更新日:2023年6月13日
公開日:2017年9月5日
自動車保険(任意保険)の主要な補償のひとつに、対人賠償保険と対物賠償保険(以降対人・対物賠償保険)があります。
対人・対物無制限とは、対人賠償保険と対物賠償保険の保険金額を無制限にすることです。交通事故の加害者に多額の損害賠償が請求された裁判例もあります。
万が一に備え、対人・対物賠償保険は無制限にしましょう。
対人・対物無制限の意味や、交通事故で発生する賠償金の種類と額などについてご説明します。
対人・対物賠償保険の保険金額は無制限を選ぶことをおすすめします。
対人賠償保険の場合は、自賠責保険から支払われる補償もあります。
しかしながら、相手を死亡させてしまった場合や後遺障害を負わせてしまった場合などは賠償額が多額に上り、自賠責保険だけではカバーできない可能性もあります。
自己資金で十分な賠償をできないリスクに備え、対人賠償保険の保険金は無制限を選ぶ方が多くなっています。
対物賠償については、自賠責保険では補償されません。したがって、物損事故による損害賠償を求められた場合は全額を自己負担するか、加入している任意の自動車保険の対物補償保険を使うことになります。
交通事故では相手方の車にぶつけてしまうケースの他、ガードレールや電柱に衝突したり、店舗に突っ込んでしまったりするケースもあります。
対物賠償では、修理費用に加え、営業できない期間の営業補償なども補償の対象になります。したがって、状況によっては多額の賠償金が発生する可能性があり、対物賠償保険の保険金額(保険金の支払限度額)も無制限に設定することが一般的となっています。
対人・対物無制限とは、支払われる保険金の限度額に制限がないことを意味します。
しかしながら、保険金の支払い対象となるのは、法律上の賠償責任が発生した部分です。
賠償責任の負担額を超えて、無制限に保険金が支払われるわけではありません。
自動車保険(任意保険)の対人賠償保険は、事故によって他人にケガをさせてしまった場合や、死亡させてしまった場合に備えた保険です。
自動車を所有している方は、任意保険とは別に、強制保険とも呼ばれる自賠責保険に必ず加入しなければいけません。
自賠責保険では、被害者にケガをさせてしまったときに限度額120万円、後遺障害を負わせてしまった場合にはその障害に応じて限度額4,000万円(第1級)、被害者がお亡くなりになった場合には限度額3,000万円の補償がなされます。
しかし、被害の状況によっては自賠責保険で補償できる上限金額を超える、多額の賠償金を請求されることがあるため、自賠責保険だけでは十分な備えができているとは言えないのです。
自賠責保険と任意保険の対人賠償保険の違いを、表にまとめました。
自賠責保険 | 対人賠償保険 | |
---|---|---|
補償範囲の違い | 運行供用者・運転者以外の者であれば、被保険者の父母、配偶者、子の親族間事故も補償 | 他人への損害賠償が対象 被保険者の父母、配偶者、子は補償対象外 |
保険金の支払い対象となる事故 | 自動車の運行によって生じた人身事故 | 自動車の所有、使用、管理によって生じた人身事故 |
被保険者の範囲 | 被保険自動車の保有者、運転者 |
|
過失の割合 | 被害者に7割以上の重大な過失があったときのみ。 過失の程度に応じて、損害賠償額は減額される。 |
民法の一般原則による過失相殺を行う |
対人賠償保険は、契約している車を運転中に他人にケガをさせてしまったり、他人を死亡させてしまった場合の治療費や慰謝料を補償するものです。
具体的には、次のようなケースが対人賠償保険の補償の対象となります。
対人賠償保険で補償する場合 |
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対人賠償保険を利用する事故は、3等級ダウン事故に該当します。
1回対人賠償保険を使うと、翌年度の契約の等級は3等級下がります。
次に、対物賠償保険についてご説明します。
対物賠償保険は、契約している車の事故によって他人の所有する自動車や家屋、所有物などを壊し、修理費用などの損害賠償責任を負った場合に補償するものです。
具体的には、次のようなケースが対物賠償保険の補償の対象となります。
対物賠償保険で補償する場合 |
|
---|
対物賠償保険は、3等級ダウン事故に該当します。
したがって、対物賠償保険を1回使用すると、翌年度の等級は3等級下がります。
対人・対物無制限で補償対象となるのは、「他人」が死傷した場合や「他人」の所有物を壊してしまった場合です。
したがって、対人・対物賠償保険だけでは、ドライバー自身や同乗する家族などのケガ、自身が所有する車の損害には備えられません。
自動車保険の契約をする際には、自身や同乗者のための補償である人身傷害保険や車のための補償である車両保険など、必要な保険を組み合わせて契約するようにしましょう。
人身事故を起こしたときに生じる賠償金には、どのようなものがあるのでしょうか。
賠償金の具体的な内容をご説明します。
事故の被害者が何らかのケガをした場合には、その治療費の負担をしなければなりません。もし入院や、手術をする事態になると、高額な費用を請求される可能性があります。
また、高度な医療技術や薬剤による治療は、健康保険等の公的な医療保険が適用されない可能性があります。
