更新日:2024年9月6日
公開日:2023年10月23日
自動運転車とは、ドライバーの代わりに自動運転システムが認知や判断、運転操作(アクセル、ブレーキ、ステアリング操作など)を行う車のことです。
現在市販されている車にも、GPSやレーダー、センサー、カメラなどが搭載され、走行時に道路の中央を走行させたり、衝突被害を軽減させたりする安全技術として活用されています。
完全自動運転車は、すでに導入されている車の自動制御技術をさらに発展させ、人間の運転操作をシステムがすべて代替する車を指します。
自動運転のレベルは国際的な基準として現在のところレベル1〜5に分けられており、日本ではレベル4での自動運転移動サービスの提供が開始されています。
自動運転の概要と、自動運転レベル4、完全自動運転となるレベル5の現状についてご説明します。
自動運転レベルは、レベル1〜5までの5つの段階に分けられています。
自動運転レベル | 概要 |
---|---|
レベル1 | 運転支援:システムがアクセル・ブレーキ操作またはハンドル操作のいずれかを条件下で部分的に実行 |
レベル2 | 特定条件下での自動運転機能:システムがアクセル・ブレーキ操作またはハンドル操作の両方を条件下で部分的に実行 |
レベル3 | 条件付自動運転:システムがすべての運転操作を一定の条件下で実行。システムの介入要求等にドライバーが適切に対応 |
レベル4 | 特定条件下における完全自動運転:システムが特定条件下ですべての運転操作を実行 |
レベル5 | 完全自動運転:システムが常にすべての運転操作を実行 |
自動運転レベル1は、運転支援(自動で止まる、前の車について走る、車線からはみ出さないなど)のレベルであり、システムが前後・左右のいずれかの制御機能を実行します。
レベル2は、車線を維持しながら前の車について走行する機能、高速道路での自動運転などで、レベル2までの機能はすでに市販車にも実装されています。
自動運転に含まれていますが、レベル2までは先進運転支援システムとして導入されており、あくまでも運転操作の主体はドライバーにあります。従って常に走行状況を注視している必要があるのです。
レベル3とは、一定の条件下で自動運転システムがすべての運転操作を実行し、システムでの作動継続が困難な場合などはドライバーが運転を引継ぐというレベルです。
世界初の自動運転レベル3を実装した車として、2021年3月にはホンダ「レジェンド」が発売されました(※現在は生産終了)。
レジェンドには自動運転レベル3に適合する「Honda SENSING Elite」と呼ばれる安全運転支援システムが搭載されていました。
参照:本田技研工業株式会社 ウェブサイト
2024年9月現在
自動運転レベル4とは、特定の条件下でシステムが運転操作を行い、ドライバーは運転を車に委ねられるものです。
2023年に自動運転レベル4移動サービスの運行が実現しています。
2021年度から、経済産業省と国土交通省は共同で「自動運転レベル4等先進モビリティサービス研究開発・社会実装プロジェクト(RoAD to the L4)」を進めてきました。
自動運転技術は、交通事故の削減効果や渋滞の緩和にも有効であると考えられており、警察庁も自動運転の実証実験をはじめ、早期実現を支援するために、さまざまな取組みを行っています。2023年4月に施行された改正道路交通法では、自動運転レベル4に相当する「運転者がいない状態での自動運転(特定自動運行)に係る許可制度」を創設しました。
この改正を受けて、2023年5月21日に福井県永平寺町で、国内初となるレベル4での自動運転移動サービスが開始されました。
自動運転の実用化によって、交通事故の削減効果や、人材不足に悩む地域公共交通の維持や改善、ドライバー不足に直面している物流業界の問題解決への効果も期待されています。
政府は、今後、自動運転レベル4の普及拡大を目標としています。
参照:警察庁「特定自動運行に係る許可制度の創設について」、「自動運転に係る対応」、国土交通省「自動運転の実現に向けた取り組みについて」
2024年9月現在
自動運転システムが、特定条件のもとですべての運転操作を行うことができるのが、自動運転レベル4の車です。
前述のように、2023年4月に道路交通法の改正によって特定条件下での運転者がいない自動運転が可能となりました。
2023年5月に国内で初めて自動運転レベル4の移動サービスが実現し、公道を走行しました。
レベル4による自動運転移動サービスは、福井県永平寺町の遊歩道「永平寺参ろーど」のうち約2kmを走行するものです。
参照:国土交通省 ウェブサイト、福井県公式観光サイト ふくいドットコム
2024年9月現在
日本政府は、自動運転レベル4を普及拡大させることが目標です。
2025年度をめどに、自動運転移動サービスの50ヵ所への拡大、高速道路での自動運転レベル4の実現を目指しています。
自家用車においては、自動運転に関する国際基準策定の取組みも進められています。
2020年6月に成立した国連協定規則では、高速道路での時速60km以下での車線維持(レベル3、対象車種は乗用車)が策定され、2021年11月改正では対象車種がすべての乗用車・バス・トラックに拡大され、2022年6月改正では、上限速度が時速60km以下から時速130km以下に引上げられることが合意されました。
