年に一度、自動車保険(任意保険)の更新がやってきます。「いまの保険料やサービス内容でいいのかな」「いま加入しているものより保険料は安く、補償が充実しているものはないだろうか」などと迷いはするものの、「前回と同じでいいや」と、消極的に継続している人が多いのではないでしょうか。この機会に、通販型(ダイレクト)自動車保険と、代理店型自動車保険の違いと、そのメリット・デメリットについて考えてみましょう。
自動車保険には自賠責保険と任意保険の2つがあり、自賠責保険の上乗せとして任意保険がある「2階建て構造」となっています。これは、事故の補償や被害者への補償について、自賠責保険では限界があるため、あらゆる事態を想定した任意保険にも加入するという行動が、ごく一般的になっているからです。
自賠責保険(自動車損害賠償責任保険)は、原動機付自転車を含むすべての自動車に加入が義務づけられている保険で、任意保険に対して「強制保険」ともいわれています。
加入していないと車検が受けられません。また自賠責保険に加入していない自動車や原動機付き自転車を運転した場合は、1年以下の懲役または50万円以下の罰金に処せられます。さらに運転免許証の違反点数が6点加算されるために前歴がなくても30日の免許停止処分になり、前歴がある場合はこれで免許取り消しにもなりうる重い違反とされています。
自賠責保険は、もともと無保険の車が起こした交通事故の被害者を救済するため始まった国の制度で、各損害保険会社と共済(県民共済など)が主体となっていますが、保険料は国が決めており、支払われた保険料は国の特別会計に繰り入れられ一本化されています。
事故の被害者が一定の基準を満たしていれば、支払請求により一律に支払いが行われます。その一方で、死亡事故の被害者には3,000万円が限度、負傷者には120万円が限度でしか支払われず、また物損事故や自分に対しては、死亡した場合でも保険金は支払われません。
自賠責保険 | 自動車保険(任意保険) | ||
---|---|---|---|
相手方への補償 | 対人賠償 | △
限度額
|
○ |
対物賠償 | × | ○ | |
自分、搭乗者への補償 | 人身傷害 | × | ○ |
搭乗者傷害 | × | ○ | |
車の補償 | 車両保険 | × | ○ |
人を死亡させたり、ケガをさせてしまったりなどの事故を起こしてしまった場合の損害賠償額は、これまでの裁判所の判断がひとつの根拠になります。
裁判では治療代だけでなく、ケガや死亡による逸失利益(その事故がなければ、被害者が得ることができたと考えられる利益)までが認められます。そのため、3,000万円以上の高額の認定が行われる場合もありますし、億の単位となることも珍しくはありません。自賠責保険以上の損害賠償額は当然自己負担となります。また、自賠責保険がカバーしていない運転者自らの死亡あるいは傷害、そして自動車の損傷を修理するための補償も必要です。これらをカバーするのが「任意保険」であり、事実上加入することが必要だ、という意味がおわかりいただけるでしょう。
みなさんがテレビコマーシャルなどをきっかけとして「保険選び」について考えるのは、この「任意保険」のことです。
自動車保険の種類は、その性格に合わせて7つあります。まず、これらの種類を一覧にしておきましょう。
【賠償責任保険】
他人や他人の物を傷つけた場合の賠償責任に備える
【傷害保険】
自分や同乗者が事故で死亡、ケガをしたときに備える
【車両保険】
自分の車が破損した際に備える
このうち1・2の「賠償責任保険」については、いま触れたとおり、たいへん高額な損害賠償を請求される可能性があるので、「無制限」とするのが一般的です。3〜7の自動車保険の対象や補償金額の限度額を調整可能で、ここの設定しだいで保険料が決まってきます。
このように、任意保険は自賠責保険では足りない補償分をカバーするしくみになっています。保険選びのときは、補償がしっかりしていること、そして保険料の負担が少ないということはもちろん意識されると思いますが、万一のときの事故対応もチェックポイントとしては欠かせません。事故を起こしたとき、保険会社が素早く対応してくれるか、そして、どうしてもストレスのかかる事故の後始末をどうサポートしてくれるか日常生活を続けるうえで、実は大きなポイントです。事故対応力が自動車保険の要といわれるゆえんがここにあります。
それでは、保険の販売形態の違い、次に万一の自動車事故の際の保険会社の対応という角度から、これらのポイントをチェックしていきましょう。
任意保険(以下、「自動車保険」と呼びます)は損害保険会社が販売するものですが、販売スタイルによって代理店型と通販型(ダイレクト)に分かれます。
従来の自動車保険は、損害保険会社が代理店を通じて販売する形態でした。地域に独立した事務所を代理店として構えたり、また、自動車ディーラーや整備工場が代理店となったりして保険を販売する形態がいまでも続いています。1990年代までに自動車を購入された方は、一度はこのような形の自動車保険に加入したことがあるのではないでしょうか。
代理店型のメリットは、担当者が保険を検討するお客様に直接会って、自動車の利用状況や誰が運転するかなどの情報を聞き取り、適切な保険商品を提案できることです。
