更新日:2023年12月28日
公開日:2020年7月22日
道路交通法の改正により、2017年3月12日から準中型免許制度が施行されました。準中型免許が制定された背景には、交通死亡事故の削減とトラックドライバーの人材不足への対応が関係しています。
それまでは、5tを超えるトラックを運転するためには中型免許を取得しなければならず、中型免許の取得には20歳以上で免許の保有期間が2年以上という条件が課せられていました(現在は、受験資格特例講習を受けた19歳以上、普通免許等保有1年以上あれば受験が可能)。
この問題を受け、新たに制定された準中型免許では、18歳でも5tトラックを運転できるようになっています。
では、準中型免許では何tまでのトラックに乗れるのでしょうか。また、準中型免許を取得するためには、どのようにすればよいのでしょうか。
準中型免許が導入された背景に加えて、乗れるトラックや車、免許取得の方法、費用などについてご説明します。
2017年に「準中型免許」が制定されました。
準中型免許の制定は、貨物自動車による交通死亡事故の削減と若い人材の雇用促進を目的としたものです。
それまで、保冷設備やクレーンの架装で車両総重量5tを超える車両が増えているにもかかわらず、普通免許では車両総重量5tまでの車両しか運転できず、5tを超える車両を運転するためには中型免許が必要でした。
中型免許の取得には「20歳以上で、普通免許等保有期間が2年以上」という条件が付けられていました。
そのため、たとえば18歳でトラックドライバーになろうとしても、年齢や免許期間がネックとなり働けないという状況が見られたのです。
このような状況を鑑みて、準中型免許が新たに設けられ、現在は18歳でも車両総重量7.5t未満までの車両を運転できるようになりました。
準中型免許は、トラックドライバーの年齢層を広げ、物流業界の人手不足などの課題解決につながると期待されています。
そもそも普通免許で中型トラックまで運転できたため、不慣れな運転により交通事故が多発しました。そこで18歳から取得できる普通免許に一定の制限を加えたのが中型免許の制定による普通免許での上限設定でした。しかし、それによってトラック運転手の人材不足が加速したため、18歳でも取得できる準中型免許を制定したのです。
あらためて現在の免許の種類ごとに運転できる車の種類を見てみましょう。
以下の表のとおり、準中型免許で運転できるトラックや車は、車両総重量3.5t以上7.5t未満までです。
また、18歳でも免許を取得して運転できるのは、普通自動車と準中型自動車に限られます。
免許区分 | ||||
---|---|---|---|---|
区分 | 普通免許 | 準中型免許 | 中型免許 | 大型免許 |
自動車の種類 | 普通自動車 | 準中型自動車 | 中型自動車 | 大型自動車 |
車両総重量 | 3.5t未満 | 3.5t以上7.5t未満 | 7.5t以上11t未満 | 11t以上 |
最大積載量 | 2t未満 | 2t以上4.5t未満 | 4.5t以上6.5t未満 | 6.5t以上 |
乗車定員 | 10人以下 | 11人以上29人以下 | 30人以上 | |
免許の受験資格 | 18歳以上 | ・20歳以上、普通免許等保有2年以上 ・受験資格特例教習を修了した19歳以上、普通免許等保有1年以上 |
・21歳以上、普通免許等保有3年以上 ・受験資格特例教習を修了した19歳以上、普通免許等保有1年以上 |
2020年12月の道路交通法改正により、準中型免許を取得した方の初心者マークの表示に関する規定が見直されました。
これにより2020年12月1日以降に準中型免許を取得した方は、準中型免許取得から1年未満の期間は、準中型自動車と普通自動車を運転するときに初心者マークを表示しなければなりません。
また、2020年11月30日以前に準中型免許を取得した方は、準中型自動車を運転する場合のみ、初心者マークの表示が必要です。
準中型自動車の反則金は、普通自動車より車格が大きいものと区分され、大型自動車・中型自動車と同額です。
準中型免許を初めて取得する場合、直接試験場(運転免許試験場・運転免許センター)で受験するか、指定自動車教習所(以下、教習所)を卒業して取得する方法があります。
準中型免許の視力などの基準は、以下のとおりです。
年齢 | 18歳以上 |
---|---|
免許経歴 | 特になし |
