発に注力しています。その一部をご紹介します。
ホンダの運転支援システムは「Honda SENSING」という名称でホンダ車の多くに搭載されています。ミリ波レーダーと単眼カメラが特徴で、自動ブレーキをはじめ衝突回避のためのさまざまな機能で事故を未然に防いでくれます。
トヨタの運転支援システムは「Toyota Safety Sense」という名称でトヨタの車に搭載されています。
日本で行われる予防安全性アセスメント「NCAP予防安全性能評価」でも、「Toyota Safety Sense」搭載車は被害軽減ブレーキ(対歩行者、対車両)、車線はみ出し警報、後方情報提供装置などの予防安全評価の他に、衝突安全性能評価においても高い評価を受けています。
近年のADASは画像解析技術により車両、歩行者、運転手、道路標識などさまざまな対象物に対する検知・認識が行われています。
同社においても画像認識プロセッサ Visconti™ファミリーが、1台から4台のカメラ入力画像を瞬時に管理することで、車両検出衝突警報・歩行者検出衝突警報・車線検出逸脱警報・交通標識認識・赤信号認識など、ADASで求められるさまざまなニーズに対応しています。
近年は交通事故による死亡者数は減少傾向にあり、内閣府の発表では平成30年中の交通事故死者数は3,532人です。
昭和45年と比較して約5分の1、平成の30年間でも約3分の1以上減少しています。
交通事故による死亡者数の減少は、飲酒運転の厳罰化やシートベルト着用の義務化などさまざまな要因が考えられますが、ADASによって事故はどの程度減少したのでしょうか。
スバルの調査では、運転支援システムであるアイサイト搭載車25万台(2010年から2015年販売)と5万台の非搭載車の事故情報を比較すると1万台当たりの事故発生件数は61%減、追突事故は84%減にもなったといいます。
トヨタによる算出では、自動ブレーキとパーキングサポートブレーキで、追突事故は9割低減できるといいます。
また、現在乗っている車に後付けできる「踏み間違い加速抑制システム」を装着する車も増えています。
このようにADASの装備や技術の進化により、さらなる交通事故の減少が期待されます。
1990年代に国土交通省が、ASV(先進安全自動車)を推進し始めて約30年が経ちます。
ADAS(先進運転支援システム)は大きく進化を遂げ、自動運転という用語も社会で使われるようになってきました。
そのためADASを自動運転だと誤解している人もいらっしゃると思います。
しかしADASはあくまで運転を支援する車で運転の主体、対応はあくまでもドライバーです。
「運転操作のすべてを自動化する技術を搭載した」自動運転車とは異なるため、国土交通省は運転自動化技術レベル1、レベル2の車については「運転支援/運転支援車」と定義づけました。
衝突被害軽減ブレーキや、アダプティブクルーズコントロールなど現在の運転支援車は、あくまでもドライバーのサポートです。ドライバーに代わってシステムですべての運転を行うものではありません。
運転支援システムの機能を正しく理解し、ドライバーが主体的に安全運転を行いましょう。
最後に、車を所有されている方は、チューリッヒの自動車保険をご検討ください。
万が一の車の事故・故障・トラブルに備えておくと安心です。
※記載の情報は、2019年11月時点の内容です。
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