更新日:2024年5月24日
公開日:2022年9月3日
街でよく見かける3輪のバイクとしては、デリバリー用の屋根付き3輪スクーターがありますが、他にも3輪バイクには構造的にさまざまな種類があります。3輪バイクの法的区分や必要な運転免許についてご説明します。
3輪バイクとは、3つのタイヤで構成されたバイクのことです。3輪バイクには、デリバリー業務などに使われる屋根付きのものやトライク、サイドカーなどがあります。二輪自動車の扱いとなる3輪バイクは、車体を傾けてカーブを曲がる際にも安定性が高く、初心者や高齢の方でも運転しやすいという魅力があります。
また、3輪による安定性の高さから、強風にも強くふらつきにくく、滑りやすい路面などでも転倒の危険性が少ないのもメリットです。
3輪バイクは法的に2つの区分があります。道路運送車両法による車両区分と、運転免許や交通法規などを記している道路交通法による車両区分のそれぞれ定義が異なります。
道路運送車両法上の車両区分 | 道交法の車両区分 | ||
---|---|---|---|
区分 | 免許 | ||
二輪自動車 | 二輪の自動車 | 大型自動二輪車または普通自動二輪車 | 大自二・普自二 |
特定二輪車(保細第2条の2) (以下の条件をすべて満たす車両)
| 特定大型自動二輪車または特定普通自動二輪車 | 大自二・普自二 | |
側車付二輪車 |
|
大型自動二輪車又は普通自動二輪車 | 大自二・普自二 |
トライク(保細※第2条第4号ロ) (以下の条件をすべて満たす車両)
|
普通自動車 | 普通免許 | |
屋根付きの原付 / スクーター |
第一種原動機付自転車(原付第一種)(道路運送車両法施行規則)
|
原動機付自転車(原付) | 原付免許 |
※出典:愛知県警察公式サイト「一部の三輪に必要な免許」
※出典:警察庁公式サイト「三輪の自動車(三輪バイク)の区分の見直しについて」
※2024年5月執筆現在
道路運送車両法の車両区分では、デリバリー業務などで使われる3輪バイクは「二輪自動車(特定二輪車)」、サイドカーとトライクは「側車付二輪車」に分類されます。
特定二輪車として区分される3輪バイクの条件は以下となります。
側車付二輪車として区分される3輪バイクの条件は以下となります。
サイドカーは、2輪のバイクに人や荷物をのせるための側車を取り付けたものです。
サイドカーは、道路運送車両の保安基準の細目を定める告示【2005.06.01】によって、「直進状態において、同一直線上にある2個の車輪及びその側方に配置された1個(複輪を含む。)又は2個(二輪自動車の片側の側方に備えたものに限る。)の車輪(以下「側車輪」という。)を備えた自動車」と定義されています。
トライクは道路運送車両の保安基準の細目を定める告示【2005.06.01】によって、「またがり式の座席、ハンドルバー方式のかじ取装置及び3個の車輪を備え、かつ運転者席の側方が開放された自動車」と定義されています。
※ 保細とは道路運送車両の保安基準の細目を定める告示のこと
デリバリー業務などで使われる屋根付きの原付やスクーターなど、排気量が50ccの3輪車は、道路運送車両法では車輪の数の制限がない「第一種原動機付自転車」に分類されます。
3輪バイクの条件を満たし、車体寸法が全長2.5m以下、全幅1.3m以下、全高2.0m以下で排気量50cc以下であれば、屋根付きの原付やスクーターも、3輪の原付となります。
道路交通法では、その排気量によって、特定二輪車は「特定大型自動二輪車」と「特定普通自動二輪車」に分けられます。
また、側車付二輪車のうちサイドカーは排気量によって「大型自動二輪車」と「普通自動二輪車」、トライクは「普通自動車」に分けられます。
少々ややこしいかもしれませんが、道路運送車両法は車体の仕様に対する規則で、道路交通法とは道路を走るためのルールです。
3輪バイク(特定二輪車)は、車輪及び車体の一部または全部を傾斜して旋回する構造を有します。
そのため、「その運転に係る特性が二輪の自動車の運転に係る走行の特性に類似するもの」として、2009年に内閣府告示により、それまでのトライク(要普通自動車免許)としての扱いから「特定二輪車」としての扱いに変わりました。
排気量が50cc超400cc以下の特定普通自動二輪車は、普通二輪免許が必要となります。
さらに排気量400cc超の特定大型自動二輪車は、大型二輪免許が必要となります。
