エンストとは「エンジンストール」の略で、自動車のエンジンが意図せずに停止してしまった状態のことを指します。「ストール(stall)」とは失速、停止という意味です。まれに「エンジンストップ」と認識されることもありますが、こちらは和製英語です。
エンストはクラッチを持つマニュアル(MT)車独特の現象と思われがちですが、オートマチック(AT)車でも起こりうることです。信号待ちや走行中のエンストは大事故に繋がる可能性があります。エンストの原因と対処法を正しく知り、そのような危険性を減らしていきましょう。
エンストにはいくつかの原因が存在します。そのなかで最もわかりやすいのは、ガソリンがなくなってしまった(燃料切れを起こした)ことです。燃料計が正しく作動している車であれば、メーターを目視することで確認できますので判断は比較的容易だといえます。
ガス欠以外でエンストの原因を探る場合、手がかりとなるのは車に発生している症状です。エンジンが止まる前後でどのような現象が起きていたのかを、注意深く観察してみてください。
スパークプラグやプラグコードなど点火系のトラブルが考えられます。
燃料ポンプの故障や、燃料フィルターの目詰まりなど、燃料系の問題が発生している可能性があります。
カーブや坂の頂上付近では、車体が大きく傾くことが多く、ガソリンタンク内部の液面も傾きます。通常どのような傾きにおいても均等に燃料を送る役目をしているのは燃料ポンプと呼ばれる部品です。車の傾きによってエンストの症状が発生する場合は、この燃料ポンプが故障を起こしている可能性があります。
エンジン内部へ噴射されるガソリンの量は、その時々に応じて調整されています。この噴射量をコントロールするのが燃料センサーの役目で、この系統に属するパーツが故障すると、アクセルオンでのエンストが発生しやすくなります。
物が燃えるためには空気が必要です。車のエンジンも同じですので、ガソリンを燃やすために空気を取り入れる機構が作動しています。スロットルバルブやバキュームセンサーなどがその代表的なもので、アクセルオフでのエンストはこれらに原因がある可能性があります。
掃除機の吸入口を細めたときのような音です。この音が聞こえている場合はエア漏れが疑われます。経年劣化によってエンジン周囲のゴム製パイプやホースにひび割れが発生しているかもしれません。
MT車にはエンジンの動力伝達を手動で管理するクラッチ機構があるため、操作を失敗するとエンストが起きることがあります。ではクラッチのないAT車にはエンストがないかというと、そうではありません。
AT車は「進行方向とギアポジションが合っていない」ときにエンストする可能性がある、という特性を持っています。この現象が顕著に発生しやすいのが坂道です。急坂などを上っているとき、何らかの理由で車が下がってしまうことがあります。
逆に、車の先頭が坂道の下り方向を向いている状態で、上り方向へバックをしているにもかかわらず重力に負けてしまうことも考えられます。
前者はDレンジで後ろ方向へ、後者はRレンジで前へ進んでしまう例です。このような場合はAT車でもエンストが起こりやすくなりますので、坂道での低速走行時、もしくは停車からの発進時は注意が必要です。
ここまでご説明したエンストの原因の他にも、次のようなものが考えられます。
プッシュボタンでエンジンをかけるタイプの車では、エンストではなく単にエンジンを始動するのを忘れていたという勘違いが近年増えているようです。ドアの解錠からエンジンスタートまで、キーを差し込む必要がないために「エンジンをかける」という動作を忘れるケースがあるのです。車種によってはボタンを押してエンジンをかけていなくてもカーナビなどが点灯するため、ナビがついている=エンジンがかかった、と誤認しやすいので気をつけましょう。
ハイブリッド車の場合はさらに気をつけたいところです。これらの車は、エンジンの力を必要と判断するまでモーターで走行しています。「エンジンが動いていない」という状態があることを意識しておくことが大切です。
もしエンストしてしまっても、落ち着いて対処しましょう。パニックにならないことが最も大切です。
停車中に発生した場合はパーキングブレーキを確実にかけ、メーターを確認してください。警告灯がすべてついているようならエンジンが止まっています。タコメーター(回転計)の針がゼロを指している場合も同様です。エンジンが止まってもバッテリーには異常がなく、カーステレオは動作していることが多くあります。ハザードランプや、三角表示版を使って周囲に危険を知らせましょう。
深刻なトラブルでなければ、エンジンを再始動してみます。もしエンジンがかからない場合はロードサービスなどに連絡します。
走行中にエンストが発生した場合は、迅速で適切な判断が求められます。全身の力を込めてブレーキを踏み続けてください。このとき、ブレーキを踏む力を絶対に抜いてはいけません。正常に車が動いているときには、運転者が軽い力でブレーキをかけられるように補助するシステムが働いています。しかし、エンジンが止まるとこのシステムがストップするため、ブレーキが非常に効きづらくなります。普段ブレーキを踏んでいる力では足りなくなるのです。また、一旦踏んだブレーキを緩めると、減速や停車がさらに難しくなってしまいます。
ハンドル操作にも普段と違った影響が出ます。パワーステアリングと呼ばれる補助機構によっていつもは軽く回せるハンドルですが、エンストすると極端に重くなることがあり、普段のようなやり方ではハンドルは回りません。走行中のエンストでは、とにかくブレーキが先だと覚えておきましょう。そのうえで車の速度や状況に余裕があるようでしたら、ハンドル操作を行い、停止させます。
同乗者がいる場合は協力し合うことが重要です。自分と他者の安全を確保するため、ハザードランプを点灯させて後続車に異常を知らせることも忘れないでください。
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