視力 | 両眼で0.8以上、かつ、一眼がそれぞれ0.5以上であること(眼鏡など使用可) |
色彩識別能力 | 赤色、青色および黄色の識別ができること |
深視力 | 三桿(さんかん)法の奥行知覚検査器により2.5mの距離で3回検査し、その平均誤差が2cm以下であること(眼鏡など使用可) |
聴力 | 両耳の聴力(補聴器により補われた聴力を含む)が10mの距離で、90dBの警音器の音が聞こえること。ただし、この条件に該当しない方であっても、特定後写鏡などを取り付けることと聴覚障害者標識を表示することを条件に、準中型免許、普通免許、準中型仮免許、普通仮免許を取得することができる |
その他 | 身体に障害があり、自動車など安全な運転に支障をおよぼす恐れがある場合は「身体に障害のある方の受験案内」で相談 |
普通免許なし(原付免許のみ)の方が教習所で準中型免許を取得する場合は、技能教習41時限(最短)と学科教習27時限を受けます。
また、普通免許取得時と同様に修了検定や仮免許学科試験、卒業検定なども受ける必要があります。
準中型免許を教習所で取得する場合の費用は、普通免許ありの場合やその他の免許なしの場合など、すでに持っている免許によって変わります。
教習所によっても金額は前後しますが、16万円〜38万円程度の費用が必要です。
また、直接、運転免許試験場・運転免許センターで受験する場合は学科試験(すでに普通免許などを取得している場合は免除)、適性試験、技能試験を受験し、合格すると免許を取得できます。
免許取得にかかる費用は、東京都の場合8,650円(受験料4,100円、試験車使用料2,500円、免許証交付料2,050円)です。
その他、取得時講習受講料17,800円(普通免許あり)、32,200円(普通免許なし)も必要になります。
参照:警視庁 ウェブサイト、拝島自動車教習所、埼北自動車学校、レインボーモータースクール 和光ウェブサイト
2023年10月執筆現在
2017年3月12日の法改正前に普通免許を取得していた場合、改正後は、「5t限定準中型免許」となります。
運転できるのは、普通自動車と車両総重量5t未満および最大積載量3t未満の準中型自動車です。
この「5t限定」を解除すれば「準中型免許」となり、運転可能な車種の範囲が広がります。(2007年6月1日以前に普通免許を取得していた場合は、「8t限定中型免許」となり、「8t限定」を解除すれば「中型免許」となります)
準中型免許の5t限定解除の方法には、以下の2つがあります。
18歳で取得できる中型トラック向け免許として準中型免許が制定されましたが、物流の現場ではいささか中途半端な存在としてあまり活用されていない印象です。小型トラックの拡充や、1年間の見習い期間を経て中型や大型免許を会社の補助で取得するケースが多いです。日本経済を支える物流業界の人材確保のために、今後もさまざまな対策が求められることになりそうですね。
準中型免許の制定により、交通死亡事故の削減と近年の物流業界におけるドライバー不足の解消が期待されています。
中型免許が20歳以上、普通免許等保有2年以上(特例教習修了者は19歳以上、普通免許等保有1年以上)が受験資格とされるのに対し、準中型免許は18歳から取得できるのが大きな特徴です。
準中型免許では、車両総重量3.5t以上7.5t未満のトラックや車を運転できます。
また、法改正以前に普通免許を取得している方の免許は、5t限定準中型免許もしくは8t限定中型免許となります。
教習所に通うか運転免許試験場・運転免許センターで限定解除審査を受ければ、5t限定または8t限定は解除可能です。
※記載の情報は、2023年10月12日時点の内容です。
1965年生まれ。芝浦工業大学工学部機械工学科卒。トヨタ直営販社の営業マン、輸入車専門誌の編集者を経て自動車ジャーナリストとして独立。さまざまな自動車雑誌の他、エンジニア向けのウェブメディアなどに寄稿している。
近著に『電気自動車用パワーユニットの必須知識』(日刊工業新聞社)、『エコカー技術の最前線』(SBクリエイティブ)、『図解カーメカニズム基礎講座パワートレーン編』(日経BP社)がある。
日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員
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