
セルモーターとは、エンジンをスタートさせるための電動機(モーター)です。英語では「starter motor(スターターモーター)」といい、セルモーターという名称は和製英語です。
自動車で一般的な、4サイクルガソリンエンジンでしくみを解説しましょう。エンジンは「吸気、圧縮、燃焼・膨張、排気」の4行程を繰り返すことによって回転しますが、セルモーター(スターターモーター)は、止まっているエンジンのシャフトを回転させることによって、停止しているエンジンが自ら行うことができない吸気、圧縮工程を、シャフトを回して強制的に行うことで、始動のきっかけを与えるものです。
では、実際のセルモーター(スターターモーター)の動きを、一番多いタイプの「リダクション式」を例に解説します。
最近、燃費改善や環境性能向上のため、アイドリングストップ機能を備える自動車が増えています。車速の低下を検知して、電子制御でエンジンをストップさせ、運転者の運転操作をしようとする動き、たとえばブレーキペダルを離す、ハンドルを動かす、セレクトレバーを動かすなどの動作を感知して、自動的にエンジンを始動させるしくみです。
この再始動にはセルモーター(スターターモーター)を使っています。一般の車に比べて、使用頻度が多くなりますので、モーターの耐久性を高める、ピニオンの押し込みは別モーターで制御する、機構の故障を防ぐためにピニオンとリングギアが常に噛み合っている状態に設計変更するなどの対策が取られています。また、停止したエンジンの気筒にガソリンを噴いておくことで、エンジン再始動時に直ちに着火・爆発行程に移行して、セルモーターの負担を減らす工夫も行われています。また、エンジンの回転により発電し、バッテリーを充電するオルタネーター(発電機)がモーターと同じ構造であることを利用し、オルタネーターをセルモーターとして使う方法も実用化されています。
さらにハイブリッド車では、モーター走行とエンジン走行の切り替えがあり、エンジンの始動・停止が繰り返されますが、エンジン始動は走行用モーターで行われます。また、最近普及が進んでいる、ガソリンエンジンを発電のみに使う電気自動車では、発電機をエンジン始動のセルモーターとして使っています。
セルモーター(スターターモーター)は、あくまでエンジン起動に使う補助的な機器です。一度エンジンが始動すればセルモーターの役目は終わります。1回の使用で最大30秒程度の使用として設計されていますが、故障率は低いものです。写真には、モーターのブラシ摩耗でカーボン粉が大量に出ている故障の状況が示されていますが、こうなることはまれです。使用頻度の高いアイドリングストップ車でも、故障が多くなったという話は聞かれないようです。
しかし、イグニッションスイッチを入れると元気よくセルモーターが回って、エンジンが始動していたのに、セルモーターを回すたびに異音がする、空回りしているという場合、まず疑われるのはバッテリー上がりです。その次にピニオンギアとリングギアのかみ合い不良を疑います。セルモーターそのものの故障は頻度としてはその次になるのです。
では、セルモーター(スターターモーター)が本当に故障して起動しないときはどうしたらよいでしょうか。マニュアル車では「押しがけ」という方法があります。これはセルモーターが回らなくてエンジンがかからないとき、人の力を使って車を押すことでエンジンをかける緊急時の対処法です。
運転者が運転席に座ってイグニッションスイッチをONにして、ギヤを2速に入れてクラッチを踏んだ状態で、別の人が後ろから車を押します。車が動いたところでクラッチをつなぐと、車輪の回転がクランクシャフトを回し、セルモーターの代わりをすることで起動ができるのです。
しかし、最近の車はほとんどオートマチック車です。オートマチック車はクラッチの代わりにトルクコンバーターで変速しており、エンジンの回転で生み出される油圧がなければトルクコンバーターは作動しないので、押し掛けをしてもタイヤの回転をエンジンに伝達できません。「オートマチック車では基本的に押しがけが不可能である」と言って差し支えないでしょう。
ですから、バッテリーが弱ってセルモーターを回すことができないなどの症状が出た場合、まずはロードサービスなどを利用し、点検、修理をしてもらうことが重要です。
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