更新日:2024年10月11日
公開日:2015年10月21日
自動車事故が発生したとき、その損害に応じて賠償金を支払う、または支払ってもらう必要があります。この賠償金を決める際に欠かせないのが、「過失割合」です。
交通事故時の過失割合は、当事者双方にどの程度の不注意や責任があるのかを数値化したものです。事故の状況を見ながら当事者同士で話し合って決定しますが、場合によっては決定までに時間がかかったり、交渉が決裂したりする可能性もあります。
トラブル回避のためには、過失割合について一通り知っておくとよいでしょう。
交通事故時の過失割合が決定するまでの流れや、誰がいつ決めるのか、事故のケース別の過失割合の目安についてもご説明します。
また過失割合の10対0、9対1と呼ばれるような意味や、過失割合に納得できない場合の対策も説明しますので、ご参考にしてください。
「過失割合」は、自動車同士など相手がいる事故において、どちらにどの程度の責任があるかを数値で示すものです。「80:20」といったように、自身と相手方の過失の割合を数字で表します。
「10対0」、「9対1」などの数値で表されることもあります。
ただし、自分に責任がないと思えるような事故でも、過失割合が0ではないケースもあります。車には、前方への注意や駐停車時の対応などさまざまな注意・義務が課されているためです。
過失割合を決めるのは、事故の当事者です。ただし実際には当事者同士だけではなく、それぞれが加入する自動車保険(任意保険)会社の担当者が行うことが多くあります。警察は実況見分を行うのみで、過失割合の決定には関与しません。
交通事故を起こしたことを警察に届け出ると、各都道府県の自動車安全運転センターから「事故証明書(交通事故証明書)」が発行されます。これは警察が交通事故を取り扱った事実を証明する書類で、保険会社に保険金を請求する際に使用します。しかしこの事故証明書には、過失割合は記載されません。
事故証明書はあくまでも事故が発生したことを証明する書類に過ぎないため、過失割合や事故の発生状況といった、具体的な内容までは書かれないのです。参考までに、事故証明書に記載される内容は以下のとおりです。
なお、事故をした相手がケガをしてしまい、それによって入院をした場合は、加害者側からのお見舞いが必要になるケースもあります。
円満解決のためには、道義的な責任としてのお詫び・お見舞いなどを通じて、十分に誠意を尽くすことが大切です。お見舞いについての決まり事はありませんが、このときは、菓子折を持参することが一般的です。
示談交渉は、保険会社の担当者に代行を依頼することがほとんどです。一度成立した示談交渉の内容は変更ができないため、事故直後に現場で、「当事者同士だけ」で示談交渉をすることは避けましょう。
たとえば現場で物損事故だと判断して、当事者間で示談交渉したとしましょう。この場合、後日症状が出たとしても、人身事故に切り替えて賠償金を増額してもらえる可能性は低くなります。現場で物損事故として示談交渉が済んでいることから、すでにその事故に関して和解がなされたと見なされるためです。
事故発生から間もない状態では、どの程度の事故やケガであるかわからないことが多いものです。特にケガは、事故直後は目立った症状がなくても、後日何らかの症状が出てくることもあります。
また、当事者同士での示談交渉は、実際の事故やケガの程度とかけ離れた賠償金を求められる可能性もあります。必ず加入している保険会社に連絡し、事故の報告をしてください。
事故の過失割合は、「基本過失割合」に基づいて決定されます。
基本過失割合とは、過去の交通事故における判例や道路交通法などをもとにした割合のことです。それぞれの事故における過失割合はこの基本過失割合をベースに、事故の状況や目撃者の証言などの要素を含めて決定されます。
自身の事故の大まかな過失割合を把握したい場合は、まず自身の事故がどういった事故なのか(事故類型)を確認しましょう。そのうえで、似た事故で適用された過失割合を調べてみるとよいでしょう。
具体的には、以下の2点を確認してください。
事故当事者の種類は右記のどれか | ・歩行者 ・自転車 ・自動車 |
---|---|
事故発生時の状況はどういったものか | ・歩行者に正面から衝突した(対面通行中) ・歩行者の後方から衝突した(背面通行中) ・車両と正面衝突した ・相手の車とすれ違うときに衝突した ・右折する際に相手の車に衝突した(右折時衝突) など |
ただし前述の通り、それぞれの事故の過失割合は現場の状況を見て決定されます。インターネットなどで紹介されている事故や過失割合の例と、自身が起こした事故の過失割合は数値が異なる可能性もある点に注意してください。
過失割合は、事故現場でその日のうちに決まるものではありません。当事者同士の話し合いや事故状況、ドライブレコーダーの確認など、さまざまな手順を踏み決まるものです。
具体的には、以下の流れで決定されます。
