更新日:2023年2月1日
公開日:2020年11月18日
自分の車が衝突・接触などにより受けた損害への備えとなるのが「車両保険」です。
車の修理費用に対して支払われる保険金と一般的に考えられていますが、「全損」の場合は修理をしなくとも保険金を受け取ることができます。
また「全損」には、「物理的全損」と「経済的全損」があります。違いや車両保険の全損扱いという言葉の意味についてご説明します。
「全損」という言葉を聞くと車が大破し、走行できない状態をイメージされるかもしれません。
しかし、自動車保険における「全損」は、上記のように契約している車が物理的に修理できない場合に加え、完全に滅失した場合、または修理、回収に要する費用が再調達価額または時価額を超えるような場合のことも含みます。
自動車保険においては、「車が盗難に遭って発見できない」「修理費が車両保険金額を超えるような損害」であるという場合は「全損扱い」になります。
車の修理不能については、「物理的全損」と「経済的全損」という2つの状態が存在します。
物理的全損とは、文字通り物理的に車の修理が不可能な状態まで損害を受けてしまっている状態を指します。
経済的全損とは、損害を受けた車両の「時価額」よりも、修理費用が高くなる場合を指します。
全損扱いになる経済的全損
たとえば、時価額50万円の車の修理に120万円かかるといった状況をイメージしてください。このような、「修理をするくらいなら車を買い替えた方が安い(経済的)」という場合を指します。
このように修理可能な状態であったとしても、修理費用が時価額を超えてしまうような場合は修理費用全額が損害として認められず、「全損扱い」になってしまいます。
また物損事故の場合は、全損の他「分損」という言葉も用いられます。
分損は、修理費用が時価額を下回る場合を指します。この場合、自動車保険で車両保険を付帯していれば保険金を受け取ることができますので、修理費用に充てて同じ車に乗り続けることができるでしょう。
勘違いされることも多いですが、車両保険の補償額は車の修理費用を基準として支払われるわけではありません。
補償額を算出する際にベースとなるのは、車の「時価額」です。
時価額は、事故の時点を基準として、車種、年式、型式、使用状況、走行距離などから中古車市場においてどのくらいの額で購入できるかも含め、決定されます。
全損(物理的全損・経済的全損)・盗難後発見できないという場合、支払われる保険金の額は原則として事故時点における車の価値(車の時価額=保険価額)と同じ金額です。
車両の時価額を超える修理費用が補償されることはありません。
車両保険の補償は、時価額を基準に支払われるため、実際に修理をしなかったとしても、車両保険を付帯していれば保険金を受け取ることができます。
前述した物理的全損の場合、もはや修理することはできませんが、車の時価に応じた保険金を受け取れるため保険金を車の買い替え費用の一部に充てることができます。
なお、車両保険の判定基準となる時価額が算定されるのは、1年に1度の保険契約時です。年式が古くなるにつれて車の時価額は下がるため、相応に車両保険の補償金額も下がっていくことになります。
このようなしくみのため、新車に近い車であれば、購入価格程度まで車両保険を設定することができます。
盗難にあい、その車が発見できない場合も、「全損」として扱われます。
この場合、車両保険を付帯していれば保険金が支払われ、その後盗難された車が発見された場合には、車を手放さなければなりません。
ただし、一定期間内(チューリッヒの場合は保険金が支払われた日の翌日から60日以内)に限り、保険金を返還することで自分の車を引き取ることができますので、保険約款を確認しておきましょう。
一方、年式の古い中古車の場合、時価が下がっているため、車両保険で十分な保険金額に設定することができません。
この場合は、修理費用や車の買い替え費用を車両保険だけで賄うことは難しくなります。
たとえば車両保険の上限が30万円であれば、修理費用や買い替え費用としては不十分であることが想定されますので、貯蓄を使うことになるでしょう。
自分に過失がない事故によって車が損害を受けた場合は、相手側が自動車保険の契約をしていれば、対物賠償保険の対象として補償を受けられる可能性があります。
しかし、相手方が対物賠償保険の補償額を「無制限」に設定していたとしても、修理費用の全額をまかなってもらえるとは限りません。
なぜなら法律上の賠償責任は、車の時価額を限度としており、時価額を超える金額は対物賠償保険では支払われないからです。
たとえば、長年大切に乗っていた時価30万円の車が他人から追突されて修理が必要になったとき、費用に100万円がかかる場合は経済的全損と判断され、賠償されるのは30万円のみとなります。
修理をすれば乗り続けることができたとしても、修理費用の残りの70万円は被害者自身が負担しなければなりません。
