更新日:2024年9月25日
公開日:2020年10月22日
自賠責保険は、運転する自動車で他人を負傷させたり、死亡させたりしたために、被保険者が損害賠償責任を負う場合の損害について保険金などが支払われる保険です。
自賠責保険の補償は、人身事故に限ります。相手方の車やモノを壊したとき、自分や同乗者が事故でケガをしたときは補償されません。自賠責保険で賄えない部分に備えるためには、任意保険への加入がおすすめです。
自賠責保険の補償内容や任意保険との違いをご説明します。
※チューリッヒでは、自賠責保険を取り扱っておりませんのでご注意ください。
自賠責保険は、正式には「自動車損害賠償責任保険」といいます。
公道を走るすべての自動車やバイク(原動機付自転車、電動キックボードを含む)に加入が義務付けられている強制保険です。
自賠責保険は、運転する自動車で人身事故を起こし、損害賠償責任を負う場合に保険金が支払われます。自賠責保険は交通事故の被害者を保護することが目的であるため、被害者は示談が成立する前であっても、加害者が加入している自賠責保険会社に「被害者請求」として損害賠償を請求できます。
自賠責保険は自動車損害賠償保障法に基づき、加入が義務付けられている「強制保険」です。自賠責保険に入っていなければ運転することはできません。また自賠責保険に加入していないと、車検を受けることができません。
ここでは、自賠責保険に加入していないと、どうなるかを説明します。
自賠責保険に加入せずに人身事故を起こすと、本来自賠責保険から支払われるはずの賠償金がすべて自己負担となります。
たとえば人身事故を起こして被害者が死亡した場合、自賠責保険に加入していれば被害者1人につき3,000万円を補償限度額とした保険金が支払われます。しかし未加入の場合は、この保険金が支払われません。
任意保険に加入していたとしても、支払われるのは自賠責保険の補償限度額を超えた金額のみです。高額な賠償金は、自分で支払わなければなりません。
自賠責保険に加入していない自動車を運転すると、1年以下の懲役または50万円以下の罰金が科せられ、さらに免許停止処分(違反点数6点)を受けることになります。
自賠責保険に加入していても、自賠責保険証明書を携帯せずに走行した場合は30万円の罰金が科せられます。たとえ事故を起こさなくても、法律により罰せられることを把握しておきましょう。
先述したように、自賠責保険に加入していない車は車検を受けられず、公道を走る事ができません。
車検証の交付を受けるには、自賠責保険の保険期間が車検の有効期間をカバーしている必要があります。次回の車検までの期間を満たす自賠責保険に加入していなければ、車検の検査基準をクリアしていても、車検証は発行されません。
自賠責保険は対人事故のみが補償対象となります。
自賠責保険の補償内容と支払限度額は以下です。
傷害による損害の場合、自賠責保険の補償内容と支払限度額は以下となります。
補償内容 | 支払限度額(被害者1人につき) |
---|---|
治療関係費・文書料・休業損害および慰謝料 | 120万円 |
※国土交通省 自賠責保険・共済ポータルサイト「自賠責保険・共済の限度額と補償内容」
※2024年9月執筆現在
治療関係費には、治療費や看護料をはじめ、通院交通費、診断書などの発行手数料も含まれます。
後遺障害による損害の場合、自賠責保険の補償内容と支払限度額は以下となります。
損害 | 補償内容 | 支払限度額(被害者1人につき) |
---|---|---|
後遺障害 | 障害の程度に応じた逸失利益および慰謝料など |
|
※国土交通省 自賠責保険・共済ポータルサイト「自賠責保険・共済の限度額と補償内容」
※2024年9月執筆現在
後遺障害による損害の場合、自賠責保険の補償内容と支払限度額は以下となります。なお、死亡に至るまでの傷害の損害は、「傷害による損害」の補償内容と支払限度額が適用されます。
損害 | 補償内容 | 支払限度額(被害者1人につき) |
---|---|---|
死亡 | 葬儀費・逸失利益・被害者および遺族の慰謝料 | 3,000万円 |
※国土交通省 自賠責保険・共済ポータルサイト「自賠責保険・共済の限度額と補償内容」
※2024年9月執筆現在
自賠責保険の支払限度額以上の損害賠償請求が行われた場合は、加害者が差額を負担するか、任意保険から支払われます。
自賠責保険の保険料は、以下のように車両種別と保険期間によって異なります。
12ヵ月 | 13ヵ月 | 24ヵ月 | 25ヵ月 | 36ヵ月 | 37ヵ月 | |