自動車保険は専門用語や細かい条件などが複雑なため、保険を検討している人が正確に補償内容などを把握するのが難しいということがあります。直接面談して疑問を解消してくれる代理店型は保険に詳しくない人にとっては補償の重複が避けられるなど大きなメリットがあるのです。
そして、万一の事故対応の際には、顔を知っている担当者が対応してくれるといった安心感があります。事故を起こせばどんな人でもパニックになるのは当然予想がつきます。代理店型の保険を選択している人は、緊密な人間関係の中で「任せておけば間違いない」という安心感があると語る人が多いのが特徴です。
一方で、これらのメリットは、どうしても担当者の「人」によってサービスの質が左右されてしまうという側面があります。
さらに、代理店型は保険会社に支払う代理店手数料や人件費や事務所経費など代理店システムを維持するコストがどうしてもかかってしまうため、その分が保険料に上乗せされています。
そのような従来の自動車保険のシステムを抜本的に変えたのが、通販型(ダイレクト)自動車保険です。
通販型(ダイレクト)自動車保険のメリットは、なんといっても保険料の安さにあります。
なぜ、安いのでしょうか。前述したとおり、代理店型のように営業拠点を持たないことから店舗経費、人件費などの固定費を軽減できることが挙げられます。
そしてもう1つは金融自由化を背景とする保険商品の自由化による、リスクを細分化した自動車保険が通販型(ダイレクト)を中心に多様化したことです。
かつて国内の損害保険会社の自動車保険はどこで入ってもほぼ同じという時代がありました。しかし、1996年に金融の規制緩和による金融自由化の時代が訪れ、生命保険会社・損害保険会社の相互参入、外資系の参入、商品の自由化、料率の自由化が始まり、登場したのがリスク細分型自動車保険です。
通販型(ダイレクト)自動車保険では自動車の車種や運転者の年齢を細かく分類するなど、保険設計の前提となるリスクを細かく分けることで、より顧客に合った補償内容を提案することができます。むだのない最適化された保険を提案できることが大きな要因です。
また通販型(ダイレクト)自動車保険の顧客対応は、コールセンターやウェブサイト上で行われます。相談から保険の見積もりまで電話やネット上で行い、万一の事故対応の際も電話でやりとりします。
このような工夫で通販型(ダイレクト)はコストを大幅に下げ、合理的な保険料を実現できているのです。代理店型の自動車保険を契約されている方は、一度ご自身の保険証券をお手元に用意して、通販型(ダイレクト)自動車保険の電話窓口やウェブサイトで見積もりを取ってみてはいかがでしょうか。
初めて通販型(ダイレクト)自動車保険を検討しようという方もおられるでしょう。その際、「保険料が安いのはいいけれど、事故のとききちんと対応してくれるかどうか…」と事故対応を懸念される方もいらっしゃるかもしれません。
事故を起こしてしまい保険会社に連絡すると事故解決まで流れは大きく3つに分かれます。
事故を起こして気が動転し、最初に事故を報告する@の事故受付についてみてみましょう。
代理店型の保険会社でも、通販型(ダイレクト)の保険会社でも、事故受付は電話で受け付けているのが一般的です。そこで事故発生の連絡を受けた保険会社の事故受付担当者が事故の状況を聞き取り、その場で何をすべきかアドバイスをします。この事故受付については代理店型経由でも通販型(ダイレクト)でも変わりません。
代理店型の保険会社に事故連絡をした場合は、保険代理店担当者を経由して事故内容が保険会社の事故受付担当へ連絡されます。
案件は事故受付窓口から、事故担当者に引き継がれます。事故担当者は人身事故や物損事故に関するスペシャリストで、適正な保険金の支払いのための調査や相手方との示談交渉などを行います。
事故現場から戻ってきて、日常の生活に戻りつつある契約者にとっての一番の不安は、次の連絡はいつくるのか、次に何をしたらいいのか、保険金はいつ支払われるのか……など、「今後どうなるのだろう」というところにあるでしょう。
通販型(ダイレクト)自動車保険は、代理店を挟みませんから、事故担当者から直接報告を受け、やりとりを重ねて事故解決へ進んでいきます。事故担当者から進捗状況を直接伝えてもらえるため、伝聞にはない正確性と安心感を得やすいといえます。
代理店型の場合でも代理店担当者が途中経過を報告し、間に入って保険会社の事故対応部門とやりとりを進めてくれます。
代理店型・通販型(ダイレクト)自動車保険のいずれも、人身事故・物損事故のスペシャリストである事故担当者を筆頭に調査や交渉を行い、そのうえで決まった保険金の支払いに至る事故対応のしくみは変わりません。
ご自身がどのようなサポートを望んでいるかによって検討するのがよいでしょう。
チューリッヒの場合は事故対応のあらゆる状況について正確に情報を伝えながら、最初から最後まで1人の担当者が責任を持つ「1事故1担当者制」を堅持しています。
「交通事故には、刑事的責任、民事的責任、行政的責任の3つがある」と、自動車教習所で教わったことをご記憶でしょうか。刑事的責任・行政的責任については、よほど当事者の過失が双方にあり、微妙な問題を含むものを除いては、警察官の現場での実況見分調書作成によって決まり、それによって点数や免停、罰金などの処分も自動的に決まります。すなわち、刑事・行政分野については、ほとんど時間をおかずにその全容が見えることになります。