自動車保険は被害車両の時価額を限度に賠償をするという考え方である以上、このようなケースであっても修理費用の全額を請求することはできず、経済的全損と判断され、泣き寝入りせざるを得ない状況になる可能性があります。
以上が自分に過失のない事故で損害を受けた場合の原則的な取扱いですが、車の時価額を超える修理費用についても賠償してもらえるケースもあります。それは、相手方が対物賠償保険に「対物超過特約」を付帯していた場合です。
対物超過特約が特に役立つのは、年式が古い車に損害が発生した場合でしょう。
前述のとおり、年式が古い車は、そもそも車両保険の補償金額を十分に設定することができません。
そのため、自分の車両保険や、相手方の対物賠償保険による保険金では不十分という可能性が考えられます。
このような場合に、相手方が自動車保険に対物超過特約を付帯していれば、時価を超える修理費用についても支払ってもらうことができるため、修理をして、引き続き同じ車に乗るということも可能になります。
車両の全損と分損、いずれの場合であっても、損害を受けた場合は経済的な負担が生じます。自分の車の損害に対する補償を厚くしたいというのであれば、自動車保険の内容を一度見直してみてはいかがでしょうか。
自動車保険は被害車両の時価額を限度に賠償をするのが原則ですが、時価額よりも修理費用の方が高くなってしまうと、示談交渉がこじれてしまうケースも起きています。そのようなとき、時価額を超えた分の補償ができる対物超過特約が役に立ちます。ぜひ付帯しておきたいですね。
自動車保険に車両保険を付帯しているからといって、必ず損害の補償を受けられるわけではありません。
チューリッヒでは、ほとんどの車両事故が補償の対象となる「ワイドカバー型(一般条件)」と、補償内容を限定するかわりにワイドカバー型と比べて割安な「限定カバー型」がありますが、ワイドカバー型であっても次のようなケースは補償の対象になりません。
上記のとおり、運転者などに重大な責任がある場合や、地震、噴火、津波による損害の場合は、原則として車両保険による補償を受けられません。ただし、地震や噴火、津波による損害であっても補償を受けられる特約を付帯することは可能です。
チューリッヒでは、地震・噴火・津波によって全損となった場合に、記名被保険者に50万円を支払う「地震・噴火・津波による車両全損時一時金支払特約」を用意しています。
このような損害で全損となった場合が補償の対象となります。この特約は、ワイドカバー型(一般条件)の車両保険をご契約の場合に付帯することができます。
本来、地震・噴火・津波による損害は車両保険の補償対象外です。しかし日本では地震が多発する環境のため、少しでも保険金で賄えないかという要望もあり、特約として地震などによる車両全損時には一時金の特約も付帯できるようになっております。
事故の相手が任意保険に加入していなかった場合や相手方の保険会社による経済的全損といった判断に納得できないような場合は、弁護士に相談するケースもあるでしょう。
そのような場合、弁護士費用等特約では、1回の事故につき300万円まで弁護士費用や訴訟費用などに対して保険金をお支払いします。
自分の車ではなく、相手方の車に時価額を超える修理費用が発生したときに備える特約です。
時価額を超える修理費用に被保険者の過失割合を乗じた額を、保険金として支払うもので、支払限度額は50万円または無制限をお選びいただけます。
全損は、物理的に修理ができない状態である物理的全損と修理費用が車の時価額を上回る経済的全損の2つに分けられます。
車両保険や対物賠償保険の補償額は、時価額を基準に算出されるため、経済的全損と判断された場合には、修理費用の十分な補償を受けられず泣き寝入りせざるを得ないような状況も発生する可能性があります。
対物超過特約は、相手方の車に時価額を超える修理費用が発生した時の補償であり、万が一の事故に備えて付帯しておくと安心です。
※記載の情報は、2022年12月10日時点の内容です。
ファイナンシャル・プランナーで一児の母。大手損害保険会社を経て2010年に独立開業。
個別相談や執筆、セミナー講師として活躍中。企業研修や女性向けに賢いお金との付き合い方を伝えている。
K'sプランニング代表/一般社団法人あんしんLifeコミュニティ 代表理事
CFP®、一級ファイナンシャル・プランナー技能士
※本記事の内容は特段の記載がない限り、チューリッヒの保険商品ではなく、一般的な保険商品の説明です。
※チューリッヒの自動車保険に関する内容について
本記事内で紹介しているチューリッヒの自動車保険に関する内容につきましては、ご契約の保険始期および契約条件によって、ご契約のお客さまに適用されない場合がございます。
必ずお客さまの保険証券、約款、重要事項説明書の記載などをご確認ください。
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