「トレッド幅」や「トレッドパターン」など、特に車の足回りに関する言葉で耳にする「トレッド」には、2つの異なった意味があります。
車のトレッドとは、車のコーナリング性能に関する目安を示す車体の部分的長さを表します。
また、タイヤのトレッドについては、タイヤの接面部のことを指し、いずれのタイヤメーカーも従うデザインパターンがあり、タイヤの性能向上に大きな役割があります。
本記事では、車のトレッドとタイヤのトレッドの違いとそれぞれの役割、さらにトレッドパターンについてご説明します。
「トレッド」は車体に使われる場合と、タイヤに使われる場合でそれぞれ意味が異なります。
車体に使われる場合、左右のタイヤ接地面の中心間の距離のことを「トレッド」と呼びます。
車の運動性能などに大きな影響があるため、バランスのよい設計が求められる部分です。
一般的にトレッドが長いほうが、車の左右の傾きが小さくなりコーナリング性能に優れますが、長すぎると逆にボディの全幅が広くなり、小回りが利かないなどのデメリットもあります。
ちなみに、車の前輪と後輪の軸間距離のことをホイールベースと呼び、トレッド幅と同様に車体のサイズを表す数値として並記されることがあります。
タイヤに使われる場合は、タイヤが路面と接触する部分のゴム層の面のことをトレッドと呼びます。
タイヤのトレッドには、路面の衝撃からタイヤ内部のカーカス※を保護し、タイヤの寿命を延ばす役目があります。
タイヤの表面に刻まれた各種のトレッドパターンと呼ばれる溝は、タイヤが回転する駆動力や旋回力や路面からの振動を抑制する制動力、また雨天時などの排水力などの向上を担っています。
トレッドパターンは、さまざまな要求を満たす必要があり、複雑なデザインとなっています。
※タイヤの骨格を形成するゴムで被覆したコード層の部分
タイヤは、一見ただの黒いゴムの輪のように見えますが、車の荷重を支えつつ高速で回転し、熱や衝撃などに耐える役割を担うため、複雑かつ緻密な構造になっています。
ゴムだけではなく、ワイヤーや繊維などの部材を精緻に組み込んでいるタイヤの構造について、以下にご説明します。
先述のように、タイヤの駆動力や旋回力、制動力や排水力などを担うタイヤのトレッドは、複雑なデザインとなっていますが、4輪車と2輪車の違いによってもその役割も異なります。
4輪車と2輪車の走行で大きく異なる要素は、タイヤの旋回性能を発揮するコーナリングです。
タイヤの旋回性能には、タイヤの接地形状を左右する空気圧の影響もありますが、タイヤのトレッドの構造が大きく影響します。
4輪車がコーナリングする際、ハンドルを切ることによって発生するコーナリングフォースが、タイヤの旋回を左右します。
したがって、4輪車の場合、タイヤの形状もそれに合わせた構造になっています。
4輪車のタイヤのトレッドは、路面に接面する面積を広くとり、接地性を向上させ、グリップがしっかりと得られる構造になっています。
2輪車がコーナリングする際、車体を傾けることによって発生するキャンバースラスト※とコーナリングフォースがタイヤの旋回を左右します。
4輪車との違いは、このキャンバースラストによってタイヤの旋回が左右することです。
キャンバースラストは、キャンバーアングル(傾ける角度)が大きくなるにしたがって旋回力も増しますが、同時にタイヤのショルダ一部にかかる負担も増大します。
2輪車のコーナリング特性と、特性に沿って求められる役割にしたがい、タイヤの形状もそれに合わせた構造になっています。
2輪車のタイヤのトレッド面は、4輪車のように平面的なトレッド部の構造と異なり、タイヤのサイドにトレッド部を回り込ませる形状となっています。
また、ショルダ一部分の性能も、2輪車特有の強度が求められます。
※タイヤのキャンバー角によって発生する横力
タイヤのトレッドに刻まれた模様を「トレッドパターン」と呼びます。
トレッドパターンは、タイヤにとって重要な役割があります。
トレッドパターンの役割として期待される性能は大きく分けて以下の4つに分類されます。
基本的にいずれのタイヤメーカーも、以下の4つのトレッドパターンにしたがってタイヤを製造しています。
パターン名 | パターンデザイン | 特徴(性能) |
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リブ型 |
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直線またはジグザグの連続した溝が刻まれたパターン
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ラグ型 |
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タイヤの周方向に対してほぼ直角に溝が刻まれたパターン
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リブラグ型 |
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リブ型とラグ型の併用パターン
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ブロック型 |
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独立したブロック(塊)で形成したパターン
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「トレッド」には、車の車体幅を部分的に表す場合と、タイヤの接面部を表す場合の2つの意味があります。
いずれも、車の旋回性能に関わる共通性以外は、まったく異なる意味となるので、混同しないように注意しましょう。
また、タイヤのトレッドには4つのトレッドパターンがあり、それぞれの特徴により適した用途がありますので、タイヤ交換などの際には参考にするとよいでしょう。
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※記載の情報は、2020年9月時点の内容です。
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