エコカー減税とは、エコカーにかかる税金を安くする国の政策です。燃費がよく、かつ排ガスがクリーンなクルマを普及させること、また国の基幹産業として経済や雇用を支える自動車産業をリーマンショックから守ることを目的に2009年にスタートしました。
当時は3年間の時限措置との触れ込みでしたが、基準を変えつつ何度も延長され現在に至っているのは、CO2削減を目指す世界との協調において、エコカー普及策がますます重要度を増しているという認識を国がもっているからです。
税金を払うのは国民の義務ですが、払わなくてもいい税金を払う必要はないのも事実。ということで、2017年度の乗用車販売台数のうち、なんと約8割がエコカー減税対象車なのです。スポーツカーや輸入車といった趣味性の高いクルマであればエコカー減税対象車でなくても買う方はいますが、一般的なクルマの場合、もはやエコカー減税対象外のクルマは購入候補から外されてしまうのが現実と言っていいでしょう。事実、いま各メーカーのラインナップにはエコカー減税対象車ばかりがズラリと並んでいます。
その結果、国にとっては困ったことが起こりました。減税対象車ばかりが売れた結果、平成27年度の自動車重量税の税収は、エコカー減税導入前の平成20年度に比べて4,000億円程度減ってしまったのです。
とはいえ、自動車ユーザーの一人として発言するなら、そもそもクルマにかかる日本の税金は高すぎです。燃料にかかる税金を含めると実に9種類の税金(自動車税、軽自動車税、自動車重量税、自動車取得税、揮発油税、地方揮発油税、軽油取引税、石油ガス税、消費税)が課せられ、自動車関係の税収は年間8兆円を超えます。
税目 | 金額(億円) | 割合(%) |
---|---|---|
法人税 | 197,521 | 19.7 |
消費税 | 196,247 | 19.5 |
所得税 | 179,480 | 17.9 |
固定資産税 | 89,875 | 8.9 |
自動車関係諸税 | 82,336 | 8.2 |
酒税 | 13,110 | 1.3 |
印紙収入 | 10,920 | 1.1 |
その他 | 235,414 | 23.4 |
租税総収入(国税+地方税) | 1,004,903 | 100 |
ユーザーが支払う1台あたりの税額にしても、アメリカの3倍。しかも日本の高速道路は有料なので、それも隠れた税金のようなものと考えれば格差はさらに拡がります。
そう考えると、4,000億円程度は黙ってユーザーに還元するのが筋だと思うのですが、そうもいかないのが現実ということで、国はエコカー減税の意義を保ちつつ、税収を確保する方法を編み出してきました。それが、2018年に実施される、より厳しくなったエコカー減税のルールです。
まずは簡単におさらいをしておきましょう。エコカー減税対象となるのは
①自動車取得税
②自動車重量税
③自動車税(軽自動車の場合は軽自動車税)
という3種類の税金。
それぞれの車種の「エコ度」に基づいて減税額が決まってくるのですが、2017年に続き、2018年も適用条件の厳格化が実施されました。
エコカー減税の対象となる税金 | ||||
---|---|---|---|---|
場面 | 取得したとき | 保有したとき | 利用したとき | 走っているとき |
普通車 | ①自動車取得税(地方税) | ③自動車税(地方税) | ②自動車重量税(国税) | ガソリン車(乗用車等):揮発油税及び地方揮発油税(国税) ディーゼル車(トラック等):軽油引取税(地方税) LPG車(タクシー等):石油ガス税(国税) |
軽自動車 | ①自動車取得税(地方税) | ③軽自動車税(地方税) | ②自動車重量税(国税) | ガソリン車: 揮発油税及び地方揮発油税(国税) |
新ルール 適用タイミング | 2018年4月から | 2018年5月から |
出典:財務省ウェブサイト Q&A 〜身近な税について調べる〜より抜粋し加工
このうち①は4月から、②も5月から新ルールが適用されます。その結果、多くの車種で増税(厳密には増税ではなく減税ルールの厳格化)となります。
たとえばエコカー減税を受けられる最低基準は「2015年度(平成27年度)燃費基準+10%」(車重1,300sの場合、19km/L)から「2020年度(平成32年度)燃費基準達成車」へと格上げ(同、20.3km/L)され、その結果多くのガソリンエンジン車がエコカー減税対象から外れることになります。
期間 | 2017年4月1日〜 2018年3月31日 |
