更新日:2023年2月1日
公開日:2017年9月5日
自動車運転の事故には、相手がいる事故と、相手がいない「自損事故」があります。
自損事故の定義や事故を起こしてしまった場合に取るべき行動、自損事故の損害を補償してくれる保険の種類や範囲についてご説明します。
自損事故とは、当事者が運転者のみの事故です。
たとえば、運転手自身が運転をあやまり、運転手が死傷するケースです。
これは、「物損事故」のひとつとして扱われます。
自分の過失が100%の事故であるため、「自損」「自爆」「単独事故」と呼ばれることもあります。
具体的には次のような事例が、自損事故に該当します。
いずれの事例にも共通するのは「自分の運転ミス」であること。そして、当事者が運転手本人のみであるという点です。
当事者が運転手自身のみであるため、自分の判断でその場をしのいでしまいがちです。警察への届出をしないケースが少なくありませんが、後々トラブルになることがあります。
自損事故は交通事故のひとつです。運転手名義の家屋に突っ込んでしまった場合でも、警察への報告義務があるのです。
自損事故の届出は、その場で警察に電話して、主に以下の内容を伝えます。
道路交通法では車両などの交通による死傷または、物の損壊を交通事故として定義しています。そのため、自損事故や物損事故も「交通事故」に該当します。
つまり他の事故と同様、自損事故も道路交通法72条の「緊急措置義務」と「警察への報告義務」が課せられています。
車を擦った程度であっても、交通事故には変わりはありません。
事故の大きさにかかわらず、交通事故が起きた場合には運転者は警察に報告する義務がある旨が道路交通法第72条第1項に定められています。車を擦った程度であっても、必ず警察に届出を行いましょう。
物を壊しただけだし、他人を巻き込んでいるわけではないから黙ったままにしておこうと思ってしまうかもしれません。
やはり「違反点数」と「罰金」のことが気になって、ということがあるでしょう。
しかし、自分だけが損害を被った自損事故は警察に連絡すれば処罰の対象にならず、違反点数の加点や罰金はありません。
では電柱や、ガードレールなどの公共物を擦った場合はどうなるでしょう?
そのような物損事故の場合でも、警察に連絡をすれば「行政処分」と「刑事責任」の処罰対象にならないので心配の必要はありません。(電柱やガードレールなどに損害があれば賠償する必要はあります)
ただし、例外が存在します。それは「当て逃げ」です。
道路交通法第72条「交通事故の場合の措置」により「道路における危険を防止する等必要な措置を講じる義務」および「警察官・警察署に事故発生の事実を報告する義務」があるとされています。
これを怠ったことを、俗に「当て逃げ」と呼んでいます。
軽く接触しただけだからと、そのまま報告しなかった場合、警察に当て逃げとして検挙されれば罰則の対象になります。
「安全運転義務違反」2点と「措置義務違反 物損(当て逃げ)」5点の合計7点の違反点数が加算されるのです。
これは、事故の前歴にもよりますが、少なくとも最低30日間は免許停止処分となってしまう点数です。
報告義務の不履行については、3ヵ月以下の懲役または5万円以下の罰金となります。当然、ゴールド免許は次回更新からブルーへと変更になります。
届出をした場合に比べ、しなかった場合は非常に厳しい処分が下されることを覚えておきましょう。
「交通事故証明書」とは、交通事故が起こったことを公的に証明するための書類です。
保険金請求の際に必要となる場合が多い書類ですが、任意保険に入っていれば保険会社が契約者の代わりに取得してくれます。
しかし、警察を呼ばなかった場合は「交通事故証明書」を取得できません。
相手がいない自損事故でも程度の軽い、重いにかかわらず、速やかに警察へ届出るようにしましょう。
自損事故した場合には、周囲にけが人がいないか確認して警察へ連絡しましょう。そして警察が到着するまで待機する場合、車を路肩に移動させてハザードランプで、後続車に事故を知らせる行動が必要です。
では、自損事故を起こしたら、どのような自動車保険が使えるのでしょうか。
相手がいない自動車事故であっても運転者自身や同乗者がケガをすることもありますし、当然自分の車も損害を負うでしょう。
ここでは、自損事故と自動車保険の関係について見てみましょう。
法的に加入義務のある「自賠責保険(自賠責)」は被害者救済を目的としているため、運転者自身は補償の対象外です。「対人賠償保険」も相手がある事故の相手方の補償ですので、補償の対象外となります。
自損事故で自分が死傷したときに適用される補償には、以下があります。
自損事故で運転者以外の同乗者が、死傷してしまった場合に適用される補償は、以下となります。
相手がいない自損事故で自分の車の損害を補償してくれるのは、「車両保険」のみです。
このように、相手がいない自損事故の場合、他人である同乗者については強制加入である「自賠責保険」から補償が受けられます。しかし、運転者本人には保険金が支払われません。
また、運転者の100%の過失で運転者がケガをするなどの自損事故のリスクは、「任意保険」で備えるしかありません。
自損事故(単独事故)での損害を補償してくれる「任意保険」を、一覧にまとめました。
人身傷害保険 | 搭乗者傷害保険 | 対人賠償保険 | 車両保険 | 対物賠償保険 | 自損事故保険 | 自賠責保険(強制) | |
---|---|---|---|---|---|---|---|