また、ATの3輪バイクに乗る場合は、普通二輪免許・大型二輪免許のAT限定で運転が可能となります。
排気量が50cc超125cc以下の3輪バイクに関しては、小型限定普通二輪免許または小型限定普通二輪免許(AT限定)で運転できます。
排気量 | 車両区分 | 免許種類 |
---|---|---|
50cc超〜125cc以下 | 3輪バイク(特定二輪車) | 小型限定普通二輪免許(含AT限定) |
50cc超〜400cc以下 | 特定普通自動二輪車 | 普通二輪免許(含AT限定) |
400cc超〜 | 特定大型自動二輪車 | 大型二輪免許(含AT限定) |
※2024年5月現在
二輪車同様、125cc超の3輪バイクであれば高速道路の走行が可能です。その際の法定最高速度は時速100kmと定められています。
トライクは、道路交通法の車両区分では普通自動車に区分されるため、運転するには普通自動車免許が必要です。また、高速道路を走行する際の法定最高速度は時速80kmです。
50cc以下の3輪バイクは、原付免許があれば運転できます。普通自動車免許を所持していれば原付を運転できるので、あらためて免許を取得する必要はありません。法定最高速度は時速30kmとなり、二段階右折などの原付特有のルールに則って運転する必要があります。
二輪車として扱われる3輪バイクは、交通法規も二輪車のルールが適用されます。そのため運転者と同乗者はともに、通常のバイク同様、ヘルメットの装着が義務付けられます。
一方、道路交通法上の車両区分で普通自動車として扱われるトライクは、ヘルメットの装着が義務付けられていません。しかし、トライクを運転する場合も転倒などの事故に備え、バイクと同等の安全装備を身に着けるようにしましょう。税金は原付を含め、3輪バイクは二輪車の税額と同額となります。
トライクは、道路交通法上はオープンカーと同じ扱いなのです。しかしカーブや交差点では不安定になりやすい乗り物なので、運転には高いスキルが必要です。安全のためにヘルメットの装着を徹底しましょう。
排気量 | 50cc以下 | 50cc超〜90cc以下 | 90cc超〜125cc以下 | 125cc超〜250cc以下 | 250cc超〜400cc以下 | 400cc超〜 |
---|---|---|---|---|---|---|
道路運送車両法 | 第一種原動機付自転車 | 特定二輪車または側車付二輪車 | ||||
軽自動車税 | 2,000円 | 2,000円 | 2,400円 | 3,600円 | 6,000円 | |
(トライクの場合) | 3,600円 | |||||
道路交通法 | 原動機付自転車(原付) | ・特定普通自動二輪車 ・普通自動二輪車(サイドカー) ・普通自動車(トライク) |
・特定大型自動二輪車 ・大型自動二輪車 ・普通自動車(トライク) |
|||
運転免許 | 原付免許 | - | ||||
普通自動車免許 | - | |||||
小型限定普通二輪免許(含AT限定) | - | - | - | |||
普通二輪免許(含AT限定) | - | |||||
大型二輪免許(含AT限定) | ||||||
トライクの場合:普通自動車免許 |
3輪バイクはカーブで車体が傾くため、バイクよりも安定しているメリットがあります。トライクは高速道路の走行などで安定した乗り物ですが、カーブや交差点を曲がる際には特性を理解した運転操作が必要です。3輪バイクやトライクなどは、道路運送車両法と道路交通法で区分が異なるため、運転に必要となる免許や高速道路の走行条件などを確認しましょう。
運転する際には必要な免許をしっかりと確認し、ヘルメットなどの安全装備を身に着けましょう。
※記載の情報は、2024年5月24日時点の内容です。
1965年生まれ。芝浦工業大学工学部機械工学科卒。トヨタ直営販社の営業マン、輸入車専門誌の編集者を経て自動車ジャーナリストとして独立。さまざまな自動車雑誌の他、エンジニア向けのウェブメディアなどに寄稿している。
近著に『電気自動車用パワーユニットの必須知識』(日刊工業新聞社)、『エコカー技術の最前線』(SBクリエイティブ)、『図解カーメカニズム基礎講座パワートレーン編』(日経BP社)がある。
日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員
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