一方、民事的責任については、相手のあることなので、示談交渉が長引くこともあります。歴史の長い代理店型自動車保険の方が、交渉能力に優れているのではないか、という意見もあるようです。
しかし、保険会社の交渉は、基本的に過去の裁判例(交通判例と呼ばれています)など先例に基づいて行われるので、その解決の基本線に、代理店型と通販型(ダイレクト)の違いはありません。
また、代理店型・通販型(ダイレクト)を問わず、重要なのは、「交渉は勝ち負けではなく、いかに適切な判断をするか」ということです。個別の事情として、相手方のケガの状況やその他の事情などを踏まえ、保険の契約者の意思をくんでの交渉が行われる場合はあります。たとえば、こちらはまだ主張を続けられるが、解決の時期を優先するなど保険の契約者側のメリットとなるのなら、早期解決を目指すこともありうるし、その逆もありうるということです。適正の範囲でということを常に考えながら、柔軟な対応を行うことがあるべき姿、という認識が基本です。
さらに、損傷した自動車の修理費用についても、車両保険での支払額を確定させる必要があります。代理店型、通販型(ダイレクト)どちらも、専門家の「技術アジャスター」が修理工場に入る車の損害をチェックします。損傷箇所の状態を確かめて、事故担当者にフィードバックします。
アジャスターとは日本損害保険協会に加盟している「損害調査業務」を行う人のことです。自動車の保険事故が起きたとき、損害を受けた車両の事故原因、状況、損害額を調査します。修理工場では損害を受けた車両を元通りにするために修理工場から出された見積もり金額が、損害額として正しいのかを査定するのがアジャスターの役割です。
車両保険を使って損害を受けた車両を修理するのであれば、代理店型、通販型(ダイレクト)どちらにおいてもスムーズに修理へと進みます。代理店型も通販型も業務上多くの事故車の修理を扱っていて、円滑な事故解決のために整備工場と連携しているからです。
保険料が安い通販型(ダイレクト)自動車保険は代理店型の自動車保険の補償に劣るのではないかと心配になる方がいらっしゃいますが、通販型(ダイレクト)は店舗経費や代理店手数料などのコストを削減することで合理的な保険料を可能にしています。
また、通販型(ダイレクト)自動車保険を扱っている保険会社の多くで「インターネット割引」を利用できますので、保険料が安くなります。
ですから保険料が安い通販型(ダイレクト)が代理店型より補償が劣るというわけではありません。
また、保険料が安くなった分、補償を手厚くするという選択肢が増えるのも通販型(ダイレクト)の特長です。
ただし、加入手続きを自分自身で行う通販型(ダイレクト)を選ぶ際には、自分にとって必要な補償は何かということを事前に情報収集、検討する時間が必要です。
保険会社ごとに補償範囲やロードサービスには微妙な差が存在します。自動車保険は万一の事故に備えるものです。事故を起こしてしまったときに、充分な補償が受けられないのでは意味がありません。
保険料だけでなく、補償内容をしっかり検討し、不明点は保険会社の窓口に確認し、納得できる保険選びをすることが大切です。
代理店型自動車保険と通販型(ダイレクト)自動車保険を比較して見てきました。代理店型も通販型(ダイレクト)も事故対応そのものに大きな差はありません。
長い間自動車保険は代理店型が主流であったこともあり、代理店型のほうが事故対応に慣れているのではないかという印象があるかもしれませんが、通販型(ダイレクト)自動車保険も事故対応については事故のスペシャリスト、法律の専門家などが一丸となって事故解決に向けて業務を遂行してくれます。
また、いままで代理店型自動車会社を販売していた保険会社が、通販型(ダイレクト)自動車保険に参入し、コスト、事故対応など競争が激しくなっているのが現状です。
事故を起こし、車が故障したときのレッカーサービス、パンクの修理など車を走行するうえで起こりやすい基本トラブルについては代理店型のサービスと通販型(ダイレクト)も違いはありません。
しかし、事故があったときにかけつける、帰宅困難時の宿泊・帰宅費用、現地でのペットホテル費用などきめ細やかなサービスは通販型(ダイレクト)のほうが充実しているといえるでしょう。
自動車保険を選ぶ際にはロードサービスの細かい部分を比較してみるのもポイントです。
本記事では通販型(ダイレクト)と代理店型の自動車保険の違い、通販型(ダイレクト)自動車保険を選ぶ際に気になるコスト、事故対応を中心にご紹介しました。
事故対応力は自動車保険の要といえます。自動車保険を選ぶときは、本記事を参考にコスト面だけでなく事故対応体制、対応の細やかさを意識してみてください。
そのときは代理店型か通販型(ダイレクト)か、という切り口で比較するのではなく、各保険会社のサービス、独自のサポートをしているかを見極めることが重要です。
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