---|---|---|---|---|---|---|
自家用乗用車 | 11,500円 | 12,010円 | 17,650円 | 18,160円 | 23,690円 | 24,190円 |
軽自動車 (検査対象車) |
11,440円 | 11,950円 | 17,540円 | 18,040円 | 23,520円 | 24,010円 |
小型二輪 (250cc超) |
7,010円 | 7,150円 | 8,760円 | 8,910円 | 10,490円 | 10,630円 |
軽二輪 (125超250cc以下) |
7,100円 | - | 8,920円 | - | 10,710円 | - |
原動機付自転車 (125cc以下) |
6,910円 | - | 8,560円 | - | 10,170円 | - |
※2023年4月1日以降に保険の有効期間を開始した保険契約に適用されます。
※離島(沖縄県を除く)を除きます。
国土交通省 自賠責保険ポータルサイト
「自動車損害賠償責任保険料基準料率(2023年1月18日届出)」
「自動車損害賠償責任保険料基準料率(2024年1月17日届出)」
をもとに表作成
※2024年9月執筆現在
自賠責保険の保険料は地域によっても異なります。保険料を知りたい場合は、国土交通省が公開している最新の情報を確認してください。
ここでは、自賠責保険に加入できる場所や必要書類について説明します。
自賠責保険は、以下の店舗で加入手続きが可能です。
自動車を購入する場合は、購入先のディーラーや中古車販売店、整備工場などで加入するとスムーズです。250cc以下のバイクや原動機付自転車、電動キックボードの場合は、上記に加えてコンビニや郵便局、インターネットでも加入できます。
店舗によって契約している保険会社は異なりますが、自賠責保険料は一律です。そのため、どこの店舗で契約しても自賠責保険料は変わりません。
自賠責保険の加入に必要な書類は以下の2つです。
更新・再加入の場合は自賠責保険証明書が必要になります。店舗によっては保険料の支払いが現金のみの場合があるので、現金も用意しておくと安心です。
自賠責保険と任意保険は、いずれも自動車事故に備えるための保険です。しかし、自賠責保険と任意保険は補償の範囲が異なります。
自賠責保険の補償範囲は対人事故に限定されるため、自分自身のケガや物損事故は補償対象です。
次の場合などは保険金が支払われません。
また、対人事故の場合でも、自賠責保険の支払限度額以上の損害賠償請求が行われた場合、その差額は加害者が負担しなければなりません。
自賠責保険で賄えない部分に備える手段として、任意保険があります。ここでは、自賠責保険と任意保険の補償内容の違いをご説明します。
自賠責保険 | 任意保険 | ||
---|---|---|---|
加入義務 | 強制加入 | 任意加入 | |
相手への補償 | ケガ・死亡 | △ (保険金に支払限度額あり) |
○ |
車・モノ | × | ○ | |
自分への補償 | ケガ・死亡 | × | ○ |
車・モノ | × | ○ | |
保険料 | 被保険者の年齢・車種などを問わず一定 | 補償内容・被保険者の年齢などにより異なる |
自賠責保険では対人事故の相手方のケガなどに対して補償されますが、支払限度額を超える分は自分で負担しなければなりません。相手を死亡させたり後遺障害を負わせたりした場合、裁判で1億円以上の高額な賠償金が認定されるなど、自賠責保険だけでは賄いきれないことがあります。
任意保険の基本補償には、対人事故の相手を補償する「対人賠償保険」があります。補償金額を「無制限」に設定できるため、高額な賠償金の支払いに備えられます。
自賠責保険では相手方の車や、電柱・ガードレールなどの周辺設備といったモノは補償対象となりません。一方、任意保険には、他人が所有する車や家屋・所有物を壊してしまい、修理費用など法律上の損害賠償責任を負った場合に補償する「対物賠償保険」があります。
自賠責保険で補償されるのは対人事故の相手であり、運転者がケガや死亡した際の補償は受けられません。同乗者にケガをさせた場合は自賠責保険の補償対象となります。同乗者が加害車両の所有者であるなど自賠責保険の補償対象外となる場合もあります。
自賠責保険は、車両の損害も補償対象外です。事故により自分の車が壊れてしまった際の修理費用や、車両の買い替え費用を補償する保険として、任意保険の「車両保険」があります。
交通事故により損害が発生した際は、自賠責保険金を請求します。ここでは、自賠責保険の請求方法を説明します。