運転者自身が死傷 | ○ | ○ | × | × | × | ○ | × |
運転者以外の同乗者が死傷 | ○ | ○ | ○(※) | × | × | ○ | ○ |
自分の車にキズをつけた | × | × | × | ○ | × | × | × |
他人の所有物を壊した | × | × | × | × | ○ | × | × |
車庫の壁など、車以外の自分の所有物を壊した | × | × | × | × | × | × | × |
自分のせいで同乗した家族にケガをさせてしまった場合には、対人賠償保険では補償されない点に注意が必要です。人身傷害や搭乗者傷害など、保険金支払いについても理解してうえで加入しましょう。
運転者を含む搭乗者全員が自動車事故で死傷してしまった場合、過失割合(責任の割合)にかかわらず、損害の総額を受け取ることが可能です。また、示談交渉を待たずに総損害額が支払われますが、損害額が決定するまで多少の日数が必要になります。
運転者を含む搭乗者全員を対象に受傷した内容に応じて、あらかじめ決められた金額が支払われる保険です。定額の保険金が支払われるため、保険金をスピーディーに受け取ることができる点がメリットです。
自動車事故で他人を死傷させ、法律上の賠償責任を負った際に補償される保険です。運転者自身は補償されませんが、歩行者や相手の車に乗った方、同乗者がケガをした場合に支払われる保険です。ただし、家族(父母・配偶者・子どもなど)は補償対象外なので注意が必要です。(上記表※)
自分の車のための補償です。事故や盗難の被害などで車に損害が発生した場合に、保険金が支払われます。車両保険と一言でいっても、種類によってカバーできる範囲が異なります。こちらについては、後ほど詳しく説明します。
自動車事故で、他人の車や家屋などの所有物を壊してしまった場合に補償が支払われる保険です。
通常の事故であれば相手自動車を修理する際に使われることが多いですが、自損事故の場合でも、信号機や電柱、ガードレールなどの「物」にも適用されます。ただし、自分の車や家屋など、「自分の所有物」には使用できません。
運転者や同乗者が死傷した場合の補償です。任意保険に自動付帯されていることが多いです。チューリッヒのスーパー自動車保険では2013年10月以降、自損事故は人身傷害保険で補償されています。
任意保険を契約していれば自損事故の損害も補償されますが、一般的に、保険を使って補償を受けると、契約している任意保険の等級(ノンフリート等級)が 3等級または事故の種類により1等級下がり、翌年度の保険料が高くなります。
そのため、自損事故による損傷が軽微な場合、車両保険を使わず自費で直そうとするケースが少なくありません。中には等級が下がらない保険もあるので、使い分けていくのが賢明です。
車両保険、対人賠償保険、対物賠償保険
人身傷害保険、搭乗者傷害保険
保険金を請求しても翌年度の等級や保険料に影響がなく、事故件数として数えない事故を「ノーカウント事故」と呼びます。
「ガードレールにぶつかりそうになったので急ブレーキを踏んだ。結果的に衝突はしてしまったが、幸いガードレールには破損がなく、自分の車も少しのキズで済んだ。しかし、急ブレーキによって同乗者が身体の一部を車内にぶつけてケガをしてしまった」。
ガードレールが無事で、自分の車の損傷も少ない状態のため、対物賠償保険や車両保険は使用せずに済みそうです。
しかし、同乗者のケガの具合によっては、病院での治療が必要になります。この治療費に利用する保険は人身傷害保険や搭乗者傷害保険となり、「等級が下がる保険」をひとつも利用していないことになりますので、翌年度の等級に影響はありません。
では、自損事故で保険を使うか使わないか、何を基準に判断すればよいのでしょうか。
他人の物や自分の車の損害が大きい場合は、保険の利用を検討しましょう。等級が下がり、翌年以降支払う保険料が高くなっても、弁償にかかる修理代を払うより全体として負担が軽くなるかもしれません。
自損事故(単独事故)は当事者が運転手本人のみである事故ですが、たとえ軽微な事故であっても警察は呼ばなければなりません。
自損事故で利用できる任意保険は、人身傷害保険、搭乗者傷害保険、対人賠償保険、車両保険、対物賠償保険、自損事故保険です。
それらのうち車両保険、対人賠償保険、対物賠償保険を使用すると翌年度の等級が下がります。
保険を使う際には等級が下がることによって翌年度の保険料が高くなる可能性があるため、損害の程度に応じて保険を使うかどうか判断することをおすすめします。
※記載の情報は、2022年12月10日時点の内容です。
ファイナンシャル・プランナーで一児の母。大手損害保険会社を経て2010年に独立開業。
個別相談や執筆、セミナー講師として活躍中。企業研修や女性向けに賢いお金との付き合い方を伝えている。
K'sプランニング代表/一般社団法人あんしんLifeコミュニティ 代表理事
CFP®、一級ファイナンシャル・プランナー技能士
※本記事の内容は特段の記載がない限り、チューリッヒの保険商品ではなく、一般的な保険商品の説明です。
※チューリッヒの自動車保険に関する内容について
本記事内で紹介しているチューリッヒの自動車保険に関する内容につきましては、ご契約の保険始期および契約条件によって、ご契約のお客さまに適用されない場合がございます。
必ずお客さまの保険証券、約款、重要事項説明書の記載などをご確認ください。
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