レベル3は自動運転といっても、システムがダウンしそうなときなどはドライバーがすぐに運転を代わる必要があり、ドライバーにとって優しいデバイスとはいい切れません。そのため速度を限定していたのですが、引上げられたことに疑問を感じます。また、レベル4は低速走行する自動運転移動サービスなどに導入されており、今後も商用車への導入は進むでしょう。自家用車への実装は先のことになりそうですが、目標とされています。
自動運転レベル4の普及・拡大にあたっては、3つの課題があります。
道路ではあらゆるリスクに遭遇します。それらに対応するため、公道での走行経験を蓄積し、より安全性を向上させることが求められます。
また地域住民からの理解を得ることが重要です。そのためには同じ地域で継続的に走行し、住民に自動運転に対する安全性を実感してもらい、安心感につなげます。
それらを踏まえ、実際の事業性の確保が課題です。実証事業を通して、自動運転車による運送サービスが採算を確保できるようにすることが必要です。
自動運転レベル5は、まったく条件がない状態で、自動運転システムがすべての運転操作を行います。
「運転はすべてシステムが行い、ドライバーは何もしなくてもよい」というイメージ通りのレベルです。
実現に向けて民間企業は開発を進め、政府もさまざまな取組みを行っています。
2027年に横浜市で開催される「国際園芸博覧会」では、自動運転レベル5の実証実験の実施が計画されています。
しかし、いつレベル5の完全自動運転が実現するかについては、具体的な目標は発表されていないのが現状です。
自動運転が普及すると、次のようなメリットが期待できると考えられています。
交通事故の削減 | 安全性の向上により、人的ミスなどによる交通事故が削減される |
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渋滞の解消・緩和 | 自動運転システムにより、交通の流れが円滑化されて、渋滞の解消・緩和が実現される |
環境負荷の軽減 | 不要な加減速や空気抵抗の低減、渋滞の抑制などにより、燃費の向上やCO2が削減される |
高齢者等の移動支援 | 高齢ドライバーの運転負荷が大幅に軽減されることで、高齢者や身体の不自由な方の移動の支援と移動機会が創出される |
運転の快適性の向上 | 長距離運転時など、疲労を軽減し移動することができる |
ドライバー不足へ対応 | 乗務員が不要となることで、トラックやバスなどのドライバー不足が解消される |
災害時における緊急対応 | 緊急車両が通る道を確保する必要がある際に、緊急車両側の指令により他の車両を自動的に移動するなど、大規模災害時などの緊急対応時に活用できる |
カーシェアの利便性向上 | カーシェアに自動運転技術を組み合わせることで、駐車場への回送を自動化でき、駐車場が近辺に存在する必要がなくなるなど利便性が向上する |
物流の効率化 | 高速道路上の隊列走行や集配ルートの効率的選択などによって、効率のよい配送が実現される |
自動車メーカー各社は、完全自動運転実現のため、さまざまな技術開発に取り組んでいます。
たとえば、自動運転システムのグローバル展開に向け、日本だけではなく海外でも実証実験を行っています。
また、2021年に国土交通省・経済産業省は、新東名高速道路において、トラックの後続車無人隊列走行技術を実現しています。
技術面での成果は得られているものの、隊列の間に別の車が割り込んだ場合などに課題があり、現在はこうした課題の解決に向け、技術開発が進められています。
今後、2025年までに福井県永平寺町で行ったレベル4での自動運転移動サービスを全国に展開させ、トラックの隊列走行をレベル4に進化させることを目指しています。
同時に自動運転システムを実現するためのインフラの整備も進められていきます。
参照:日産自動車株式会社「完全自動運転に向けた取り組み」、本田技研工業株式会社「AUTOMATED DRIVE自動運転技術の取り組み」、株式会社ベリサーブ「自動運転の実現に向けた国土交通省の取り組みについて」
2024年9月現在
自動運転レベル4では、特定の条件下で自動運転システムがすべての運転操作を行うことができます。
2023年には、国内初となる自動運転レベル4での自動運転移動サービスがスタートしており、2025年をめどに、自家用車の高速道路での自動運転レベル4の実現が政府の目標です。
自動運転では、交通事故の削減や渋滞の解消・緩和、ドライバー不足への対応などが期待されており、官民が連携しながら自動運転の実現に向けた取組みが行われています。
※記載の情報は、2024年9月時点の内容です。
1965年生まれ。芝浦工業大学工学部機械工学科卒。トヨタ直営販社の営業マン、輸入車専門誌の編集者を経て自動車ジャーナリストとして独立。さまざまな自動車雑誌の他、エンジニア向けのウェブメディアなどに寄稿している。
近著に『電気自動車用パワーユニットの必須知識』(日刊工業新聞社)、『エコカー技術の最前線』(SBクリエイティブ)、『図解カーメカニズム基礎講座パワートレーン編』(日経BP社)がある。
日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員
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