その場合保険外併用療養費で、全額治療費を負担しなければならないこともありえます。
事故の被害者が入院すると、その間は仕事ができなくなります。これにより、給料や報酬が減額された場合には、その分の補償をしなければなりません。
なお、相手が専業主婦の方ならば、その家事労働をベースにして請求されます。
交通事故の被害者やその家族には、必要のない苦痛を与えてしまいます。
その苦痛に対する慰謝料も、加害者側が負担しなければなりません。
一般的に交通事故の場合、入通院慰謝料と後遺障害慰謝料、死亡慰謝料などが請求されます。
交通事故の被害者に後遺障害が残ってしまったり、被害者が事故で亡くなってしまったりすれば、本人やその家族が将来的に受け取ることができるはずだった収入を失います。
このことを逸失利益といい、人身事故で請求される賠償金のひとつです。
車の修理代や治療費などと違い、金額のイメージが湧かないのが慰謝料や逸失利益でしょう。たとえ専業主婦(主夫)で給与収入がない方でも「家事労働」は仕事として認められており、女性労働者の平均賃金に相当する金額で計算される可能性もあります。
他人が所有する物を壊してしまった場合は、修理費用や買い替え費用などの損害賠償請求が行われます。物損被害の損害賠償は、対物賠償保険から支払われます。
対物賠償保険は、自動車事故で、他人の車や家屋、物を壊してしまった場合の補償です。
ガードレール、信号機、電柱、電車、店舗なども、補償の対象となります。
人身事故で請求される損害賠償金は、被害の程度や後遺障害の有無、年齢、職業などによって異なります。
相手がお亡くなりになったり、日常生活に支障をきたすような後遺障害が残ったりすると、数億円といった莫大な賠償金を請求される可能性があります。
ここでは、過去の判例や裁判例の一部を、ご説明いたします。
認定 損害額 |
様態 | 判決年月日 | 被害者 |
---|---|---|---|
5億2,853万円 | 死亡 | 2011.11.1 | 男性 41歳 眼科開業医 |
4億5,381万円 | 後遺障害 | 2016.3.30 | 男性 30歳 公務員 |
4億5,375万円 | 後遺障害 | 2017.7.18 | 男性 50歳 コンサルタント |
4億3,961万円 | 後遺障害 | 2016.12.6 | 女性 58歳 専門学校教諭 |
3億9,725万円 | 後遺障害 | 2011.12.27 | 男性 21歳 大学生 |
出典:損害保険料算出機構 2021年度(2020年度統計)自動車保険の概況
※2023年4月執筆現在
人身事故を起こした場合は、自賠責保険の3,000万円、4,000万円の保険金額では認定損害額を満たせないことも想定されます。
対人賠償保険の保険金額を下げて、保険料を節約することを検討される方もいるかもしれません。
しかし、万が一交通事故を起こしてしまった場合、認定損害額が高額となるケースもありますので、対人賠償保険の保険金額は無制限に設定することをおすすめします。
なお、チューリッヒの自動車保険では、対人賠償保険を原則「無制限」でご案内しています。インターネットでのお手続きの場合は、無制限のみのお引受けとなります。
またチューリッヒの自動車保険の場合、対人賠償保険金の他に臨時費用保険金も支払われます。
臨時費用保険金とは、相手がお亡くなりになった場合、もしくは20日以上入院した場合に、見舞品代や香典などの費用を補償するための保険です。
被害者1名に付き、お亡くなりになった場合には10万円、20日以上の入院の場合には2万円をお支払いします。
自動車保険に付帯できる弁護士費用特約の普及により、弁護士が交渉に入るケースが増えています。慰謝料や逸失利益の基準額は保険会社の提示よりも高くなる傾向があるため、いざというときの備えとして対人・対物賠償保険は手厚くしておきたいものです。
自動車保険の対人・対物無制限とは、対人賠償保険と対物賠償保険の保険金額を無制限にすることであり、法律上の賠償責任部分に関して無制限で補償することを意味します。
人身事故や物損事故では、多額の損害賠償金を請求されるケースがあります。
昨今では、高額な賠償責任が命じられる判決も下されており、自賠責保険だけでは十分な補償ができない可能性があります。
万が一の事態に備え、対人対物保険の保険金額は無制限にすることをおすすめします。
※記載の情報は、2023年4月20日時点の内容です。
ファイナンシャル・プランナーで一児の母。大手損害保険会社を経て2010年に独立開業。
個別相談や執筆、セミナー講師として活躍中。企業研修や女性向けに賢いお金との付き合い方を伝えている。
K'sプランニング代表/一般社団法人あんしんLifeコミュニティ 代表理事
CFP®、一級ファイナンシャル・プランナー技能士
※本記事の内容は特段の記載がない限り、チューリッヒの保険商品ではなく、一般的な保険商品の説明です。
※チューリッヒの自動車保険に関する内容について
本記事内で紹介しているチューリッヒの自動車保険に関する内容につきましては、ご契約の保険始期および契約条件によって、ご契約のお客さまに適用されない場合がございます。
必ずお客さまの保険証券、約款、重要事項説明書の記載などをご確認ください。
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