任意保険(自動車保険)はどうして必要なのか
楽しいカーライフというのは、実はいつ崩れてもおかしくない非常に脆い土台の上に立っています。もちろん、事故を起こさないように注意して運転するのがドライバーの責任ですが、それでもクルマを運転している限り、事故を起こす、事故をもらうリスクをゼロにはできないからです。
不幸にも事故を起こしてしまった際に頼りになるのが「自動車保険」という制度です。いや、頼りになるなんてレベルではなく、もし保険制度がなかったら僕は絶対に運転しないだろうとさえ思います。
判例を見ると、死亡や重度後遺障害での賠償額が1億円を超えるようなケースは珍しくありません。
<年代別の死亡・後遺障害における総損害額の例>
年代 | 扶養家族 | 死亡の場合 | 重度後遺障害の場合 |
---|---|---|---|
25歳 年収360万円 | 有(妻) | 5,500万円 | 1億1,000万円 |
無 | 5,000万円 | ||
35歳 年収500万円 | 有(妻、子1人) | 7,000万円 | 1億2,000万円 |
無 | 6,000万円 | ||
45歳 年収600万円 | 有(妻、子2人) | 7,500万円 | 1億2,000万円 |
無 | 6,000万円 | ||
55歳 年収800万円 | 有(妻、子2人) | 7,000万円 | 1億1,000万円 |
無 | 5,500万円 |
参考:年代別の死亡・後遺障害における総損害額(※1)の例
つまり、自賠責保険から最高3,000万円(後遺障害の場合は最高4,000万円)が支払われても、残りの数千万円は自腹で支払わなければならないということです。
金融資産が何億円もあるなら任意保険に入らなくても大丈夫ですが、普通の人にとってそれだけの金額を支払うのは難しいでしょう。となれば自己負担分を一生かけて少しずつ支払い続けるか、自己破産に繋がることも考えられます。
それは加害者にとっても被害者やその家族にとっても実に不幸なこと。一生を棒に振るような不幸に陥るリスクを減らしてくれるのが任意保険なのです。
僕はモータージャーナリストという職業を選ぶほどクルマが好きですし、ドライブも好きですが、だからといって人生をふいにするほどのリスクを抱えてまでクルマと関わろうとは思いません。任意保険があるからこそクルマ生活は成り立つ、というのが僕の考えです。
しかし、任意保険に加入せずに走っているクルマは意外に多いのが実情です。自動車保険には、強制的に加入する自賠責保険(自動車損害賠償保険)と、それに上乗せするかたちで加入する任意保険の2種類があり、自賠責保険への加入は車検を通すのに必要なので、無車検車を運転しているようなタチの悪い人でない限り基本的には加入しています。けれど上述したように自賠責保険ではカバーできない損害賠償額が発生しているのが現実なのです。
では、任意保険に加入しているクルマの割合はどの程度なのでしょうか。
調べてみてあ然としました。およそ12%が任意保険もしくは自動車共済に加入していないのです。つまり、街中を走っているクルマのおよそ10台に1台は任意保険に入っていないということになります。
これは恐ろしいことです。
出典:「自動車保険の概況」損害保険料率算出機構
たしかに任意保険は「任意」ですから、加入するかしないかは個人の自由です。加入しなくても法的には何ら問題はありません。ですが、さんざん書いてきたように、任意保険なくして安心なドライブなどできないのが現実。保険に加入していない人たちはいったいどのようにしてこの現実と向き合っているのでしょう。理解に苦しみます。
もしかしたら、自分は絶対に事故を起こさないと思っているのかもしれません。近所にしか行かないから、と思っているのかもしれません。でも事故を起こそうと思って起こす人なんていないし、自宅の近くでも事故は起きるのです。安全運転をしているつもりでも起きてしまうのが事故なのですから、それに備えておくのがドライバーの常識でしょう。とはいえ、「常識」という曖昧なものをすべての人に求めるのは難しいのかもしれません。そう考えると、対人賠償保険は無制限の賠償額を法律で義務化するのが本来は理想だと思うのです。
車両保険は任意でいいと思います。対物賠償保険も、場合によっては賠償金が超高額になる可能性もありますが、百歩譲って任意でいいかもしれません。しかし、対人賠償を自賠責保険の3,000万円任せにするのはリスクが大きすぎます。
もちろん、加入が義務になるとクルマの保有コストは上がりますが、クルマを運転するという行為は、事故の加害者と被害者に大きな不幸をもたらすリスクをはらんでいるということを忘れてはいけません。
今回僕が書いたのは理想論であって、今すぐどうにかなるものではありません。そこで今われわれができる対策が、任意保険に入っていないクルマが現に存在するという前提に立ったうえでの自己防衛です。
その際に役立つのが、通常任意保険に自動付帯される「無保険車傷害特約」や、補償をさらに手厚くした「人身傷害保険」です。相手に支払い能力がなくても自分の保険会社から保険金を受け取れるので、無保険車や相手を特定できない事故の際に自分を守ってくれます。
無保険車傷害特約や人身傷害保険のコストは自分が支払っている保険料から捻出されているわけですから、煎じ詰めれば「なぜ任意保険を支払っていない人の分まで自分の費用で支払わなければならないのか」という理不尽さを感じる人がいるかもしれませんが、それも安心と引き換えなのです。
最後に、僕が加入している任意保険の内容を書いておきます。
対人、対物補償は無制限。搭乗者傷害保険1,000万円、人身傷害保険一般タイプ1億円、車両保険一般タイプ、弁護士費用補償特約あり。
保険料というと価格の安さに目が行きがちですが、保険料を安く済ますのではなく、安い価格で入れる保険会社を使い、浮いたお金を手厚い補償内容に使うことをおすすめします。
※ 本記事は著者個人の見解・意見によるものです。
最後に、車を所有されている方は、チューリッヒの自動車保険をご検討ください。
万が一の車の事故・故障・トラブルに備えておくと安心です。
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