更新日:2024年10月22日
公開日:2020年5月11日
燃料電池車と水素自動車(水素エンジン車)は、いずれも水素をエネルギーとして走行する車です。燃料電池車(FCV)は、搭載した燃料電池で水素と酸素の化学反応によって電気を発電し、モーターを駆動して走行するしくみです。
一方、水素自動車はガソリンの代わりに、水素をエンジンで燃焼させて走行するしくみの車です。
燃料電池車も水素自動車も、水素をエネルギー源とするため、走行中にCO2を排出せず、環境負荷が低いというメリットがあります。
一方で燃料電池車は車両価格がまだ高く、水素自動車は実用化までに時間がかかります。また水素を補給できる水素ステーションの整備も進んでいないことが普及の足かせになっています
燃料電池車や水素自動車のメリットとデメリット、普及しない理由や将来性などについてご説明します。
燃料電池車とは、水素と酸素の化学反応によって発生する電気を使ってモーターを回し、走行する自動車です。電気を使って走行する点は電気自動車と同じですが、電気自動車の場合は外部からの充電が必要になるのに対し、燃料電池車は発電しながら走行するため充電する必要がありません。
燃料電池は、水の電気分解の原理を利用して、水素と酸素から電気と水を発生させる装置のことです。
アメリカの有人宇宙船であるスペースシャトルは、搭載された3基の燃料電池から全電力を得ています。
燃料電池の歴史は古く、鉛バッテリーと同じ100年以上前に発明されたシステムです。しかし車に搭載して発電用として使われるには、大きな技術革新が必要で、かつてはガソリンを搭載してそこから水素を取り出して発電していた時代もあったのです。
燃料電池車は、水素と酸素を化学反応させて得た電気によってモーターを動かし、走る車です。BEV(バッテリーEV)のように充電の必要はありませんが、発電のために、水素の補給が必要となります。
水素の充填にかかる時間は3分程度と短く、ガソリンを給油するのと変わらないスピードで充填ができます。
また、走行時には、車から水のみが排出され、CO2や有害物質は排出されないため、環境負荷が非常に低い点、災害時には外部給電機能を活用して非常用電源として使える点も燃料電池車の特徴です。
燃料電池車には、次のようなメリットとデメリットがあります。
メリット | デメリット |
---|---|
|
車両価格が高い |
水素ステーションが、少ない |
水素を利用した自動車には、燃料電池車の他に「水素自動車(水素エンジン車)」もあります。
水素自動車は、ガソリンの代わりに水素を燃料として使い、エンジンで水素を燃焼させることで走行させる自動車です。水素自動車は現在市販化はされていません。※2024年10月現在
燃料電池車は水素と酸素を化学反応させて発電をし、得られた電気でモーターを動かします。それに対し水素自動車は、水素をエンジンで燃やし、水素の爆発によって得られるエネルギーを利用して駆動力を得るという違いがあります。
水素自動車はエンジンを搭載した車ですが、エンジンで燃焼させるのは水素であるため、走行中にはCO2を排出しません。したがって、水素自動車は環境に悪い車ではなく、環境負荷の低い車であるといえるでしょう。
政府は、2030年に向けた政策対応の一つとしてカーボンニュートラル時代を見据え、水素を新たな資源として位置づけ、社会実装を加速するとしています。
水素を活用した車としては発電型の燃料電池車を中心に普及が進むものの、その後、水素自動車も普及していくと考えられています。
水素自動車(水素エンジン車)には、次のようなメリットとデメリットがあります。
メリット | デメリット |
---|---|
|
|
水素自動車は水素を燃料としていますが、エンジンオイルも燃えるため、実は微量のCO2と窒素酸化物も発生します。ガソリン車と比べれば微々たるものですが、将来的には排出ガスの対策も必要となるかもしれません。
2024年10月執筆現在
燃料電池車の普及が進まない理由の1つに、水素を補給する水素ステーションが少ないという問題があります。
燃料電池車の普及を進めるためには、水素を補給できる水素ステーションの整備が欠かせません。水素ステーションの設置工事には、高額な工事費がかかります。そのため、政府は「水素ステーション整備事業費補助金」事業を実施し、水素ステーションの設置を促進しています。
また、燃料電池車の車両価格は高額であることも普及が進まない理由であると考えられます。
経済産業省では、燃料電池車を購入した際に補助金を受けられる「クリーンエネルギー自動車導入促進補助金」の制度を用意し、補助金を交付することで燃料電池車の普及を促進しています。
燃料電池車と水素自動車(水素エンジン車)は、水素を使って走行する車で、いずれも走行中にCO2を排出しないというメリットがあります。
燃料電池車は、水素と酸素の化学反応によって電気を発電し、モーターを駆動させて走行します。
電気を利用する点については電気自動車と同じですが、電気自動車は充電が必要であるのに対し、燃料電池車は水素の充填が必要になります。
一方、水素自動車はガソリンの代わりに水素をエンジンで燃焼させ、水素の爆発力で動力を得て走行する車です。現在市販化はされていません。
燃料電池車も水素自動車も水素の補給が必要になるため、両者の普及には水素ステーションの整備が課題になるといえます。
最後に、車を所有されている方は、チューリッヒの自動車保険をご検討ください。
万が一の車の事故・故障・トラブルに備えておくと安心です。
※記載の情報は、2024年10月時点の内容です。
1965年生まれ。芝浦工業大学工学部機械工学科卒。トヨタ直営販社の営業マン、輸入車専門誌の編集者を経て自動車ジャーナリストとして独立。さまざまな自動車雑誌の他、エンジニア向けのウェブメディアなどに寄稿している。
近著に『電気自動車用パワーユニットの必須知識』(日刊工業新聞社)、『エコカー技術の最前線』(SBクリエイティブ)、『図解カーメカニズム基礎講座パワートレーン編』(日経BP社)がある。
日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員
インターネットから申し込むと、
初年度最大21,000円割引