2018年4月1日〜 2019年3月31日 |
|
---|---|---|---|
電気自動車等 | 非課税 | 非課税 | |
2020年度基準 +40%達成 |
非課税 | 非課税 | |
+30%達成 | 非課税 | → | ▲80% |
+20%達成 | ▲60% | ▲60% | |
+10%達成 | ▲40% | ▲40% | |
達成 | ▲20% | ▲20% | |
2015年度基準 +10%達成 |
▲20% | → | - |
+5%達成 | - | - |
出典:財務省ウェブサイト Q&A 〜身近な税について調べる〜より抜粋し加工
期間 | 2017年5月1日 〜2018年4月30日 |
2018年5月1日〜 2019年3月31日 |
|||
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1回目車検 | 2回目車検 | 1回目車検 | 2回目車検 | ||
電気自動車等 | 免税 | 免税 | 免税 | 免税 | |
2020年度基準 +50%達成 |
免税 | 免税 | 免税 | 免税 | |
+40%達成 | 免税 | 免税 | 免税 | ||
+30%達成 | 免税 | → | ▲75% | ||
+20%達成 | ▲75% | → | ▲50% | ||
+10%達成 | ▲50% | → | ▲25% | ||
達成 | ▲25% | ▲25% | |||
2015年度基準 +10%達成 |
▲25% | → | ※本則 | ||
+5%達成 | ※本則 | → | |||
達成 | - |
※ガソリン車への配慮、円滑な基準の切替えの観点から、経過措置として、ガソリン車(ハイブリッド、軽除く。新車のみ)には本則税率適用。
出典:財務省ウェブサイト Q&A 〜身近な税について調べる〜より抜粋し加工
ハイブリッドカーも例外ではありません。「2020年度(平成32年度)燃費基準+30%」(同、26.4km/L)というかなりの低燃費を実現している車種は、従来は税金を納めずに済んでいましたが、今後は自動車取得税が「80%減税」、自動車重量税が「75%減税」へと負担増になります。
たとえば2018年5月以降に車両価格200万円、重量1.3トンの新車を購入する場合、「2020年度(平成32年度)燃費基準+30%等達成」で、購入時の支払い税額は合わせて1.6万円程度増えることになります。
期間 | <2017年度> 2017年4月1日〜 2018年3月31日 |
<2018年度> 2018年4月1日〜 2019年3月31日 |
備考 |
---|---|---|---|
電気自動車等 | 0 | 0 | 重量税免税、取得税非課税 |
2020年度基準 +40%達成 |
0 | 0 | 重量税免税、取得税非課税 |
+30%達成 | 0 | 16,400円 | 重量税免税、取得税非課税→重量税75%、取得税80%軽減 |
+20%達成 | 27,200円 | 27,200円 | 重量税75%、取得税60%軽減 |
+10%達成 | 43,600円 | 43,600円 | 重量税50%、取得税40%軽減 |
達成 | 60,000円 | 60,000円 | 重量税25%、取得税20%軽減 |
2015年度基準 +10%達成 |
60,000円 | 90,900円 | 重量税25%、取得税20%軽減→エコカー減税対象外 |
一般自動車 | 90,900円 | 90,900円 | エコカー減税対象外の車 |
出典:財務省ウェブサイト Q&A 〜身近な税について調べる〜より抜粋し加工
トヨタ・アルファードのハイブリッドモデルは「2020年度(平成32年度)燃費基準+30%」でしたが、先日のマイナーチェンジで「2020年度(平成32年度)燃費基準+50%」(同、30.5km/L。アルファードの重量基準では17.9L)を達成してきました。減税額は販売実績に直結するため、自動車メーカーは少しでも減税額の多いクラスを狙ってきます。
一方、依然として非課税、免税を享受し続けるのが、次世代自動車です。電気自動車の他、燃料電池自動車、プラグインハイブリッド車、天然ガス自動車、クリーンディーゼル車が含まれます。
これらの車種は重量がいくらあろうと、燃費がどの程度であろうと税金を払う必要はありません。また、減税に加えて購入補助金も出ます。国が強力に普及の後押しをしていることがよくわかります。
種類 | 特徴 | 主なクルマ |
---|---|---|