交通事故の発生から自賠責保険金支払いまでの流れは、以下のとおりです。
交通事故が発生して自賠責保険料を請求すると、損害調査が行われます。その調査結果をもとに自賠責保険の保険金額が決まり、請求者に支払われます。
なお、自賠責保険の保険金の支払い時期は、原則として被害者の治療が終了したあとです。後遺障害が残った場合は、認定を受けてからの支払いとなります。
自賠責保険の請求には「加害者請求」と「被害者請求」の2種類があります。
加害者請求は、加害者が被害者に損害賠償金を支払い、そのあと自賠責保険金(共済金)を損害保険会社(共済組合)に請求することです。
被害者請求は、加害者側からの賠償が受けられない場合に、加害者が加入している損害保険会社(共済組合)に損害賠償金額を直接請求することです。
なお、損害額のすべてが確定する前でも、被害者は治療費などを支払うごとに、加害者は被害者に賠償金を支払うごとに、何度でも限度額の範囲で保険金を請求することが可能です。
自賠責保険は更新や名義変更を忘れると、補償を受けられなかったり、手続きが複雑になったりする可能性があります。自賠責保険について、以下の点に注意しましょう。
自賠責保険の更新は、車検のタイミングに合わせて行います。自賠責保険の保険期間が車検期間を満たしていなければ、車検を受けられません。車検のタイミングは、新車であれば購入から3年後(36ヵ月)、それ以降は2年(24ヵ月)ごとです。
原動機付自転車や軽二輪(125cc超250cc以下のバイク)など、車検がない車両の場合は満期日を小まめに確認し、更新を忘れないように注意しましょう。更新方法については、こちらの記事で詳しく説明しています。
中古車を購入したときや、親族・友人などから車を譲渡されたときには、自賠責保険会社の窓口で名義変更を行う必要があります。
引越しなどで住所変更した際は、自賠責保険の住所変更手続きも忘れずに行いましょう。
自賠責保険証明書は、携帯せずに運転すると30万円以下の罰金を支払わなければならないため、紛失した際は再発行の手続きを行ってください。再発行の手続きは、自賠責保険を契約した保険会社や、ディーラーなどの販売店で可能です。
自賠責保険証明書がない状態で運転すると、罰則の対象となります。書類が届くまでは運転を控え、まずは再発行の手続きを行うようにしましょう。
自賠責保険の保険期間内に、廃車などにより自賠責保険を解約する場合、解約返戻金を受け取ることができます。ただし、解約日から契約満了日までの期間が1ヵ月未満の場合は、解約返戻金はありません。自賠責保険の解約には、以下の書類が必要です。
自賠責保険は交通事故の被害者を保護することが目的であるため、相手方の車やモノを壊したとき、、自分や同乗者がケガをしたときには補償されません。一方、自動車保険では、基本補償と特約によって自分にあわせた補償内容を組み立てられます。
自賠責保険だけでは万が一への備えが不十分である可能性が高いため、自動車保険もセットで加入を検討しましょう。
自賠責保険は被害者の救済を目的とした保険のため、対人事故しか対象にならないうえ支払限度額も十分とは言えません。自動車に乗る方は、万が一に備えて任意保険もセットで加入を検討する必要があります。
資格:CFP
東証一部上場企業で10年間サラリーマンとして勤めるなか、業務中の交通事故をきっかけに企業の福利厚生に興味を持ち、社会保障の勉強を始める。以降ファイナンシャルプランナーとして活動し、個人・法人のお金に関する相談、北海道のテレビ番組のコメンテーター、年間約100件のセミナー講師なども務める。趣味はフィットネス。健康とお金、豊かなライフスタイルを実践・発信しています。
自賠責保険には等級制度がないため、自賠責保険を使ったからといって等級が下がることはありません。
保険期間が1ヵ月以上あれば、解約返戻金が受け取れます。
自賠責保険の期間は、車検の有効期限から少しずれて長めに設定されているのが一般的であるため、問題ありません。
※本記事の内容は特段の記載がない限り、チューリッヒの保険商品ではなく、一般的な保険商品の説明です。
※チューリッヒの自動車保険に関する内容について
本記事内で紹介しているチューリッヒの自動車保険に関する内容につきましては、ご契約の保険始期および契約条件によって、ご契約のお客さまに適用されない場合がございます。
必ずお客さまの保険証券、約款、重要事項説明書の記載などをご確認ください。
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