認定された過失割合は、示談の相手方もしくは加害者の任意保険会社の担当者から提示されます。双方が加入する保険会社が交渉する場合は、自身が加入している保険会社から過失割合を提示され、協議することが一般的です。
なお、事故状況のすり合わせには、一例として以下のようなものが使用されます。
また、基本過失割合から修正を行う際は、以下の確認も必要です。
優先道路とは、「優先道路標識」があるか、交差点内に中央線・車両通行帯がある道路のことです。
もし話し合いで当事者のどちらかが納得できず示談交渉が決裂したときは、ADR(裁判外紛争解決手続)・裁判・調停といった手段で過失割合を決定することになります。詳しくは、後述の「過失割合で納得できないときの対処法」でご説明します。
事故が起こった際に、どういったケースでどのような過失割合が適用されるのか、例とともに見ていきましょう。まずは、自動車が関連する事故についてご紹介します。
なお、ここからご紹介する事故の過失割合は、あくまでも基本過失割合を参考とするものです。実際の過失割合は事故状況などによるため、目安として確認してください。
信号機のある場所で事故をした際の過失割合は、そのときの信号の色によって異なります。
歩行者側の信号が「赤」、自動車側の信号が「青」だったとき、過失割合は歩行者:自動車=70:30となります。歩行者には信号を無視したという過失があるものの、自動車側も前方の歩行者に注意する必要があるためです。
しかし、歩行者側の信号が「赤」、自動車側の信号が「黄」だったときの過失割合は、歩行者:自動車=50:50となります。
なお、歩行者側の信号が「青」、自動車側の信号が「赤」だったときは、過失割合は歩行者:自動車=0:100となります。信号機が赤の場合、自動車は停止位置を超えて進行してはなりません。そのため、それを無視した自動車に全面的な過失があると考えられるためです。
信号機のない横断歩道で自動車が歩行者にぶつかった場合、自動車の過失割合が100となります。横断歩道を渡っている歩行者がいる場合、自動車は一時停止をしなければなりません。それを怠ったと捉えられるため、原則として自動車にだけ過失があると判断されます。
横断歩道がなく信号機もない場所を横断している歩行者に自動車がぶつかった場合、歩行者が歩いている場所により過失割合が異なります。
横断歩道や歩道橋がある近くの道路で事故が起きた場合の過失割合は、歩行者:自動車=30:70です。本来であれば歩行者は横断歩道や歩道橋を使うべきところ、それを怠ったと見なされるためです。
また、横断歩道や歩道橋が近くにない道路で起きた事故の過失割合は、歩行者:自動車=20:80です。ただし、渡っていた道路が横断禁止の場合は、歩行者の過失割合が大きくなることもあります。
続いて、自動車同士で事故が発生した場合の過失割合について、いくつかの例で見ていきましょう。
信号機のある交差点での事故は、2パターン想定されます。
赤信号にもかかわらず交差点に進入し、青信号で走行していた自動車にぶつかった場合は、信号無視をした赤信号側の車の過失割合が100となります。
一方、右折しようとした対向車が直進車にぶつかった場合、どちらの信号が青であっても過失割合は右折車:直進車=80:20となります。交差点で右折する車は他の自動車の進行を妨げてはならず、事故が起きた場合はその対応を怠ったと見なされるためです。
信号機のない交差点での事故は、現場にある標識や道路の幅によって過失割合が異なります。ここでは、代表的な2パターンの例を紹介します。
まず、一方に「一時停止」の標識がある道路での事故です。過失割合は、一時停止の規制がある側:規制がない側=80:20となります。規制がある側には一時停止の義務があり、規制のない側にも他の車への注意義務があるため、このような内訳となります。
続いて、直進車と対向する右折車が衝突したケースです。この場合も信号機のある交差点での事故と同様に、過失割合は右折車:直進車=80:20となります。
駐車場など道路外の場所から左折して道路へ進入しようとした車と、道路を直進していた車が衝突したケースです。この場合、過失割合は左折車(進入しようとした車):直進車=80:20となります。
進路を変更した車が、直進していた後続車に追突したときの事故の場合、過失割合は進路を変更した車:直進していた後続車=70:30となります。
前提として、道路交通法(第26条の2、第26条の2 第2項)では進路変更をむやみに行ってはならないとされています。また、自分の車が進路変更することで後続車に急な減速・方向変更をさせそうな場合も、進路変更はしてはなりません
このことから、進路変更時の事故では、進路を変更したほうの車の過失が大きくなるのです。
ただし直進車も、追い抜こうとしている車が進路を変更すると予測でき、前方を見ていないという過失があるため、割合が30%となっています。なお、左右どちらからの車線変更であっても、過失割合の基準は変わりません。
