交通事故を起こし、損害賠償責任があると認められた場合には、損害賠償金に加え、判決主文で定められた日から支払いの日までの期間の利息に相当する支払いを求められる可能性があります。
それが遅延損害金です。
遅延損害金は、通常は法定利率に基づき計算されますが、この法定利率が民法改正により2020年4月1日以降見直されています。
本記事では、遅延損害金の基本的なしくみ、見直された算定方法を交通事故の場合に照らしてご説明します(2020年6月執筆現在)。
遅延損害金とは、債務の履行が遅れた場合に支払わなくてはならない損害賠償金のことを指します。
交通事故においては、被害者は加害者に対して慰謝料などの損害賠償金の支払いを求めますが、損害賠償金に加えて、遅延損害金が支払われるケースがあります。
遅延損害金とは、損害賠償債務のような金銭債務が、その支払期限に支払われなかった場合、つまり遅れたことによって発生した損害の賠償金で、民法上認められています。
遅延損害金の具体的な計算方法は後ほど説明しますが、当事者同士の合意がない限り、「法定利率」と呼ばれる利率に基づき計算されます。
この法定利率は、民法第404条の規定により年5分(5%)と定められていましたが、民法改正によって2020年4月1日以降の交通事故については引き下げられていますので、後ほどご説明します。
損害賠償の金額が高額で、解決までに時間を要しているようなケースでは、遅延損害金も高額になる場合もありますので、そのしくみをきちんと理解しておくことが大切です。
2020年4月1日に「民法の一部を改正する法律」が施行され、事件や事故によって発生する損害賠償請求権に関するルールが変わりました。
この改正では、損害賠償請求権について、次の2点の見直しがされています。
このうち、2の内容が、法定利率の引き下げに関連するものとなっています。
ご説明したとおり、これまで、法定利率は年5%と定められていましたが、改正により年3%に引き下げられています。
また、市中金利の動向に合わせて3年毎に自動的に法定利率が変動するしくみも導入されています。
これまでは年5%で法定利率は固定されていましたが、今後は変動する可能性があるため、注意が必要です。
被害者の立場から考えると、法定利率が下がることで、受け取る金銭が減ると思われるかもしれませんが、そうとは限りません。
なぜなら、法定利率が下がれば遅延損害金が減る一方で、損害賠償金が増える可能性があるからです。
損害賠償金の算定においては、将来において取得すべき利益(逸失利益)を現在価値に換算することになります。
このとき、法定利率に応じた中間利息が差し引かれます。
今回の民法改正によって法定利率が下がったため、損害賠償金から差し引かれる中間利息が少なくなり、結果として損害賠償金が増える方向にはたらくのです。
いずれにしても、損害賠償金や遅延損害金を算定するうえで、法定利率は重要な要素となります。改正内容や影響は、きちんと理解しておきましょう。
最後に、遅延損害金の計算方法と請求方法について見ていきます。
遅延損害金は、次の算式で求めることができます。
遅延損害金=損害賠償金×利率×交通事故日から賠償金支払日までの期間/365
交通事故の場合、損害賠償額を本来払うべき日は、事故の当日とされていますので、結局事故日から年3%の遅延損害金が付加されることになります。
上記の計算式からわかるとおり、遅延損害金は、損害賠償金が高いほど、また交通事故日から賠償金支払日までの期間が長いほど、高額になります。
利率については通常は法定利率が用いられますが、当事者の合意により変わる可能性もあります。
それでは、遅延損害金の計算をシミュレーションしてみましょう。
たとえば損害賠償金が1億円として、交通事故日から賠償金支払日まで1年(365日)かかったとします。
この場合、1億円×3%×365/365=300万円になります。
不法行為による損害賠償債務は、損害の発生日から生じ、この日が遅延損害金を算出する際の起算日となります。
交通事故の場合は、交通事故日(交通事故が発生した日)が起算日となり、賠償金が支払われるまでの日数に応じた遅延損害金が算定されます。
なお、交通事故により生じた後遺障害に対応する遅延損害金も、交通事故日を起算日として算定されます。
後遺障害に対応する損害賠償金そのものは病状固定をし、等級が認定された時点で算定されますが、遅延損害金の起算日は交通事故日まで遡るということです。
遅延損害金を確実に受け取るには、訴訟を提起し、判決を受ける必要があります。
訴訟を起こし、判決によって賠償問題を解決する場合は、時間も労力もかかりますので、弁護士に相談することになります。
金銭債務の支払いが遅れた場合の、損害賠償の遅延損害金についてご説明してきました。
加害者が損害賠償金の支払いを怠った場合は遅延損害金を支払わなければなりません。
この遅延損害金については、当事者の合意がない場合、適用される利率が法律で定められており、2020年4月1日の民法改正によって、法定利率が引き下げられました。
遅延損害金の計算や請求方法については、一読しただけではわからないことも多かったことでしょう。
損害賠償金や遅延損害金について、さらに詳しく知りたいという場合は、専門家に相談することをおすすめします。
最後に、車を所有されている方は、チューリッヒの自動車保険をご検討ください。
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※記載の情報は、2020年6月時点の内容です。
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