燃料電池自動車(FCV) | 酸素と水素を化学反応させて発電する燃料電池を搭載。発電した電気でモーターを動かすクルマのこと。 |
|
電気自動車(EV) | 電気を主動力として動くクルマのこと。ガソリンを一切使わないので、CO2を排出しないのが最大の特徴。 |
|
天然ガス自動車(NGV) | 天然ガスを燃料とするクルマのこと。石油系の燃料(ガソリン、軽油、LPG)を使わない代替エネルギー車として普及が進んでいる。 |
|
ハイブリッド自動車(HV) | ガソリンを主電源とするエンジンと、電気で動くモーターの2つを組み合わせて動かすクルマのこと。 |
|
プラグインハイブリッド自動車(PHV) | ハイブリッド車に搭載されているモーターの電力を直接コンセントから充電できるようにしたクルマのこと。 |
|
クリーンディーゼル自動車(乗用車) | 「ポスト新長期規制」という排ガス規制の基準に適応する、粒子状物質(PM)や窒素酸化物(NOX)の排出量が少ないクルマのこと。 |
|
電気自動車やプラグインハイブリッド車は理解できるとして、意外に感じるのはディーゼル車の扱いでしょう。補助金の額は少ないとはいえ、海外では大気汚染の元凶とされ風当たりが強くなっているディーゼル車をなぜ免税にするのか?これは、日本で販売されているディーゼル車の排ガスがクリーンだからです。
海外では有害物質を多く発生する古いタイプのディーゼル車がいまだ多く走っていますが、日本はいち早くディーゼル車に「ポスト新長期規制」という厳しい排ガス規制を課したため、もともとクリーンなディーゼル乗用車しか存在しません。となれば、ディーゼル車のもつ優れた燃費=CO2排出量の少なさは大きなメリットになります。
このように、燃費のいいクルマの開発を促し、それをユーザーに買ってもらい、結果としてエコカーを増やし、CO2を削減するというエコカー減税の狙いは、おおむね正しい方向にあると言っていいでしょう。
ただし、行きすぎた燃費追求には思わぬ落とし穴があります。もちろん、資源・環境問題を考えれば、少しでも燃費をよくするのは正義です。けれども、エコカー減税狙いのなりふり構わぬカタログ燃費追求は、クルマの走行性能をスポイルしてしまう恐れがあるのです。
最近の例でいうと28km/Lというガソリン登録車クラストップの燃費を誇るトヨタ・パッソ&ダイハツ・ブーン。CVT(無段変速機)のセッティングを燃費測定時に使うJC08モードに合わせすぎたため、普段の走行での加速性能がかえって悪くなり、場合によってはアクセルを余計に踏み込む必要があるのです。
カタログ燃費はわずかに落ちるでしょうが、あと10%程度エンジンの回転数を上げ気味に走らせればもっとずっとスムースに気持ちよく走れますし、アクセル開度(ガソリン消費量)も小さくなり実用燃費はむしろ向上するはず。
転がり抵抗※の小さい低燃費タイヤによるゴツゴツした乗り心地や、濡れた路面でのグリップ性能も、燃費追求による悪影響です。もちろん、コストをかければ転がり抵抗と性能を両立したタイヤを装着することも可能ですが、115万円〜という低価格が最大の売りであることを考えると贅沢もできません。
※転がり抵抗とは、タイヤが転がるときに進行方向と逆向きに生じる抵抗力のこと。
そうなったとき、カタログ燃費をとってしまうのがいまの傾向ですが、たとえ燃費が28km/Lから26km/Lに下がったとしても、より快適で走りやすいCVTのセッティングやタイヤの選択をすれば、走りやすさや快適性、安全性は大きく変わるでしょう。
パッソ&ブーンだけでなく、燃費狙いで走りをスポイルしている例は他にもたくさんあります。エコカー減税は車重ごとに燃費が細かく規定されているため、メーカーは「あと少しで1クラス上になる」というとき、実用燃費やタイヤの性能と引き換えに燃費を引き上げる誘惑に駆られてしまうのです。その気持ちもわかりますが、クルマを評価する専門家である僕からすると、燃費も大切ですが、それよりもっと大切なことがあるのではないでしょうか。
そんな風潮を変えるにはメーカーの意識改革が必要ですが、メーカーの意識を変えるのは他ならぬわれわれユーザーの声。燃費は意識しつつ、けれどもわずかな燃費の違いに過剰反応するのではなく、本当の意味での「いいクルマ」を求めることが、メーカーを動かし、安全で快適なクルマを生みだすことに繋がると思うのです。
※ 本記事は著者個人の見解・意見によるものです。
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