駐停車中の車に後続車が追突した場合、追突した車の過失割合が100になります。駐停車している車には、原則として過失はないと見なされるためです。
ただし駐車禁止の場所に停車していたり、ハザードランプを付けていなかったりした場合、駐停車中の車にも過失割合が加算されることがあります。
駐車スペースから出ようとしている車と、通路を走行する車が接触した例です。この場合の過失割合は、駐車スペースから出る車:通路を走行する車=70:30となります。
道路交通法第25条の2では、「歩行者や他の車両の交通を妨げる可能性がある場合は、道路外の施設・場所に出入りしてはならない」と定められています。この「出入り」は、左折・右折や、横断、Uターン、後退などを伴うものです。
つまり、駐車スペースから出ようとしている車には大きな注意義務があると見なされ、この割合になるのです。ただし、通路を走行する車にも前方注意義務があるため、30%の過失割合が設定されます。
高速道路での事故は、「合流時」と「進路変更時」に起きるものの2パターンが考えられます。
まず、加速車線(本線に合流する車線)から本線へ合流しようとしたときに接触したケースです。
この場合、過失割合は本線に合流しようとしていた車:本線を走行していた車=70:30となります。道路交通法第75条の6で、「合流する車は本線を走行する車の進行を妨げてはならない」といったことが定められているためです。
続いて、高速道路の本線走行時を見てみましょう。走行車線を走る車が追越車線へ進路変更する際に、追越車線を直進していた車と接触したときです。
この場合は前述の合流時の例とは異なり、進路を変更した車:追越車線を走っていた車=80:20となります。高速道路での進路変更はさらに注意が求められるため、過失割合も高めに設定されるのです。
最後に、自動車とバイク(二輪車)による事故の例を、いくつかご説明します。
信号機がある交差点で、自動車がバイクを巻き込んで発生する事故の例です。先行していた自動車が左折、バイクが直進しようとしていた場合、自動車:バイク=80:20の過失割合となります。
原則として、バイクは道路の左側を走るものとされています。そのため、自動車はバイクに注意するべきとされ、事故をした際の過失割合も大きくなるのです。
なお、こうした事故は対バイクだけではなく、対自転車でも発生する事故です。交差点で左折する際は、周囲に注意してください。
信号機がある交差点で、右折する車が直進するバイクと衝突した事故の例です。このケースでは、車:バイク=85:15の過失割合となります。
同様の状況でも、車同士の事故に比べて、バイク側の過失割合が低めに設定されます。これは、バイクが車に比べて交通事故にあいやすい交通弱者であることに起因します。
過失割合が決定した後はその数値に基づいて損害賠償額が算出されますが、このとき「過失相殺」も行われることがあります。
過失相殺とは、事故の被害者側にも過失があったとき、加害者が負担する損害賠償額から被害者の過失分を差し引くことです。双方に過失がある場合に、公平に損害を分担するために行われます。
被害者が払うべきとされた金額を、加害者が支払う損害額からあらかじめ差し引き、その差額を加害者が支払うという流れです。この払い方は、「相殺払い」と呼ばれます。
加害者・被害者ともに請求して支払う形での相殺ではないことを知っておきましょう。
過失割合は、「80:20」または「9対1」といった数字で表されます。原則として双方の過失の度合いを判断し、それぞれ数値で表されますが、事故の状況によっては過失割合が加害者:被害者=100:0(10対0)となるケースがあります。
このように、被害者側に責任のない事故の場合は、示談交渉を保険会社に依頼できません。被害者が自動車保険に加入しており、かつ何らかの過失があって損害賠償金の支払いが必要でなければ、保険会社も支払いの当事者とはならないためです。
具体的には、先に紹介した以下のような事故の被害者となった場合が該当します。
こうした事故に遭った場合は、自分自身で示談交渉をしなくてはなりません。
話し合いの結果提示された過失割合に納得できないときは、その変更の主張も可能です。
過失割合の変更を主張するときはまず、示談交渉をもう一度行います。それでも納得できないときは、以下の3つの手段をとることもできます。
過失割合の変更を主張したい場合は、提示された過失割合のどこに納得できないかを明確にしましょう。実際は、以下2つのどちらかを主張することになります。
加えて、変更後の過失割合が適当だと思われるような証拠の準備も重要です。証拠として使えるものには、以下のようなものがあります。
なお、話し合いがまとまらない場合は、被害者の過失割合を0にする「片側賠償」が協議されるケースもあります。
裁判所に調停を申し立てる方法もあります。調停は、事故の当事者同士で話し合った内容をもとに調停委員が妥協案を提案し、解決していく方法です。示談交渉とよく似ていますが、保険会社の担当者ではなく、調停委員が過失割合に関する問題を解決していく点が異なります。
調停は裁判(訴訟)と比べるとかかる費用や求められる知識が少なく、手続きも比較的簡単です。そのため、示談交渉で成立した過失割合に納得できないものの、裁判(訴訟)はしたくないときに利用されています。
民事訴訟を起こし、裁判上で納得のいく過失割合を決めていく方法です。裁判官に事故の状況を話したり、証拠を提出したりして判断してもらい、最終的に判決で過失割合が決まります。
裁判を申し立てる場合は、弁護士に依頼することになります。そのため、調停に比べると高額の費用が必要です。日数もかかる傾向にあり、相手の出方次第では解決までに数年かかることも珍しくありません。
ただし、訴訟の途中に当事者同士が話し合いをして、「和解」というかたちで解決することも可能です。この場合も、裁判所の判決と同等の効力を持ちます。
これまでご紹介したとおり、交通事故発生の際に示談交渉を行うのは、事故当事者が加入する自動車保険会社の担当者となるのが一般的です。
事故相手との間に保険会社の担当者が入ってくれるため、示談する時間や知識がない方でも、安心して解決に導いてもらえます。
ただし、自分自身に過失のない事故の場合は、保険会社に示談交渉の代行は依頼できません。保険会社が示談交渉を代行してくれるのは、賠償金を支払う必要があるケースのみであるためです。
しかし、保険会社や保険の種類によっては、自分自身に過失のない事故であっても、交渉時の不明点の相談に乗ってもらえることもあります。あらゆるケースの交通事故を想定して、いざというときに頼れる保険に加入しておくことが大切です。
またチューリッヒの自動車保険には弁護士費用等補償特約があります。
弁護士費用等補償特約とは、相手方へ損害賠償を請求するために必要となる、弁護士費用や訴訟費用などに対して保険金をお支払いする特約です。
自分に過失のない事故で、相手方との交渉が難航し弁護士への委任が必要となる場合に備えたい方は、弁護士費用等補償特約の付帯も検討をおすすめします。
自身に過失割合がないときは、保険会社は関与できないため、自分が直接相手と交渉しなければなりません。ただ弁護士特約があれば弁護士費用が一定額までカバーできるため、弁護士に示談交渉を依頼することもできるでしょう。
資格:CFP
東証一部上場企業で10年間サラリーマンを勤めるなか、業務中の交通事故をきっかけに企業の福利厚生に興味を持ち、社会保障の勉強を始める。以降ファイナンシャルプランナーとして活動し、個人・法人のお金に関する相談、北海道のテレビ番組のコメンテーター、年間約100件のセミナー講師なども務める。趣味はフィットネス。健康とお金、豊かなライフスタイルを実践・発信しています。
過失割合とは、事故における責任を数値化したものです。加害者側:被害者側=100:0になるものもあれば、80:20などのように被害者側にも責任がある事故もあります。
過失割合は、事故の当事者が決めることとされています。ただし実際には当事者同士のみで決めるのではなく、各々が加入する自動車保険会社の担当者同士で示談交渉を行って決めることが一般的です。
過失割合が決まるタイミングは事故の状況などにより異なるため、一概に「いつ」とは言えません。しかし、ある程度の時間はかかると思っておきましょう
過失割合が決まるまでには、事故当時の話を聞く、ドライブレコーダーなどのデータを確認するといった複数の手順が必要です。また、車の修理費・当事者の治療費なども含めてどの程度の損害があるのかなど、さまざまな要素が具体的に分かってから決定されます。
早く解決したいからといって、事故直後に当事者だけで示談交渉をすることは避けましょう。実際の過失割合とは異なる数値になり、相場とかけ離れた賠償額を提示される可能性もあります。
ADR・調停・裁判(民事訴訟)のいずれかを使い、認定された過失割合に納得できないことを主張できます。ただしいきなりどれかを選ぶのではなく、まずは再度示談交渉をする手段もあります。
過失割合は、基本過失割合と呼ばれる過去の判例などをもとに決まるため、一概にいくつとは言えません。ケガをしている方がいない、小さいキズがついた程度の軽微な事故であっても警察を呼び、その後保険会社に事故の報告をしてください。その後、事故の状況やドライブレコーダーのデータなどをもとに過失割合が決まります。
※本記事の内容は特段の記載がない限り、チューリッヒの保険商品ではなく、一般的な保険商品の説明です。
※チューリッヒの自動車保険に関する内容について
本記事内で紹介しているチューリッヒの自動車保険に関する内容につきましては、ご契約の保険始期および契約条件によって、ご契約のお客さまに適用されない場合がございます。
必ずお客さまの保険証券、約款、重要事項説明書の記載などをご確認ください。
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